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『魔王軍に追放された軍配者、外れスキル〈戦場俯瞰〉で辺境から異世界統一を始める』  作者: 常陸之介寛浩✪書籍・本能寺から始める信長との天下統一


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第43話 辺境は、守るだけでは痩せていく

使者が去った翌日、フロストゲート砦は妙に静かだった。


敵が来ない。

本営の目も今は離れた。

商人も一時的に足を止めている。


こういう日ほど、何をするかで拠点の先が決まる。


ただ休むだけでは、また痩せる。

慌てて動きすぎれば、せっかく整った線が自分で擦り切れる。

だから、この“何も起きていないように見える日”こそ、次を決める時間になる。


朝、レオルドは旧中継小屋から戻った兵の報告を聞いていた。


「昨日より往来は少なめです。

荷も一度だけ。

敵の動きはなし」


「分かりました」


報告を終えた兵を下がらせたあと、レオルドはそのまま地図の前に立ち続けた。


フロストゲート。

村。

旧中継小屋。

南の街道。

西の死にかけた旧道。

そして、その先。


「まだ足りないですね」


そう呟いたところで、ミレナが入ってきた。


「何が」


「線です」


彼女は地図を見て、すぐ理解した。


「旧中継小屋だけじゃ、まだ短いって顔ね」


「ええ」


ミレナは腕を組む。


「そう思ってたのは、私だけじゃないらしいわ」


「誰です」


「ガルグ」


それを聞いて、レオルドは少しだけ口元を緩めた。


「彼らしい」


「今日の朝、言ってた。

“半日先まで取ったなら、その先でまた詰まるだけだろ”って」


それは、あまりにも本質的だった。


旧中継小屋を取った。

だがそこは“線の途中”にすぎない。

途中だけ生かしても、その先が死ねばいずれまた細る。


「彼は、だいぶ見えるようになりましたね」


「元から見えてるのよ」


ミレナは静かに言う。


「ただ、前はそれを“ムカつくかどうか”で喋ってただけ」


「今は」


「ムカつきより先に、流れで言うようになった」


それは成長だった。


昼前、小さな軍議が開かれた。


いつもの顔ぶれ。

アイザック、ミレナ、ドルゼン、レオルド。

そこへ今日はガルグも呼んだ。


「何だよ、急に」


不服そうな顔だが、前ほど“何で俺が”という刺々しさはない。


レオルドは地図の先を指した。


「旧中継小屋のさらに先です」


「その先?」


「ええ。

今、小屋は生き始めています。

でも、そこからさらに南へ下る線が弱い」


ドルゼンが鼻を鳴らす。


「また一つ取る気か」


「すぐではありません」


レオルドは答える。


「ただ、目標としては必要です」


ミレナが言う。


「具体的には?」


レオルドは地図の南寄り、古い印の消えかけた位置に指を置いた。


「旧見張り所跡。

あるいは崩れた関所跡。

まだ確定ではありません。

でも、旧中継小屋のその先で、もう一つ“息継ぎできる場所”が欲しい」


アイザックが腕を組む。


「守るだけじゃ痩せる、か」


「はい」


レオルドは頷く。


「今のフロストゲートは、敵の手を止めることはできる。

でも、止めるだけではじわじわ削られる。

線を一本ずつでも取り返し、太らせないとまた同じになります」


その言葉に、ガルグがにやりとした。


「ようやく言ったな」


「何を」


「守るだけじゃ駄目だってことだよ」


彼の言い方は荒い。

だが、今の話の芯をよく掴んでいた。


ミレナは静かに息を吐いた。


「村から見ても、同じよ。

燃やされないだけじゃ、いずれ冬と空腹で死ぬ」


ドルゼンが机を軽く指で叩く。


「じゃあ次は、拠点をもう一つ生やす」


「ええ」


「その前に、今の線をもう少し太くする必要はあるがな」


「もちろんです」


それが、今のフロストゲートの強みだった。


誰か一人が夢のような大戦略を語って終わるのではない。

地に足のついた現実を見たうえで、それでも一歩先を取ろうとする。

その噛み合い方がある。


軍議のあと、レオルドは一人で砦の上へ出た。


遠くを見る。


旧中継小屋は、まだ肉眼ではただの点に近い。

だが頭の中ではもう、その先に薄く繋がる線が見えていた。


「ここから先は、守るだけじゃない」


そう口にすると、背後からアイリスの声がした。


「やっとそういう顔になった」


振り向くと、彼女は壁の陰に寄りかかっている。


「前からそういうつもりでしたが」


「ううん。前はまだ、“死なせない”顔が強かった」


アイリスは外の景色を見た。


「今は、“取って生かす”顔」


その言葉は、妙に胸へ残った。


レオルド自身、最近ようやくそこに手が届き始めた感覚がある。

死なないために整えるだけでなく、相手から線を取り返し、こちらの流れに変えていく。

それはもう、防衛ではなく半ば統治に近い。


その夜、記録帳へ書く。


【第四十三日 所見】

・旧中継小屋の先に、次の息継ぎ地点が必要

・ 守るだけでは辺境は痩せる

・ 次は線をさらに伸ばす段階へ入る


最後に一文。


【所感】

辺境は、守るだけでは痩せていく。

生かしたいなら、少しずつでも取り返さなければならない。

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