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膝の上の天使と屋上ランチ

いつも読んでいただきありがとうございます!


ついに学校編・昼休み回です。約束は15時のはずなのに、待ちきれずに来てしまうダブエル。なおきの平穏な学園生活は、静かに(そして膝から)崩壊していきます。


今回は「膝の上の天使」と「屋上ランチ」のほのぼの+わちゃわちゃ回。三人だけの特別な空間と、少しだけ距離が近づく時間を楽しんでいただけたら嬉しいです


昼休みのチャイムが鳴った瞬間、校内は一気に騒がしくなる。


購買へダッシュする足音。

弁当のふたを開ける音に笑い声。



「なおき?!今日学食行く?!」


同級生が誘ってくれたが…


「今日はやめとく。ごめんねっ!」


「おう!じゃ俺達だけで行くわ」


「また誘ってよ」


そんな、何気ないやりとりなのだが…



――


なおきの席だけが、異様だった。


右膝にミニエル…

左膝にエル…


完全占拠。


周りから見れば、少し挙動不審な男子が一人座っているだけだが、本人は両足に堕天使を乗せている。


「…ところでさぁ」


「僕15時に校門って言ったよね?」


「今12時半ですけど分かるかな?」


「えへへ、待ちきれなかった!」


「なおきが寂しいかな?って来てあげたのよ」


「来てあげたのよ、じゃないよね!」



このままでは物理的にお昼休みどころではない



「よし、パン二人分買って、屋上へ行こう」


「屋上? 行く行く! 高いとこ好き!」


「屋上…人はいないのかしら?」


興味、ありありである。



購買でパンを適当に買って、ひと気のない階段へ。


「ではお二人、ちょっと仕事をお願いしたいのですが?」


「屋上の鍵、開けることは可能ですか?」


「仕事」という響きに、二人がにやりと笑う。


「特別だよ!本当はやっちゃダメなんだからね!」と言いながらも嬉しそうなミニエル


「なおきは見ててね!」とエルもニコニコしている



エルが手を差し出す。


シャラン


何もない空間から、古びた真鍮の鍵が現れる。


それを鍵穴にさして回した《ガチャリ》


重い金属音が、昼休みの喧騒を切り裂く。


次の瞬間ーー


扉が、ゆっくりと外へ押し開かれた。


ぶわっ。


光が、溢れ込む。


視界いっぱいに広がる、抜けるような青空。


雲ひとつない。


風が、三人を包み込んだ。


ミニエルの金色の髪がふわりと舞う。


「わああああー! 気持ちいいー!」


声が空に溶ける。


フェンスの向こうには、街が広がっていた。

小さな車、遠くのビル、きらきら光る川。


まるで世界を見下ろしているみたいだ。


エルは一歩、外に出る。


その瞬間、

金色の髪が光を含んで揺れた。



その姿を見た瞬間。


――本当に、天使なんだ。


なおきは、そう思った。



「……悪くないわね」


けれど彼女は空へは飛ばない。


振り返る。


なおきを見て、ほんの少しだけ微笑む。


「貸し、一つね」


ここは天界じゃない。


でも、


今この瞬間だけは、


三人だけの、特別な場所だった。



「すごーい! ねえ見て! 猫いる!」


ミニエルがフェンスに張り付く。



「天界ではね、こういう悪いことはしないのよ。決まりとかルールってやつかな?でも今は……このドキドキも、ひととして生きてる証みたいでいいわね」



難しい話は、ミニエルには届いていない。


「パン食べよー!!」


ミニエルが空気感を即回収した



「ハムカツサンド、焼きそばパン、たまごサンド。どれがいい?」


紙袋を開くと、


揚げ物の香ばしさと焼き立てのパンの香りがふわっと広がった。


「ハムカツがいい!!」


「……私は焼きそばパンにするわ」


二人とも食べたことがないのに見た目で選んだ



屋上の隅、に丸くなった


風が心地いい。


遠くで校庭で遊んでいる声が聞こえて、空はやけに青い。



「いただきまーす!!」


ミニエルが勢いよくハムカツにかぶりつく。


サクッ――


「わっ、なにこれ!じゅわーってする!」


衣の中から肉汁がじゅわっと溢れて、頬を押さえてぱたぱたする。


「ハムカツと甘いソースとキャベツが絶妙に…!これ、無限に食べれる!」



エルは少しだけ姿勢を正して、焼きそばパンを手に取る。


細い麺がパンの間からのぞいている。


そっと一口。


もぐ。


「……麺とパン……」


もぐ。


「焼きそばとパン……ちゃんと合うのね。」

さらにもぐ。


「たまに出てくるキャベツ、お肉、紅しょうがが口の中で味変して美味しい……」



初めて食べるパンのバリエーションに、じわっと表情がほどけていく。



なおきは、そんなエルを横目で見ながら


チラチラ感じる目線に気づいた


エルの視線が、たまごサンドに向いていることに。


ふわふわのパンに、たっぷり詰まった卵。


マヨネーズのいい匂い。



無言で、エルの口に


「これも美味しいから食べてごらん?」


ぐい!


「んむっ!?」


突然、口に押し込まれるたまごサンド…


「な、なにするのよ!」


もぐ、もぐもぐ、、


……。


もぐ


ふわっとしたパンと、優しい甘さの卵


思わず、


「……もう、一口。」


耳まで赤くなる。


「……っ、美味しい、ありがと」


小さな声。


「どういたしまして」


なおきが笑う。


「べ、別に欲しかったわけじゃないから!」


「あはは、素直じゃない奴め!」


「うるさい!!」



そのやり取りを見て、ミニエルがにやにやする。


「ねえねえ、お姉ちゃん!?」


「ん?」


「なおきにも、あーんしてあげなよ!」


「は!? なんで私が!?」



ぴたりと動きが止まる。


顔が一気に赤くなる。


「べ、別に……そんなの……」


言葉が続かない。


そこへミニエルがぐいっと顔を寄せる。


「ミニエルは普通にあーんするもん!」


「…!!」


その瞬間ーー


あまりにも可愛くて、


思わず、ぎゅっと抱き寄せた。


「ひゃっ!?」


ミニエルもそのまま二人に突撃。


「ギュー!!」


三人がもつれるように重なる。


「ちょ、やめ……くすぐった……!」


エルの声が少しだけ崩れる。



そのまま、なおきがエルの頭をごしごしと撫でた。


「ん……」


目がとろんと細くなる。


頬はほんのり赤いまま。


少しだけ間を置いて――



「……もう。」


小さく笑って、


「やめてよね」


エルがぽつり、と小さくこぼす。


なおきは、それを聞いて


くすっと笑った。




「明日も来る?」


「来る!」


「来ないわけないでしょ」


「明日は購買パン争奪戦しよっか」


「ハムカツとピザパンとチョコクロワッサン!」人気の3種ゲットするには過酷な道のりだよ!!」


二人同時に、ポキポキと指を鳴らす。


「やったる」


屋上に響く笑い声


風が三人の髪を揺らす


――そしてなおきは思う


明日、購買は戦場になる


そしてきっと…


僕の膝も、感覚なくなるだろうなぁー


明日も朝から来そうだなー、この2人…


……いや。


たぶん。


朝どころか、一緒に登校しそうな気がする。




今回も読んでいただきありがとうございました!


見えているのはなおきだけ。だからこそ成立する、膝の上というカオスな昼休みでした。そして屋上というちょっとした非日常で、エルの価値観や心の変化も少しだけ描いてみました。


ミニエルの無邪気さ、エルの照れ、なおきの受け止め方――三人の関係が少しずつ自然になってきた回でもあります。


そして次回は「購買パン争奪戦」開幕です。ハムカツ・ピザパン・チョコクロを巡る、静かなる(?)戦場をお楽しみに!


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