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カミサマのおとしかた  作者: みけ
第零章 忘れ水の如く
30/30

1

ある日、男は思いました。

世界とは、どのようにして出来上がったのか?

気になって仕方がないので、男は世界創造を再現してみようと思いました。



何も存在しない亜空間。

男は書物で読んだ一つの説通り、まず光を創りだしました。

亜空間は光で満たされました。

すると、男の足元に黒い影が出来て、そこから闇が生まれました。

男は足のつく大地がない事に違和感があったので、大地を創りました。



男は光に


「お前が大地を照らす時、それは朝だ」


と教えました。

男は闇に


「お前が大地を覆う時、それは夜だ」


と教えました。

そして、大地に


「お前はあらゆるものを産み、育て、最期を受け入れて、また産む。母なる大地だ」


男はと教えました。

すると、大地は


「独りでは全てを実行できない」


と言いました。

男は、大地から産まれた後を「生」、大地に還る時を「死」と役割分担を提案しました。

大地がそれを受け入れると、生と死が生まれました



大地に朝が訪れると、大地は大きく息を吐きました。

すると、風が生まれました。

大地に夜が訪れると、大地は大きく息を吸いました。

すると、風で大地が抉られて、鉱石が生まれました。



大地に朝が訪れると、大地は大きく息を吐きました。

すると、雷が生まれました。

大地に夜が訪れると、大地は大きく息を吸いました。

すると、雷から火花が散り、火が生まれました。



男はその様を興味深く見つめました。

そして光と闇を褒めて、もっと頑張るように励ましました。

光と闇は男が望むまま、朝と夜を繰り返しました。



大地に朝が訪れると、大地は大きく息を吐きました。

すると、雪が生まれました。

大地に夜が訪れると、大地は大きく息を吸いました。

すると、雪が融けて、水が生まれました。



光は起こった出来事を男に報告しました。

朝の事だけではなく、夜の出来事も報告しました。

闇は光が喜んで報告しているので、好きにさせました。

男は光をたくさん、たくさん褒めました。



大地に朝が訪れると、大地は大きく息を吐きました。

すると、草木が生えてきました。

大地を夜が訪れると、大地は大きく息を吸いました。

すると、一部の草木が枯れて、そこから虫や動物が生まれました。



亜空間はりっぱな世界になりました。

男は好奇心が満たされて、満足しました。

しかし、後の経過も気になるので、光と闇に世界を見守る事を言いつけました。

そして、男は自分の世界へ帰っていきました。

光は男が居なくて寂しくなりました。

そんな光に


「たくさん報告をしたら、たくさん喜んでもらえる。たくさん褒めてくれる」


と、闇が励ましました。

男のため、と光は頷いて、たくさんの出来事を見守り続けました。



それから男は一週間に一度、世界を訪れました。

光と闇から世界の経過を聞いて、男は自分の住んでいる世界に段々近づいていっている事を実感しました。

そして、光と闇をたくさん、たくさん褒めました。



ある日、光は男の姿と酷似した生き物、人間が泉を汚す場面に遭遇しました。

泉は苦しみ、悲しみ、怒りを抱えていました。

その様子に光も苦しみ、悲しみ、怒りを覚えました。

なにより、男と同じ姿をして、愚行を犯す事に耐えられませんでした。

光は泉に少しだけ力を分け与えました。

すると、泉は恐ろしい姿になって人間に


「これからお前たちに、一滴も水を与えはしない」


と脅しました。

人間は泉に怯え、後悔して、許しを請いました。

人間が改心したので、泉は許しました。

光は良かったと思い、この事を男に報告しました。

男は自分の世界にない出来事に、驚いたり、感心したりしました。

そして、光をたくさん、たくさん褒めました。

男に褒められた光は嬉しくて、とても幸せでした。



しかし、段々目新しい出来事が起こらなくなって、男は詰まらなくなってきました。

男が世界を訪れる回数が減り、とうとう来なくなってしまいました。

闇は、男が自分たちに興味が失せていっていたのを知っていました。

そして、捨てられたのだと悟りました。

そんな事を知らない光は男に会いたくて、慕う気持ちが募っていきました。



ずっと、ずっと…ずっと…ずっと……光は男を待ち続けました。

それでも男は訪れませんでした。

悲しくて、悲しくて……

寂しくて、寂しくて……

苦しくて、苦しくて……

狂おしくて、狂おしくて、狂おし……



『起きないなら、己の手で引き起こせばいい』



そして、見守るだけだった今までとは違い、泉の底に沈殿した泥を掻き混ぜるように、光は世界に手を出していきました。

特定の生き物に力を与えたり、滅ぼしたりしました。

どの事例とも似ていない出来事を、男が喜びそうな出来事を求めました。

光の中で生まれた歪みは、半身である闇に伝わりました。

光がどれほど男を慕っているか知っているので、闇は何も言えませんでした。

そして、光の行動はエスカレートしていきました。

それは世界の成長、繁栄、進化とは程遠く、破壊とも言えるものになっていました。

目に余る行動に、闇は光を注意しました。

しかし、光は


「あの方は新しい事を望んでいる。それを見つけるのが、起こすのが私の役目だ!」


と、闇の言葉に耳を貸しませんでした。

もう手遅れでした。

光にとって世界は、もう、男を呼ぶ道具でしかありませんでした。



いびつに歪んだ光は、世界をいびつに歪めていきました。

闇は後悔しました。

一番側にいながら、光の心を支えてやれなかった事を後悔しました。

だから、闇は世界を維持するため、光と共にいるため、歪みました。

すると、歪んだ世界は元に戻り、いつもの営みを繰り返しました。



 誰も知らない、世界の産声。

 誰も知らない、世界の笑声。

 誰も知らない、世界の泣声。

 誰も知らない、世界の……

これにてカミサマのおとしかた終了です。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。

少しでも楽しんでもたえたならば幸いです。


それではまたの機会がありましたら。

本当にありがとうございました。

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