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就労支援スタート

発達障害者の就労支援について、事業所ABの他に、就労支援のみを行う形態もあったことを知りましたので、安心して書けます。

 発達障害者就労支援施設『バングル』に来た。

急ごしらえで、オフィスの一部をPC訓練所みたいにしてPCを数台並べて、格好をつけている。

しかし、こんな仕事の真似事で、彼らの長所が引き出せるだろうか疑問が残る。


 施設長の男性が挨拶をした。岡田と名乗っている。やや大人しめで、人の上に立とうといったギラギラ

していない所が特徴的な、どこにでもいる五十代後半の男性だった。バブル期に流行したダボっとしたようなスーツを未だに着ていて、野暮ったさが目立つ。

続いてソーシャルワーカーにも会う。沢野という三十代半ばの痩身の男性だった。

人当たりは良さそうだが、仕事に関する意気込みがあまり感じられなかった。内に秘めたるものがあるのかもしれない。

 わたしはここで、事業所の新規開拓や就労のあっせんの手伝いをすることになる。ソーシャルワーカーのフォロー役だ。

沢野に、就労斡旋先を訊いたら、事務所や段ボール組み立て工場など、わりと誰でもできそうな職場が多いと伝えられる。


 やはり、この時代の人たちは発達障害者の強みを見極めておらず、比較的簡単そうな仕事に押し込もうとしている状態

なのが見受けられる。わたしは、少しずつでも、彼らの強みを生かせる業種を開拓しなければと思った。


 まずは電話でアポイントメントを取る。異世界での発達障害者の主な就労先である、クリエィティブな職種に電話をしてみる。

中々色よい返事が来ない。そもそも、現場の人間が発達障害について知らなすぎる。

これは前途多難だなと思いつつ、普通の事務所や事業所も当たってみると、手ごたえのなさは同じ

で、発達障害の知名度のなさが足を引っ張っているような気がした。


 あるいはネットで得たネガティブなイメージが先行しているのかもしれない。そっちの可能性も高い。


 わたしのいた世界では、発達障害者の特徴や利点、欠点などは、大半の人に知られていて

就労もスムースに行われることが多かった。中には発達障害者を求めてくる業界もあるぐらいなのだから、この世界の当事者たちはさぞや辛かろうと思う。


 しばらくして、就労を求む当事者が訓練にやってきた。簡単なオフィスワークのために初歩的なPCの操作を学ぶのだ。果たして興味に偏りがある彼らに、一般的な仕事を与えて、集中力が維持されるのだろうか疑問だった。それでも彼らは健気に努力をしている。一部睡魔に襲われてうつろな目で操作している人間もいたが。その男性に話しかけてみる。中井と名乗った。彼を相手に話をしながらスキャニングをしてみると、事務仕事にはあまり興味がなく、娯楽方面に強い関心がある頭脳だと判明した。


 中井には、あとで個別に就労先を考えてあっせんしなければならないと思った。彼の本質は、普通の事務仕事ではなく、面白そうなことを考案したり、新しいゲームを考えたりすることが要だと思った。


 わたしは彼に、差し当たっての関心事を訊くと、ラノベが書きたいという。なので少々きついかもしれないが、ラノベの世界設定について百パターン考えるように宿題を出しておいた。負荷の重さに驚きつつも、彼の眼は輝きを取り戻したかのようにみえた。目力が睡魔を追い出しにかかった。


 他の発達障害者たちにも、対話やスキャニングなどで興味の幅を調べる。大半がゲームや娯楽に特化した脳の持ち主であることが判明する。彼らは普通の事務所で、退屈かつ注意力を要求される入力作業を無事こなせられるだろうか。不安が先行していく。


 一般的な就労先も、アポなしで当たってみたが、どこも『発達障害者』と聞くと怪訝そうな顔をして、関わりたくないと表情に表わす。彼らの特徴を説明してはみるが、雇用主にとって、その特徴はデメリットとしかとらえられなかった。


 クリエイティブな職種もあたってみることにする。彼らの発想力の豊かさを伝えてみるが、相手先にもどの程度使い物になるかが捉えきれないでいる。なので、雇用主に分かるような指標づくりに精を出さねばならないと思った。可能な限り、彼らの創造力を表出させる訓練が必要だと感じている。

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