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ハンバーガーとメロンソーダと堕天使と

いつも読んでくださってありがとうございます。


今回は、ショッピングモールとマンションの間にある、

ずっと気になっていた“あの店”のお話です。


特別な事件は起きません。

世界も救いません。

ただ、ハンバーガーが大きくて、

メロンソーダがきらきらして、

堕天使がはしゃぐだけです。


でも――


なおきにしか見えない存在と過ごす、

ささやかな夕暮れが、

少しでも温かく届いたら嬉しいです。


今日はお腹が空く回かもしれません。


どうぞ、ゆるっとお楽しみください。

ショッピングモールとマンションの間にある、ずっと気になっていたハンバーガー屋


ガラス張りで、照明は少し暗め

中は落ち着いた音楽が流れている。


「ここ、かっこいい……」


ミニエルがそっと囁く。


「でしょ!ちょっと大人なやつ」



カウンター席を選ぶ。


縁っこの窓際で他のお客さんからは背中しか見えない。


「ここなら多少うるさくしても大丈夫」


「多少って?」


「多少」


ミニエルは満足そうに椅子に座る。


メニューを開いた瞬間、ミニエルが顔を寄せてきた。


「なおきと同じがいい!」


「即決?」


「即決!」


選んだのはベーシック。


ハンバーグ、レタス、トマト、タマネギ。

そこにチーズと目玉焼きトッピング。


「王道だね」


「おうどう?」


「強いやつ」


「じゃあそれで」


セットはポテトとコーヒー


ミニエルは単品で同じバーガーを頼み――


「これ!」


指さしたのは、鮮やかな緑。


「メロンソーダ」


「絶対これ!」


「譲らない顔してるね」


「緑は希望の色だから」


なるほど!


注文を済ませ、二人で少しそわそわ待つ。


「どのくらい大きいかな」


「顎足りる?」


「たぶん足りる!」



その数分後――


トレーが、ことりと置かれた。


トレーが置かれた瞬間、二人同時に声が出た。


「わー!」


分厚いパティ。

とろけるチーズ。

半熟の目玉焼き。


高さ、ほぼミニエルの顔サイズ。


「……大き過ぎない?」


「キングオブジューシーだからね」


「きんぐおぶ……?」


意味は分からないが、強そうなのは分かるらしい。


その横に置かれた、鮮やかな緑。


エルの視線が、すっと吸い寄せられる。


「……なにこれ」


メロンソーダ


グラスの中で光を反射して、宝石みたいにきらきらしている。


「これが……緑……」


目が完全に星。


「きれい……飲み物なのにきれい……」


「飲むのがもったいない……」


でも我慢できない。


ちゅーーっ


次の瞬間。


「しゅわぁぁぁっ!?」


目がさらに開く。


「口の中が踊ってる!喉が、、」


「炭酸って言うんだよ」


「人間界すごい……」


そしてまた一口。


「……好き」


「おーー」



「どうやって食べるの? ナイフ?」


「違う違う」


なおきはバーガー袋に入れて、きゅっと包む。


「こうやって持って――ガブッ」


それをエルに渡す。


「はいどうぞ」


「……いくよ?」


両手で持つ。


重い。


顔の半分が隠れる。


「えいっ」


ガブッ。


「あっつ!!」


口ぱたぱた。


「ハフ! ハフ! 熱い! 美味しい! 熱い!」


「あはは、でしょ!」


口の端からソースがつぅっと垂れている。


「エル」


「ん?」


「顔」


「え?」


自分では気づいていない。


なおきはナプキンを伸ばす。


「ちょ、優しく!」


「無理。ベタベタ」


ゴシゴシ。


「雑!」


拭き終わると、ぷくっと頬を膨らませる。


「……パパひどい」


「誰がパパだ」


「パパァー」


「可愛く言ってもダメ」


外はいつの間にか夕焼け色。


ガラスに映るのは、

ハンバーガーと格闘し、

緑のクリームソーダに目を輝かせる小さな堕天使。


なおきにしかみえないんだけど


「ねえ、エル」


「ん?」


「顎、鍛えときなよ」


「次は勝つ」


「何によ」


笑い声と、炭酸の音が混ざった。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


メロンソーダって、なんであんなに

“飲み物なのに宝石感”あるんでしょうね。


なおきにしか見えないミニエル。

周りから見れば、彼はただ一人で

ハンバーガーを食べている青年です。


でもガラスに映るのは、

ちゃんと2人分の時間。


誰かに見えなくても、

確かにそこにあるものって、

きっとあるんだと思います。


次回は――

顎トレ回かもしれません。


よろしければ、感想や応援もお待ちしています。


また次のお話で。

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