そばにいるということ
今回は少しだけ、心の距離が近づくお話になっています。
見えることよりも、そばにいることの意味。
そんなことを考えながら書きました。
本日続けて1時間後に続編投稿いたします!
今日明日、テンポ良く読んで欲しい場面なので20時、21時に連投しますので読んでいただけると嬉しいです
「じゃ、お家帰ろっか!」
「これからは、僕とエルの家だねっ」
カフェの出口へ向かっていたエルの足が、ぴたりと止まる。
振り返らないまま、その背中がわずかに強張った。
しばらくの沈黙。
やがて、深いため息がひとつ。
「本当に……なおきの家に行っても……いいのかな……?」
少し笑って答えた。
「もちろん!」
何言ってるんだ僕は…
でも、それが今の自分にできる精一杯だった。
「家族みたいな!?」
エルがゆっくり振り返る。
大きな青い瞳が、戸惑うように揺れていた。
「かぞく……って……」
小さく、確かめるように繰り返す。
「……家族。」
「私、家族って知らない。」
「僕、無責任なこと言ったかも。ごめん」
「無責任だなんて……思ってない。むしろ……逆」
「こんな私に……そんなこと言ってくれて……うれしいんだけど!」
スカートの裾をぎゅっと握る。
意を決したように顔を上げた瞳には、うっすら涙が浮かんでいた。
「……いいの? 本当に……?」
「迷惑じゃないよ!」
「僕しかエルは見えないんだよね?…」
だったらウチしか行くとこないじゃん」
「その理由だけでダメかな?」
「……僕の方こそ、来てくれたら嬉しいし」
ぽろり、と涙が一筋こぼれた。
「……っ」
慌てて手の甲で拭う。
「べ、別に……泣いてない……。目にゴミが入っただけだし……」
「あはは」
悪戯っぽく頭を撫でる。
「も、もう……! なんで撫でるの……!?」
抗議する声は弱々しい。
むしろ、どこか甘えている。
「……ひどい、…意地悪だ!」
撫でられていた場所に、そっと自分で触れた…温もりを確認するように。
「あはは」
今度は自分から隣へ並び、袖をきゅっと掴む。
会計を済ませると、エルがぺこりと頭を下げた。
「ごちそうさま。美味しかったよ!」
そして袖から手を離し、少し躊躇ってから、なおきの手に指を絡める。
顔がほんのり赤い。
「……じゃあ、帰ろう、なおき!」
少し照れくさくて、前を向いたまま頷いた。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
今回のテーマは「家族」という言葉でした。
軽く言ったつもりの一言が、誰かの救いになることもある。
でも同時に、その言葉はとても重い。
なおきにとっても、エルにとっても、
この一歩はきっと大きなものだったと思います。
少しでも胸が温かくなってもらえたなら嬉しいです。
ブックマークや感想、もしていただけると嬉しいです。
そしてこれからも二人を見守ってもらえたら幸いです。




