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「そ、それだって真実かはわからないではないですか」
「まあ、そうなんですが。あ、これは何でしょう。3年前のこの数字、大きいですよね。不思議ですね。説明していただけますか」
出入金の激しい記述を指してレインが疑問を投げた。3年前から現在に続くまで、公爵邸の経済状況は混迷している。
サラは答えた。
「川の氾濫で春耕地が駄目になって、秋耕地は天候不良で不作。牧草地は落雷による火災でほとんど収入はなかったの。かといって農奴に給金を支払わないわけにはいかないでしょ。餓死させるわけにはいかないもの。なので銀行に借金をしましたの。少しづつ返済はしてたんですのよ。あと少しで完済なんです。今年の収穫を期待して──」
「ほほう、莫大な借金をつくったんですね。3年経ってもまだ完済できていない!」そう言って、トールが目を輝かせる。「それなのに、経営手腕がないと自覚されておられないとは」
サラははっと息を飲んだ。トールの攻撃に怯えたわけではない。公爵の隣で顔を俯けている少女を目にしてしまったからである。口元を手で押さえている。
「貴女、ちょっと、大丈夫?」
「う……すみません」
サラが伸ばした手を、アシュリーは払いのけるようにして部屋を飛び出していった。
(つわり……?)
公爵がテーブルに1枚の書類を置くと、トールがレインとサラに説明を始めた。
「アシュリー嬢の妊娠の証拠を提出します。王立中央病院の医師による由緒ある診断書です」
レインは頷いて「王立中央病院ですね、ふむ」と頷いた。国内でもっとも権威のある病院である。
「……そう、アシュリーは本当に妊娠しているのね」
誇らしげな公爵を一瞥すると、サラは内心で溜息を吐いた。
「わたくしも、ちょっと失礼いたしますわ」
「おい、どこに行くんだ」
「こういう時に行先をきかないのが紳士でしょう?」
「わしも行く」
サラはアシュリーの様子を見に行こうと思って部屋を出たのだが、公爵までついてきた。
「なんでついてくるんです」
「アシュリーに何かあったら大変だからだ」
「まさかわたくしがアシュリーを転ばせたりするなどと考えていないでしょうね」
「おまえはわしが憎いはずだからな、信用できん」
個室の前までくると、中から呻くような声が聞こえてきた。吐いているのだろう。
「失礼なおっしゃりようだこと。子供に手を出すような、誰かさんのようなえげつない真似はしませんわよ!」
「ほら、嫉妬しとる。アシュリーが気分を悪くしたのも当然だ」
「あれはつわりですわ。ちょっとわたくしも吐いてくるわ。貴方とトールの顔を見ていたら、何故かしら、胸がむかむかしてきましたもの」




