川の字…温かい夜
いつも読んでいただきありがとうございます!
今回は少し特別な「ダブエル」回です。
同じエルなのに違う反応と距離感、そして振り回されるなおきのゆるい夜を書いてみました。
ほのぼのの中に、ほんの少しだけ余韻も混ぜています。
あたたかい気持ちで読んでいただけたら嬉しいです。
今夜は10分後に連投しますのでそちらもお楽しみに!!
「まあ、いっか、どっちもエルだし!」
「……ふふっ、それもそうね。どっちも私だものね」
納得したように頷き、楽しげに目を細める。
二人同時存在というレアな状況を、むしろ少し面白がっているようだった。
「ねえねえ! じゃあ今夜は二人でなおきをぎゅーってして寝られるってこと!?」
ミニエルが無邪気に手を合わせて跳ねる。
「ミニエル! そんなはずかしい…!」
ぴしゃりと言いながらも、
「……でも、悪くないかもしれない」
後半はきれいに小声だった。しかもなおきの顔色をちらちら確認している。
思考回路が同じ二人の意見が、珍しく完璧に一致した瞬間だった。
「じゃ、川の字で寝よっか」
「か、川の字なの!?」
「川の字ー!やったー!」
ミニエルはぴょんぴょん大喜び。
大人エルは完全に置いていかれている。
「ちょ、ちょっと待ってよ! 三人で一つのベッドって……!」
みるみる顔が赤くなる。
「だ、だってベッドそんなに大きくないじゃん! 絶対身動き取れなくなるって! だから今日は私が床で――」
「えー! やだー! エルちゃんと一緒がいい! 狭いほうがあったかいもん!」
「うぅ……」
最後の抵抗、あっさり却下。
拒めばなおきがしょんぼりするかもしれない。
その想像に、エルの覚悟は秒で崩れた。
「……わかったから! そんな顔しないでよ!」
ため息混じりでも、声はどこか柔らかい。
「べ、別に嫌なんて言ってないでしょ。ただ……心の準備ができていなかったって言うか。仕方ないから、特別に許可してあげる」
「やったー! 真ん中なおき! 右エルちゃん! 左ミニエル! 完璧な川の字!」
「ちょっと待って。それだと私、確実に落ちるって!!」
そのとき、エルの視線がふと写真立てに向いた。
ほんの一瞬。
笑っていたはずの表情が、わずかに止まる。
写真立ての表面に、照明の灯りが揺れた。
まるで、誰かが瞬きをしたみたいに‥
けれど次の瞬間には、エルはいつもの調子で肩をすくめた。
「まったく、あの子は……。でもまあ、たまにはいっか!」
なおきは気づいていた。
あの写真を見た一瞬だけ、彼女の目がどこか遠くを見ていたことを。
でも、今は聞かない。
聞いてしまえば、このあたたかい空気が少しだけ変わってしまう気がしたから。
「いや、毎日になると思うよ?」
「……は?」
「ここ! ミニエルの場所!」
「どきなさい。あなたが真ん中だと本当に私が落ちちゃうって」
わちゃわちゃしながら三人でベッドに潜り込む。
「仲がいいなぁ、ダブエルは!」
なおきが電気を消すと、間接照明の淡い光だけが残った。
「ほんとに川の字だね」
「ダブエル省略しないでよね」
耳元でくすりと笑う声。
気に入らないはずの造語なのに、少しだけくすぐったい。
「……まあ、いいけれど。おやすみなさい、なおき」
「おやすみなさーい! エルいい夢見てね!」
ミニエルはすぐに寝息を立て始める。
規則正しい呼吸が、すぐ隣で揺れている。
エルは、まだ目を閉じない。
抱きしめられた腕の温もり。
隣の小さな体の安心感。
そして、自分を包むこの匂い。
1700年分の孤独が、少しずつほどけていく。
――すごく嬉しい夜!
幸せすぎるんだよねっ!いえい!!エルは心の中で飛び跳ねた
そう心の中で呟いて、そっと目を閉じた。
やがて彼女も穏やかな呼吸に変わる。
未来はまだ分からない。
でも今は――
川の字で、ちゃんとあたたかい。
今回も読んでいただきありがとうございました!
ミニエルの無邪気さと、大人エルの照れと覚悟が同時に出るお気に入りの回です。さりげなく入れた描写にも、少しだけ意味があったりします…ふふ。
あ、あと10分後にもう1話投稿するので続けてご覧ください
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