エルのヤキモチ!能力が漏れてる!!
堕天使が嫉妬すると、
風が起きます。
ちょっと強めに。
今回はショッピングモール編。
なおきにしか見えない美少女が、
ナンパを物理的に阻止します。
温かい目でお楽しみください。
笑う準備してくださいね
大きい方のエルがアクセサリーを見てみたいらしくお店を探していると
「すみません」
不意に、落ち着いた声がなおきを呼び止める。
振り向くと、きれいなお姉さん。
大人っぽい雰囲気。さらりと揺れる長い巻き髪。
「少しだけ、お時間ありますか?」
なおき「え、僕ですか?」
その瞬間。
隣にいた大人エルの空気が凍る。
「……は?」
低い。
明らかに低い。
女性は続ける。
「実は、さっきから素敵だなと思っていて。よかったら、お茶でも――」
「はぁぁぁぁぁ!?」
なおきの腕に、見えない何かががっちり絡みつく。
なおき「うぐっ!?」
女性「え、大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です」
エル(大人形態・真顔・目すでに細い)
「ダメに決まってるでしょ何言ってんのこの人!」
なおき(小声)
「ちょ、落ちついて!?」
女性「……誰かと話してます?」
「いえ、話してません!」
エル、さらに腕に力を込める。
「ついて行くの?」
なおき「行きません!」
女性「え?」
その瞬間、エルの魔力が微妙に漏れる
「ぶわっ」
女性の髪が突然ふわりと舞う。
地鳴りと電気がバチバチとチラついた‥近くのテーブルの水が揺れて、紙ナプキンもひらひら宙を泳ぐ
女性「え、なに、地震?、風?」
「やばいエル、スキル漏れてる!」
エル、なおきの肩越しに女性を睨む。
「わたしのなおきなんですけど?」
なおき「わ、分かってるよ!」
女性、完全に不審者を見る目。
「……あの、すみませんでした」
逃げるように去っていく。
沈黙。
なおき「……」
エル「……」
なおき「あのー、エルさん?……」
エル、ふんっと顔を背ける。
「別に嫉妬なんかしてないし」
なおき「嫉妬漏れてましたよね」
「してない」
「してた」
「してないっ!」
その瞬間――
ぽんっ(嫉妬の限界値超えた)
光が弾けて、エルがミニエルになる。
なおき「うわ、戻った」
ミニエルはぷるぷる震えていた。
「だって……」
さっきまで強気だった声が、急に小さくなる。
「なおき、普通に声かけられてたし……」
なおきはしゃがみ込む。
「そうだね、心配してくれたのかな?」
ぎゅっと服の裾を掴む。
「わたし、見えないし」
その声は、さっきまでの強さが嘘みたいに小さくて重かった。
モールの喧騒が、少し遠くなる。
なおきは、ため息をつく。
そして、ミニエルの頭をぽん、と撫でた。
「見えなくても、いるでしょ」
エル、戻っといで!?
「僕が見えてる!それじゃだめかな?」
ミニエルがエルに変わった
「でも……」
「それに」
なおきは少し照れくさそうに笑う。
「僕、ああいう人より、魔法で風起こしたり地震起こす人のほうが好きだけどなぁ」
エル、目をぱちぱちさせる。
「……ほんと?」
「ほんと!」
しばらく見つめ合う。
そして。
「……ばか」
小さく呟いて、ぎゅっと抱きついた。
「ちゃんと、ずっと、わたしだけ見ててよね」
「はいはい」
「はいは一回!」
「はい」
ようやく、エルが笑う。
さっきまでの大人の色気も、
嫉妬の嵐も、
全部溶けた、安心の笑顔だった。
「……お腹すいた」
「そこ?!」
「嫉妬するとエネルギー使うんだもん!」
見えない天使と、
見える日常の真ん中で。
二人は並んで歩く、、
「ハンバーガー食べに行こうか!!」
「うん!」
「‥ハンバーガーってなんだろうか?」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
「見えない」ということは、
ときどき、少しだけ不安になります。
でも、
たった一人に見えていることは、
もしかすると奇跡より強いのかもしれません。
嫉妬も、不安も、安心も。
全部ひっくるめて、
ふたりの距離は少しずつ縮まっていきます。
次回はきっと、
ハンバーガーを知る堕天使の回です。




