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特級ヒールより温もり

いつも読んでいただき、本当にありがとうございます。


今回は少しだけ立場が逆転するお話です。

いつも当たり前のように守ってくれている存在が、もし倒れたら――。


強いと思っていた人の弱さに触れたとき、

もらっていたものの大きさに気づくのかもしれません。


ドタバタで、ちょっと甘くて、少しだけ切ない一話。

どうぞ最後までお付き合いください。


「……なんか、今日だるいな」


帰り道。

信号待ちの最中、視界がわずかに揺れた。


でも、気のせいだと思った。


最近ちょっと寝不足なだけだ、と。


玄関のドアを開ける。


「ただいま――」


一歩、踏み出す。


その瞬間。


世界が、傾いた。


鈍い音が床に響く。


「なおき!?」


「え!? え!? どうしたの!? なんで急に…イベント始まるの!?」


ミニエルがその場でくるくる回る。


急いで玄関に駆けつけたエルは即座にしゃがみ込み、なおきの額に触れた。


「……熱い」


指先が、びくりと震える。


「熱ってなに!? 爆発するの!?」


「違う!」



なおきは薄く目を開ける。


焦点が、合わない。


「……ちょっと、ふらっと……でも大丈夫……」


全然、大丈夫じゃない。


二人は顔を見合わせた。


そして、同時に気づく。


――こういう時、どうするの?


看病だよね…



洗濯も、掃除も、料理も。


体調が悪い日だって、きっとあったはずなのに。


全部、なおきがやっていた。


「…私達がやるしかないよね」


エルが小さく言う。


声が、少し震えている。


「まず、なおきを寝かせなきゃ。ミニエル、布団」


「は、はいっ!」


なんとか2人でベッドまでなおきを運んだ


とりあえずなおきを着替えと寝かしつけて一旦は落ち着いた…


でも、いつもなおきって何してたっけ?と今更ながら考える…




洗濯機の前で固まる二人。


「どれ押すの?」


「分かんない」


「これ入れればいいのかな?」


「洗濯用洗剤、これだ!!」


「ボタンがどれ押せばいいの!?」


洗濯機、無言。


案の定適当にボタンを押してモコモコの泡地獄になりました…



「ミニエル、そこ雑巾掛けして!」


ミニエル、不器用に一点集中ゴシゴシ。


「ここだけ神域みたいになってる!」


磨き過ぎ!!



「病人にはおかゆだよね?!」


「白くてやわらかいやつ!」


冷凍ご飯をなおきと作ったのを思い出した


「これならできるね!!」


ぐつぐつ、ぐつぐつ。


完成。


「なおき起きられる? おかゆできたから少しでも食べて!?」


ミニエルがフーフーして食べさせる。

その横でエルが心配そうに見つめる。


「どう?」


沈黙。


「……甘い」


二人、固まる。


「塩と……砂糖……間違えた?……」


静寂。


「……ごめん」


エルの声が震える。


ミニエルの目に涙が溜まる。


「私たち……何もできないじゃん」


ぽつり、とこぼれた。



病院にも連れていけない。

誰にも助けを呼べない。


今まで全部、なおき任せだった。


「なおきがいないと……私たち……」



さらに熱が上がる。


荒い呼吸。


うなされる声。


ミニエルがなおきの手をぎゅっと強く握る


「怖いよー」


エルが“自分の無力さ”に歯を食いしばる


エルは唇を噛む。


「私達、なおきにもらってばかりだったんだね…」



「冷たいタオル置くことしかできない…」



初めてだった。


なおきが、自分より弱く見えるのは…人間ってこんなに弱いんだ


そのとき。


「……エル…ミニエル…」


かすれた声。


「ありがとう」


…。


「なんで泣いてんのよ、2人とも…」


「だって…」


2人とも声を出して泣き出した。


なおきの声に、不安とやるせない感情が一気に溢れたのだ


「何もできなくてごめんなさい」


なおきは、優しく笑う。


「なんでよ。こんなにしてくれて」


「僕、初めてだよ。おでこにタオル乗せてもらったの」


「甘いお粥も初めてだし。そもそもお粥食べたのだって初めてだから僕」


「ドタバタ音してたから、色々やってくれてたんでしょ?」


「ありがとね」


二人は顔を見合わせ、ほんの少し笑った。


「少し寝てもいいかな」


「あ、ごめん!ゆっくり寝て!」


なおきは深く眠った。




朝、目を覚ますと。


ベッドに伏せたまま眠る二人。


涙の跡。


こんな格好で……。


なんか悪いことしちゃったなぁ。


でも、体はだいぶ楽だ。


なおきが起きた気配に気づき、二人が飛び込んでくる。


「近いんだけど」


「えへへ」


「大丈夫?!」


「うん、おかげさまで」


「よかったー!」


「ごめんね、何も役に立てなくて…」


「またそれ言うの?」


「僕、生まれて初めて、自分が弱ってる時にこんなに親切にしてもらえたよ」


「それじゃダメかな?」


「…ダメじゃない」


エルも頷く。


沈黙。


「じゃ、なおきは感謝しなさい!!」


ミニエルがニカっと笑う。


「もう、ミニエルったら」




「あのさ、ミニエル!?」


「私たち昨日気が動転してたでしょ?」とエル


「うん」


「私、なおきを助けたいって思った」


「私も思った」とミニエル


「私さっき思い出したんだけど」


「私達、癒しの力使えるよね?」


「特級ヒール的なの」


「あっ!」と思い出したようにミニエル


エルが真顔で続ける。


「生命の尊厳的にあからさまにはダメだけど…」


「どうせうちら堕天使だし、なおき最優先!」


ミニエル、あまりのショックにアイーン顔からピクリともしない


なおきも、ぽかん。口が…開いたまま…



「僕、朦朧としながら、頑張って勝手に落ち込んでる君達のこと慰めてた気がするのだけれど!?」


「ええ、おっしゃる通りです…」


「がはっ!」


二人、再びなおきにダイブ。


なおきは二人を撫でる。


「でも僕はヒールより、看病の方が嬉しいかなぁー」


ミニエルとエルが顔を向き合って


そして、


同時に笑った!!

最後まで読んでくださりありがとうございました。


ヒールという力があっても、

本当に人を救うのは「ぬくもり」なのかもしれません。


何もできないと思っていた二人が、

実はもう十分すぎるほど与えていた――

そんなお話でした。


もし少しでも心があたたかくなったら、

応援よろしくお願いします!!


これからも、なおきと二人の天使(堕天使)をよろしくお願いします。


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