ちょい待てい!!
見えるはずのないものが見えたら、あなたはどうしますか?」
ある日突然、頭の上に輪っかを浮かべた女の子が見えるようになったら——
それが“堕天使”を名乗る、ちょっと素直じゃない美少女だったら。
これは、どこにでもいる(たぶん)普通の高校生・なおきと、
自称・堕天使エルの、少し不思議で、少しだけ特別な出会いの物語です。
ゆるく、時々真面目に。
二人の会話を楽しんでいただけたら嬉しいです。
見えるもなにも‥
目の前に可愛い天使みたいな女の子がいます
「可愛い」という言葉に、女の子の白い頬がほんのりと赤く染まる。
けれどすぐに、ぷいっとそっぽを向いて腕を組んだ。
「……べ、別に。私は天使じゃないし。ついこの間、堕天使になっただけで」
ぶっきらぼうに言い放つが、耳まで赤い。
ちらり、と上目遣いでこちらの様子をうかがっている。反応待ちなのが丸わかりだ。
「それより、本当にあなた変だよ。どうして私が見えるの? 誰かに何かされたとか、そういうのじゃないの?」
「それ言うならキミも変だよ。だって頭の上に輪っかあるし」
思わず笑いながら言うと、彼女ははっとして自分の頭に手をやった。
そこには当たり前のように浮かぶ輪。
「あ……。そっか。うん、まあ、それはそう」
どこか気まずそうに息を吐く。
けれど警戒心は、少しだけ薄れたみたいだ。
「でも、だからって普通は見えないの! 私が特別なのか、それともあなたが特別なのか……。ねえ、何か心当たりないの? 呪いとか」
「なに呪いって。僕、呪いかけられたの? まあ、見えないはずのキミが見えるなら、すごいよね」
あっけらかんと返すと、エルは目をぱちくりさせた。
「え、いいの……? 呪いかもしれないんだよ? 見えちゃいけないものが見えるようになったのかもしれないし……」
本気で心配している顔だ。
僕が動じていないことのほうが、むしろ理解できないらしい。
「……変なの! 普通もっと怖がるでしょ! だって頭に輪っかついてるんだよ! あなた本当に何なの?」
「まあ、今んとこ人だね。たぶん」
エルはきょとんと瞬きを繰り返す。
意味を理解しようとして、結局あきらめたように小さくため息をついた。
「人、なんだ……。うん、まあ……見ればわかるけど」
一歩、近づいてくる。
警戒というより、完全に好奇心だ。
じろじろと観察される。
「それで? 人間のなおきは、堕天使の私と出会ってどうする?!」
「なんで僕がなおきって知ってるの? キミの名前は?」
「さっき、あなたの頭の中ちょっとだけ見ちゃったから」
悪びれもせず言い切る。
「私はエル。レミエル! みんなエルって呼ぶ」
少し誇らしげに胸を張る。その姿は年相応で、どこか無邪気だった。
「そっか、エル。まあ、堕天使を見たの初めてだったから嬉しかったよ」
またね!
帰ります
帰ろうとするなおきの背中に、慌てたような声がかかる
ちょい待って!
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
エルは堕天使を名乗っていますが、たぶん誰よりも天使らしい子かもしれません。
照れたり、強がったり、でもちょっと寂しそうだったり。
そして、動じないなおき。
彼が「普通」なのか、それとも一番変なのか——
それはこれから少しずつ明らかになっていくかもしれません。
二人の距離がどう変わっていくのか、
見守っていただけたら嬉しいです。
感想やブックマーク、とても励みになります。
また次話でお会いできたら幸いです。




