青い空の下、いつもの日々へ
ついに最終話です。
ここまで読んでくださった皆さま、本当にありがとうございました。
たくさん笑って、たくさん悩んで、たくさん遠回りをしてきたこの物語ですが、最後はこの作品らしい形で締められたと思います。
どうぞ最後まで、あめ達の日常を見届けていただけたら嬉しいです。
「はい、みんな座って」
雫が唐揚げをテーブルへ並べる。
山盛りだった。
「いただきます!」
「いただきます」
手が伸びる。
箸がぶつかる。
笑い声が上がる。
「ミニエル、それ私の!」
「早い者勝ち!」
「いや私が取ったんだけど!?」
「エルさん食べるの速っ!」
「負けないから」
「何が!?」
なおきが思わずツッコむ。
みんなが笑う。
で、あめがサンタにくっついて、そっとサンタの腕を掴む。
「…どこにも行かないよね?」
サンタは少しだけ驚いた。
サンタはそれだけあめに心配させたことを反省した。
そして優しく笑う。
「ああ、ずっとここにいる」
「ずっと」
雫は何も言わなかった。
ただ、
その言葉を聞いて、
少しだけ目を細めた。
テーブルの上には、
温かい料理。
温かい声。
温かい時間。
そして、失いたくない人達の笑い声と賑やかに食べる普通の食卓風景があった。
ーーー
あんなことがあって、ようやく気持ちも落ち着いてきて何気ない日常生活が戻って来たある朝
「行ってきます!」
玄関から元気な声が響いた。
「行ってらっしゃい」
雫が笑う。
「気をつけて」
サンタも静かに手を振った。
あめは靴を履きながら振り返る。
そこには、いつも通りの二人がいた。
朝ごはんを食べて。
他愛もない話をして。
笑って。
見送ってくれる。
当たり前の普通の朝…
あんなことがあったから、当たり前の今が嬉しい。
「サンタさん!」
「ん?」
「帰ったら一緒にドーナツ作ろうよ?!」
「あ、いいな!雫の分もたくさん作ろう」
「サンタさん何気にお菓子作りとか苦手だもんね、大雑把だから」
あめが笑う。
雫も吹き出した。
「ほら、遅刻するよ」
「はーい!」
あめは家を飛び出した。
春にはまだ早い冷たい風が頬をサッと撫でる。
空は青かった。
それだけで少し嬉しい!
学校ーー
四時間目終了。
キーンコーンカーンコーン…
チャイムが鳴り響く。
そして。
「あめ?今日…あれ?」
凪が振り返る。
「もういない!?」
「早すぎるんだよあの子!」
神谷も笑った。
「なおき達もいねぇぞ!」
その頃。
廊下。
「ミニエル、僕の首につかまってコース確保ね!」となおき
「オーケー!」
「エルさん前方!」
あめが指示を出す
「2秒止めるね!」
とエル
「右からも来るから注意ね!」
索敵が得意なミニエルが言った。
「了解!」
「飛ばすよー」
あめがさらにスピードを上げる。
なおきも走る。
購買へ向かう生徒達の大群。
まるで障害物競走だ!!
「焼きそばパン残り二個だよー!」
おばちゃんの声
「今回なくなるの早いね」
「左空くよ!」
エルの声。
「二人ともそのままのスピードでいって!サポートするから!!」ミニエルが言った
「了解!!」
「あめちゃん今!」
エルが開いた隙間を一瞬止めた
一気にスピードを上げたあめ
「あっ!」
足がもつれた。
転びそうになる。
「危ない」
なおきが腕を掴む!!
「あ、ありがとう!」
「だいぶ慣れてきた?」
「何に!?」
「パン争奪戦」
「私たち負ける気しないよね?!」
「あはは」
四人が笑った
そして。
数秒後。
「やったー!!」
あめが両手を掲げた。
「ハムカツパン確保!!」
「焼きそばパンもあるよ」
「カレーパンも」
ミニエルとエルも嬉しそうだった。
それにしても、あめ、ミニエル、エルの三人が並ぶと学校中がざわつく…
ミニエルとエルも、一緒に学校に通うことになったのだ
ーー
誰も来ない立ち入り禁止の屋上のドアを開けると気持ちのいい柔らかな風と穏やかな青い空が広がっていた
塔屋の上に向かってなおきが声を上げた。
「キャワ、いる!?カレーパンあるよー」
あめ、なおき、ミニエル、エルが笑顔で塔屋を見上げた!
風がふわりと吹いた。
青い空の下。
あめ達の笑い声が響く。
それはきっと、これからもずっと…
ーーーーー完ーーーーー
【私見えてます?】を最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。
この物語は、ロキとの戦いや天界の騒動を描いた物語でもありました。
けれど、それ以上にーー
誰かと一緒にご飯を食べること。
「行ってらっしゃい」と言ってもらえること。
くだらないことで笑い合えること。
そんな当たり前の毎日が、どれほど大切で幸せなものなのかを描きたかった物語でした。
だから最終回は、
ロキを倒して終わりでも、
神を論破して終わりでもなく、
みんなでパンを取り合って笑っている姿で終わります。
サンタが守りたかったものも。
雫が信じたかったものも。
あめが取り戻したかったものも。
全部そこにあるからです。
風が吹いて、
青い空が広がっていて、
大切な人たちの笑い声が聞こえる。
そんな何気ない日常こそが、この物語の宝物でした。
もしこの物語が、誰かの心に少しでも優しく残ってくれたなら、作者としてこれ以上嬉しいことはありません。
ここまで本当にありがとうございました。
【最後に少しだけお知らせです】
*現在、新しい長編作品
【白日の石刻 -Claris Epitaph-】も執筆しています。
死者の記憶が刻まれた石版を読み解く少女の物語です。
【私見えてます?】とはまた違った世界のお話になりますが、こちらも大切に書いています。
もしよろしければ、作者フォローやブックマークをしていただけると、新作の更新も追いやすいと思います!!
また近々投稿するので、お会いできたら嬉しいです。
お楽しみに!!
ーーあさちゃん




