知ってる
いつも読んでくださってありがとうございます。
今回は、ちょっとお風呂で騒がしくて、ちょっとだけ拗ねて、でもやっぱり優しいお話です。
大切な人だけ知っててくれてればいいじゃん!
強がるエルと、全部分かっているなおきと、空気を読まない(読めない?)ミニエル。
笑って、拗ねて、泣いて、そしてまた笑う。
そんな三人の「知ってる」の物語を、どうぞお楽しみください。
ミニエルが新しい技ができたと言い出した日曜日の夕方、
「今日は絶対3人でお風呂入るからねっ!」
ミニエルが胸を張る。
「僕、嫌な予感しかしないんだけどなぁ」
「だいじょーぶだよ!」
湯気の立つ浴室。
エルは髪を結びながら、少し得意げに言う。
「新技? 私の方が凄いと思うんだけど」
「ちがうもん! これはミニエルだけの技!!」
僕のあぐらの上にミニエルが座って、向こう側に向かい合ってエル、いつもの配置で湯船にみんなが浸かった!
湯気がゆらりと天井へ溶けていく
向かい合うエルは、肩まで浸かりながら静かに目を細めていた。
濡れた金色の髪はいつもより重く、頬に細く張り付いている。
水滴が毛先から伝い、鎖骨をなぞり、湯面に落ちるたび小さな波紋が広がった。
透き通るような白い肌は、湯気越しにやわらかく霞んでいる。
まるで一枚の絵画みたいで、触れれば壊れてしまいそうな儚さがある。
「……なに?」
視線に気づいたのか、エルが首を傾げる。
その仕草だけで、胸の奥が少し熱くなる。
湯に溶けた金色が、淡い光の輪郭をつくる。
神聖なのに、近い。
手を伸ばせば届く距離にいる…
この角度から見るエルは、ずるい…本当に言い表せれないほど美しい
数秒の沈黙。
プクプクプク‥プク
ぽこっ。
「……?」
なおきが首を傾げた瞬間。
プクプクプクプクプク
泡がエルの背後から一直線に浮上。
ぽこぽこぽこぽこっ!!
「……え?」
次の瞬間、浴室に響くミニエルの声。
「天使のおなら!!」
「ちょっと待って!!」とエル
「あーあ、終わったわ」なおき
まるでエルが発生源みたいな‥
なおき、我慢できず吹き出す。
「ぷっ……!」
「ちがう!! 今の私じゃないから!!」
「お姉ちゃん、力んでたよね!」
「力んでない!!」
ミニエルも、お腹を抱えて大爆笑。
なおきも必死にこらえるが、肩が震えている。
「なおきまで笑ってる……」
「ご、ごめ……いやだって……タイミングが……」
エルの顔が真っ赤になる。
「もう知らない!!」
ざばーん、と立ち上がり――
数分後。
家出決行。
外は夕暮れ…
いつもの橋の上。
川面に夕暮れ色が溶けている。
エルは手すりに肘をつき、むすっとしていた。
「……どうせ私なんて」
小さく呟く。
足音。
なおきとミニエルが並ぶ。
「やっぱりここだ」
エルは振り向かない。
「別に家出じゃないし」
「知ってる」
なおきは隣に立つ。
少しだけ距離をあけて。
「…見えないし」
ぽつり。
「私、人から見えないし。ミニエルみたいに素直じゃないし。さっきのも、私冗談なのに本気になっちゃって…」
声が弱い。
「強がってるだけだもん」
沈黙。
夕陽が三人を染める。
なおきはゆっくり言った
「知ってる」
エルが眉を寄せる。
「いつも頭撫でる時さ…」
「……なに?」
「怒ってても、撫でた手の温もり、あとで自分の手で触って確かめてるのも知ってる」
エルの肩がぴくりと動く。
「僕が無理して笑ってる日は、何も聞かずに隣に座る時間、ちょっと長いのも知ってる」
「‥‥」
「眠れない夜、先に寝たふりしてるけど、僕が布団に入るまで目を閉じないのも知ってる」
エルの視線が揺れる。
「強いふりしてるだけで、僕がいなくなる想像だけは絶対しないのも知ってる」
「……やめてよ!」
「堕天使のくせに、僕らが傷つく未来だけは本気で嫌がってるのも知ってる」
「‥別に」
「『別に』って言いながら、僕が笑うまで視線外さないのも知ってる」
エルの目が潤む。
「ミニエルと元々一つなのにお姉ちゃんになろうとしてることも知ってる」
「‥‥」
「お店でオムライス、綺麗な方を僕にしてくれてたのも知ってる」
「もうやめてって」
「帰り遅いと、窓からずっと外見てるのも知ってる」
「無理して大人みたいに喋るくせに、感情揺れると子供みたいに戻るのも知ってる」
エルの目から涙がぽろり。
「‥うん」
なおきはそっと頭を撫でる。
今度は逃げない。
「見えなくても、ちゃんと見てるし知ってる」
エルは撫でられた所を自分の手で触れた
いつもの癖。
「‥なおきのばか」
でも声は優しい。
だいぶ暗くなっできた空にエルの涙が光った
‥
暗闇になる直前の夕焼けも綺麗
そのとき。
ぐいっ、ぐいっ
ミニエルがなおきの服の裾を引っぱった
「なおき?!」
「ん?」
ミニエルが‥ニヤニヤしながら‥
「お姉ちゃんのオナラぽこぽこぽこ」
「ちょっ……!」
なおき、必死に口を押さえる。
なおき、笑うのを堪えて震える肩。
「知ってる知ってる!ぽこぽこって」
エル、停止。
数秒。
「なおきー!ミニエルー!!」
さっきまで夕焼けだった空が地球の隅という隅から雷雲と共に稲光が鳴り出した!!
「えっ?やばっ!」
そして、
「あんた達!雷打たせて、橋から落とすよ?」(エル怖い)
「ひゃああああ!」
なおきとミニエルが逃げる!エルが追いかける!!
最後はこうなるのも知ってる
最後まで読んでくださってありがとうございました。
エルは強いけれど、本当は一番繊細で、なおきは鈍いようで一番見ていて、ミニエルは全部壊して全部救う存在。
「見えなくても、ちゃんと見てる」
この三人の関係は、きっとこれからも変わらず、騒がしく続いていきます。
もしよろしければ、感想や応援をいただけると嬉しいです!
また次のお話でお会いできたら嬉しいです。




