表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『魔王軍に追放された軍配者、外れスキル〈戦場俯瞰〉で辺境から異世界統一を始める』  作者: 常陸之介寛浩✪書籍・本能寺から始める信長との天下統一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/64

第31話 勝ち残った砦を、今度は試しに来る者たち

敵は必ずしも、すぐ総攻撃を仕掛けてくるわけではない。


本当に賢い相手は、その前に試す。

どこを噛めば痛いか。

どこを揺らせば崩れるか。

どこまでが表の線で、どこからが本当の線か。


第三十一日の朝、フロストゲートはその“試し”を受けた。


最初に来たのは、旧中継小屋だった。


夜明け前に、小屋寄りの見張りが動きを拾う。

大勢ではない。

五、六。

だが荷に近づく気配と、周辺を測る動きがある。

小屋を本格的に奪い返すには少ない。

つまり、“どこまで反応するかを見るための手”だ。


「試されてるな」


アイザックが低く言う。


「はい」


レオルドも頷く。


「大きくは出ません。小屋の荷も全部は引きません。

追えば、別の場所が動きます」


その予測通りだった。


小屋側へ兵を寄せすぎないうちに、村の外れで別の影が見つかる。

さらに西浅瀬でも枝束の音が一度だけ鳴る。


全部が本気ではない。

だが全部が“見ている”。


ミレナは村側の人を動かしながら、低く言った。


「嫌らしい」


「かなり」


レオルドが答えると、彼女は少しだけ苦く笑った。


「もうその返しに慣れてきたのが悔しいわ」


フロストゲートの動きは、そこで試された。


小屋を捨てず。

村へ偏らず。

西も死なせない。

だからといって全部を同じ重さで守るわけでもない。


アイザックは全体を抑え、レオルドはどこへ反応を寄せるかを短く指示し、ミレナは村の人を無駄に揺らさない。

セラは水と火の線を固定し、ドルゼンは東柵を触りたがる兵を怒鳴って止めた。


「そこは今いじるな! 敵が見てる時に自分で弱くしてどうする!」


兵が「分かってる!」と返す声すら、少し明るい。

緊張の中でも、砦の形が前より崩れにくくなっている証拠だ。


結局、その日は大きな戦にはならなかった。


旧中継小屋へ寄ってきた小勢は、こちらが軽く圧をかけるとすぐ引いた。

村側の影も、村人が散らないのを見ると深くは入らない。

西浅瀬も同じだ。


つまり敵は、確かめに来ただけだ。

そして、確かめた結果――フロストゲートは“前より割れにくい”と知ったはずだった。


夕方、砦の上でアイザックが言う。


「今日は負けてない」


「ええ」


レオルドは答える。


「でも、勝ったわけでもありません」


「分かってる」


副官は腕を組んだまま、外の曇天を見た。


「ただ、あいつらも分かったろうよ。

こっちは前みたいに一箇所噛めば全部崩れる砦じゃない」


それが大きかった。


この日やったことは派手ではない。

だが、点ではなく面で持った。

それは第一章の頃にはできなかったことだ。


夜、ミレナが砦の小部屋で言った。


「今日みたいな日が、一番疲れるわね」


「そうですね」


「戦ってる方がまだ分かりやすい。

どこが危なくて、どこを守ったか見えるから」


レオルドは頷く。


「今日は全部が“ちょっとずつ危ない”日でした」


「それを、誰も大きく崩さずに済ませた」


ミレナは帳面を閉じる。


「……ここ、もう砦ってだけじゃないわね」


その言葉に、レオルドは少しだけ目を伏せた。


そうだ。

今のフロストゲートは、壁を守るだけの場所ではない。

村、人、道、商い、噂、その全部を少しずつ受け止める拠点になりつつある。


だからこそ次に必要なのは、防衛だけではない。


そのことを、レオルド自身もはっきり感じ始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ