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公園に移動して、テオとも話をした。
テオは一晩じっくりとガイと語らったそうだ。
「ガイは貴方のことを憎んでいたでしょう? 殺されなくてよかったわね」
「ところがだ」
いざ対面すると、ガイはおとなしく話を聞いてくれたのだとテオは語った。
「昔話をしたよ。あいつの母親の話も。親を罵るのは息子だって辛いんだよな。一生、俺を憎み続けるのは苦しいはずだ。だから賢明に話をしたよ。今度は逃げなかった。俺もあいつも。まあ、状況的に逃げられなかったんだが」
ガイはテオを憎み続け、テオはガイから逃げ続ける。それは不毛だ。
「ガイは……貴方を理解してくれたのかしら」
テオは首を傾げた。アシュリーと暮らすと言ったら、わかったとだけ返事をしたそうだ。
「信じたのかしら」
「信じようとはしてくれた。地道に頑張るしかないな。仕事を探さないと」
「あら、貴方は泥棒でしょ」
「ちょっと、人のダンナを泥棒呼ばわりはやめてちょうだい」
アシュリーは腕を組んでサラに鼻息を飛ばした。
「怪盗黒うさぎでしょ?」
「テオの首根っこ掴んで確かめたわよ。黒うさぎだったら生活費をもっと出しなさいよって。それともほかに女がいるのかって」
「いるわけないだろ。おまえこそ、公爵に乗り換えようとしたくせに」
「あんたが甲斐性なしだからでしょ。こっちは妊婦なんだからね。不安にもなるわよ」
「母さんはどこに行ったんだってリッチが泣いていたんだぞ、なあ、リッチ」
「子供を味方につけるのは卑怯よ。公爵が亡くなったら引き取るつもりだったんだから」
「おまえが──」
「あんたが──」
夫婦喧嘩が始まった。罵詈雑言には馴染みがないサラには、何を言っているのかよく聞き取れなかった。
ただ無邪気に夫婦の周りをスキップする男の子だけは可愛らしいと思った。
「なぜ貴女はここで紅茶を飲んでいらっしゃるのでしょうか」
トールは突然訪ねてきたサラに困惑の表情を向けた。
教会に寄ったがガイはいなかった。そのときふと喉の渇きを覚えたから、などとは言えない。
「さすがは町で一番の法律事務所が来客にもてなす紅茶ですわね。とてもおいしいわ」
「お褒めにあずかりどうも。……意趣返しですか? 貴女にとっては損はない結末でしょうに」
「公爵にとっては損しかなかったわね。でも貴方は損はしないんでしょうね」
トールは優雅に笑んだ。余裕を感じる。
「明日、この事務所でレオノール氏と公爵が契約するんでしたわね。またお茶を飲みに来てもいいかしら」
「はあ、同席したいのですか? ああ、なるほど」トールはポンと手を打った。
「公爵が心配なのですね。ちょうどいい。明日、土地の権利書や離婚証明も用意しておきましょう。ぜひいらしてください」
(そんなんではないわよ。ただ美味しいお茶が恋しくなっただけ)
「あ、そういえばポール君、彼も明日来るそうですから」
「……あら、甥の顔ぐらいは見に来ようかしら」
「それがいいですよ。ガイも来ますし」
「そ、そう。では明日。ごきげんよう」
『ガイ』と聞く度に心臓が跳ね上がりそうになる。サラはそそくさと事務所をあとにした。




