2人のエルとの朝と、15時の約束
いつも読んでいただきありがとうございます!
ダブエルの夜を越えて、今回はにぎやかな朝回です。三人で過ごす“はじめての朝”の空気感と、少しずつ家族みたいになっていく距離をゆるく描きました。
そして、次回いよいよ学校編へ。この約束が、昼休みの予想外に繋がります。
朝になっても――
エルとミニエルは、ちゃんと二人だった。
目を覚ましたなおきが最初に見たのは、
横で苦悶の表情を浮かべながら寝ているエル。
その向こうで、ミニエルが大の字。
しかも片足はエルの首、もう片足はお腹にどーん。
本人は、素敵な夢の真っ最中である。
……面白い朝だ。
「ミニエル、起きて!それ多分エル苦しいやつ」
「んん‥ふあぁー‥え? ‥ほんと!? もう食べられないんだけど‥ごめんなさい!」
少し寝ぼけながら、ぱちっと目を見開いて飛び起きる。
「けほっ、げほっ……! はぁ……あ、りがと……なおき……」
「ごめんね、エルお姉ちゃん! 私寝相が悪くて……」
ぺろっと舌を出すミニエルの頭を、ぐったりしたまま撫でるエル。
ミニエルの寝相の悪さは、今に始まったことではない。
なおきは二人まとめて、よしよし。
「わーい! いい子だって!」
いや、特に何もしていない。寝ていただけである。
「……はぁ。もういいわ。お腹すいた」
切り替え早い。
「じゃあ今日はパンと目玉焼きにしよっか」
「やったぁー!」
トースターの前で固まるエル。
「……どうやるの、これ」
「無理しなくていいよ?」
「無理なんてしてないわよ!」
ダイヤルを回すだけだと教えると、唇を尖らせる。
そして、こてん。
「……撫でて?」
「はいはい」
頭を撫でると、エルは少しだけ目を細めた。
「あなたといると……調子が狂うわ。堕天した時よりも、もっと前から知っていたみたい……あなたが、私の知らなかった扉を開けていく」
潤んだ瞳が、まっすぐ向く。
なおきは一瞬だけ止まって、
「そっか。いいことならよかった」
「……ずるい」
ぽつり。本心がエルから少しこぼれた。
「じゃ、エルがパン担当。僕は目玉焼き。ミニエルは牛乳をレンジでピッ、できる?」
「任せて!」
「よろしくー」
三人とも、“こういう朝”は初めてだった。
だからか、空気がやわらかい。
「いただきまーす」
ミニエルが半熟の目玉焼きを持ち上げ、
「ちゅーっ。」
黄身を吸った。
なおき、二度見!
「吸うの?」
「はぁ、美味しい!」
ニッコリ!!
まあ、子供だし……と思った瞬間。
エルも真似した。
「ちゅーっ。」
「おいしい!」
満足顔。
正解なの?!
吸っちゃうの?!
「よ、よかったね!」
吸う人初めて見た‥
外ではやめさせよう、と心に誓うなおきであった。
「家族団欒」という言葉が、ふわっと空気に溶ける。
パンの焦げた匂い。食器の音。
そして、三人分の笑い声。
当たり前みたいで、当たり前じゃない朝。
「そういえば今日、学校あるんだ」
ぴくり。
二人同時反応。
「学校……あなたは人間だから通うのね」
「お留守番できる?」
ミニエルはすでにお留守番をしてくれている。その時は猫と遊んだり、花の精霊とお昼寝していると言っていた
「大丈夫よ。任せて!この子と大人しくしてるから」
言いながら、ちょっとそわそわしている。
エルは少し怖いのだ
一方ミニエルはキラキラ
エルがいるせいか我慢せずに遠慮なく話してくる
「ねえなおき! 学校どこ!? ミニエルも行ってみたい!」
エル、横目で聞き耳を立てている‥
まあ、2人なら、ってなおきも思った
「じゃ、迎えに来る?」
「15時に学校の校門前まで迎えに来てくれると嬉しいなぁ?!」
と言うと
なおきはメモ帳を取り出し、簡単に分かりやすく地図を描く。
現在地。校門。教室の位置まで。
「もしもの時のために、ここが僕のクラス」
「わーい! クラス! お兄ちゃんとお姉ちゃんいっぱい?」
「……お姉ちゃん?」
エルの眉がぴくり。
ミニエルは気づいていないがエルがかなり食いついた
朝のわちゃわちゃは、まだまだ終わらなさそうだった。
そしてその約束が、
昼休みの“予想外”に繋がることを――
しかもそれは、
「なおきにしか見えないはずの二人」が、
学校内に現れる出来事になるとは、
このときのなおきは、まだ知らなかった。
今回も読んでいただきありがとうございました!
ほのぼの朝ごはん回でしたが、エルの本音や不安も少しだけ滲ませてみました。ミニエルの自由さと、振り回されるなおきの日常も安定してきましたね。
そして次回――学校編本格スタート。
テンポ良くわちゃわちゃしていくので、引き続き見守っていただけたら嬉しいです!
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