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宰相閣下の「運命の対」を探せと仰せですが、鑑定の水盤に映ったのは私でした ~共鳴した鑑定官は引退の掟なので、全力で隠します~

作者:くらたん
最新エピソード掲載日:2026/07/21
男爵家出身のグレーテ、二十二歳。王宮星見局の「対鑑定官」である。
この国では、星見の水盤に二人の名を沈めると、運命の対なら水が光る。
鑑定官の資格はただ一つ、未共鳴者であること――共鳴済みの鑑定官は情で水を曇らせるとされ、判明したその日に引退が慣例だ。
没落男爵家の彼女にとって、この職は弟妹の学費であり、自分の足で立つ証である。

さて本日、王命が降りた。
「独身のまま三十を迎えた宰相カシミール閣下の対を、候補名簿から探し出せ」
名簿は令嬢ひゃくにじゅう名。案件着任の定めに従い、彼女はまず対象者の名錘と自分の名錘を沈めた――担当者が対象の「対」でないことを検める、着任の必須手順である。

水盤が、祝祭のように光った。

…………見なかったことにします。

ところが翌日から、鑑定は妙な具合になった。候補の名を沈めても水は沈黙するくせに、宰相が視察と称して局に現れるたび、水盤の縁がさざめき、インクが滲み、棚のグラスが澄んだ音で鳴くのである。
「鑑定官どの。この局は、よく物が鳴りますね」
「古い建物ですので」
――実は、宰相はあの光を見ていた。そして彼もまた、黙っている。運命だから娶るのは、水盤に人生を決めさせるのと同じだからだ。

かくして、鑑定官は職のために隠し、宰相は矜持のために黙り、候補名簿は今日も一名ずつ「不一致」で消えていく。
なお宰相閣下は帰り際、鑑定と何の関係もない一言だけ置いていく。
「先日の本、読み終えました。あなたの言った章で、笑いました」
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