湯気の中の本音と、天使のヤキモチ 2
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回は、お風呂のあと――
同じで違うミニエルとエル、なおきの少しだけ真面目で優しいお話です。
お楽しみに!!
先にお風呂を上がったエル。
寝室のドアを開けたなおきは、思わず固まった。
ベッドの上で、小さな体がばたばたと転がっている。
「……え?」
ぴたりと動きが止まり、むくりと起き上がる小さな少女。
いつものミニエルだった。
「あれ? 可愛いミニエルに戻ってる?」
「なんでエルとお風呂入ったのよー!」
開口一番、それだった。
「ミニエルがエルになったんだろ!?」
「むぅ……そうだけど……」
不満そうに頬を膨らませる。
そして、じーっとなおきを見つめた。
「……大きい私と、何してたの?」
「その聞き方やめて!」
「教えてくれないとヤキモチ妬いちゃう!」
少し頬を膨らませる。
「あの私、なんか色っぽかったし……」
「っていうか、記憶ないの?」
その問いに、ミニエルは少しだけ表情を曇らせた。
「……ぼんやり、ある。でも、はっきりじゃないの」
なおきは少し考えてから言う。
「ミニエル。大きいエルになれる?」
「どうして?」
少しだけ寂しそうに笑う。
「……やっぱり大きいほうがいいの?」
「違うよ。」
なおきは首を横に振った。
「少し話したくて」
その一言で、ミニエルは静かに頷く。
淡い光がふわりと部屋を包んだ。
現れたのは、大人のエル。
今度は落ち着いたワンピース姿だった。
「これでいい?」
なおきは少し笑う。
「一つ聞いてもいい?」
「なあに?」
「お風呂のこと…お互いのことだとは思うのですが、僕は変態でしょうか?」
「は?思ってないわよ!」
即答だった。
なおきは胸を撫で下ろす。
「よかった……」
「でも、ちょっとだけ変態」
「やっぱり!?」
思わず頭を抱えるなおきを見て、エルがくすっと笑う。
その笑顔に、なおきもつられて笑った。
けれど、その笑みはゆっくり消えた…
「…あのね」
少し強く膝を握る。
「エルは僕のために変わってくれるのかなって…」
「でも、その優しさに僕が甘えてるだけなんじゃないかって……今考えた」
部屋が静かになる。
エルは何も言わず、そっとなおきの手を包んだ。
「優しいなーなおきは」
穏やかな声だった。
少し照れたように笑う。
「ちゃんと繋がっていられるのかなって、私も思っててね」
指先に少しだけ力が入る。
「でもね」
なおきを見つめる。
「なおきとだから」
少し照れ笑いを浮かべる。
「好きな人だもん」
そして、優しく微笑んだ。
「私はあなたを愛してる」
なおきの瞳が揺れる。
「でも……僕の気持ちがちゃんと伝わってるのか不安でになった…」
「伝わってるよ充分」
迷いのない返事だった。
「ミニエルも私も、なおきに大切に想われてるってちゃんと知ってる。」
一歩だけ距離を縮める。
「私たちは分かれているようで、同じなの。」
優しく笑う。
「なおきが好きなのはーー」
「《私たち》でしょう?」
その一言で、なおきの肩から力が抜けた。
「……うん。」
自然と笑みがこぼれる。
「ミニエルも、エルも、大好き」
エルは嬉しそうに目を細めた。
「なら、それで十分」
穏やかな沈黙。
お互いの温もりだけが、ゆっくり流れていく。
ふと、なおきが思い出したように口を開く。
「そういえばさエル?」
「ん?」
「なんでお風呂で急に変わったの?」
「……っ」
露骨に目を逸らす。
天使の輪がぴくぴくと点滅した。
「それは、その…」
「あはは…」
なおきは少しだけ意地悪そうに笑う。
「欲求が溜まると出てきちゃうとか?」
「はあ?」
「なおき!?」
耳まで真っ赤になっている。
なおきは笑いながら、そっと抱き寄せた。
「大好きだよ」
「ありがとう」
その一言で、エルの体から力が抜ける。
「……ほんと、ずるいなぁ」
胸に顔を預け、小さく笑う。
「私も、大好き」
しばらく抱き合ったあと、エルは名残惜しそうに離れた。
「そろそろミニエルに戻ってあげないと」
「きっと心配してるから」
「ヤキモチ焼くよあの子」
そう言って、人差し指で自分のこめかみを軽く叩く。
淡い光がゆっくり広がり、その姿が小さくなっていく。
やがて光が消えると、そこには小さなミニエルがちょこんと立っていた。
「おかえり!」
「ただいま!」
満面の笑み。
「なんかすごく温かい感情が入ってきたよ」
「ミニエルのこと話してたからねー」
「あ!ずるい、何話してたのよー」
「さあ、歯磨きしよっ!」
「なおきと一緒に寝る!」
元気よく走り出した。
「こらー走ると危ないよ!」
なおきが慌てて追いかけようとした、その時だったーー
「まったく、あなたは騒がしいんだから」
後ろから聞こえた落ち着いた声。
「……え?」
なおきはゆっくり振り返る。
そこにはーー
さっき消えたはずのエルが立っていた。
「え??!!」
思わず二度見する。
「……なんでエルがいるの?」
エルは困ったように笑う。
「なぜか戻れんくなりまして…」
数秒の沈黙。
「……え?」
「え?」
洗面所からミニエルが元気よく顔を出した。
「やったー!」
なおきは二人を交互に見つめる。
「……えぇぇぇぇぇぇ!!」
今回も読んでいただきありがとうございました。
ミニエルとエルは別々で、でもどこか繋がっている存在。
なおきの想いが“どちらか”ではなく“ふたり”に向いている…
この日から3人の生活が始まります!そして3人の輪郭、関係性の説明もそろそろ終了します!!
それを機に少し早めのテンポで日常生活に変わってきます
お楽しみに!!
次回も連投になりますのでお楽しみに。
もしよろしければ、感想やブックマークで応援していただけると嬉しいです。




