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第22話 追放者




 エルフの住む集落は“里”と呼ばれ、一人の里長がその里を治める。その政治体制は、ヒト族で言う、君主制や独裁政治と、なんら変わらないが、ヒト族とは違い、反乱が起きない。種族としての、考え方が違うからだ。


「凄い、髪に付いてたんだな」


 シンはエンデルに案内され、水浴びをしていた。

 全身に付いた血を洗い流すと、当然水が濁ってくる。それを見てシンは思い出す。


(あのオーガは異常だ。自然が作り出したには、頭が良すぎる。ツーマンセルを組み、そして回復魔法を扱う。教えられたとしか思えない)


「……何に?」


「シン! タオル置いておくね。後、着替えも置いておくから」


 水浴び場の入り口で、ハルの声がした。シンは「分かった」とだけ言い、もう一度、水を頭からかぶる。濁った水が、下流へと流れて行く。

 シンは自分の体を見ると、苦笑いを浮かべた。


「流石に、落ちたかな?」


 全身についた無数の傷痕。それは、消えそうなモノもあれば、永遠に残るであろうモノもある。

 脇腹の傷に触れる。痛みは無い。ただ、今も尚疼き続けるその傷は、魔王につけられたモノだった。


「…ふぅ、戻るか、」


 シンは、ハルが持ってきてくれたタオルを使い、体を拭く。この里で作られた物なのか、そのタオルは手触りが独特だった。


「おお、エルフの民族衣装。着てみたかったんだよな」


 そう言ってシンが手に取ったのは、緑と白っぽい茶色の衣服だった。動きやすさを重視しており、関節部位には隙間が開いている。


「ハルも着たのかな?」


 そう考えながら、水浴び場を出る。待っていてくれたのか、エンデルの護衛についていた男が一人立っていた。


「お似合いですよ、シンさん。それでは、こちらです」


 お世辞だと分かっていても、嬉しいものは嬉しい。シンは礼を言って、男について行く。目指す場所は、巨木の頂上らしい。












******



「お疲れ様です。こちらにお入り下さい」


「ご苦労様、それじゃあ」


 そう言って巨木の《《中にある》》部屋に入る。そこは質素で、必要最低限の物しか置いていなかった。護衛も外に二人、中に一人いる。そして、その部屋の中心でお茶を飲んでいるエンデルとハルの姿が、また不思議に見える。


「あっ、シン。おかえり」


「ただいま。何してるの?」


「お茶を飲んでいるのですよ」


「それは、分かりますよ」


「では、何故聞いたんですか?」


 こう言うタイプか、言葉には出さず、シンは苦笑いで答える。

 シンにもお茶を出されると、エンデルが口を開いた。


「今回は我らに助太刀をして下さり、ありがとうございました。そこで何か、お礼をしたいのですが、」


「お礼。シンはいる?」


「え、いや、え?」


 二人は曖昧な対応をする。二人自身、シャーロットに見つかった時点で、追わていることには気付いている。その為、あまり情報を残したく無い。


「こちらとしても、借りは貸したく無いのです」


 お礼がしたいのは、感謝の気持ちではなく、こっちが本音なのだろう。エンデルの目が笑っていないのにハルは気付く。


「……なら、ここ最近この里でエルフを追放しましたか? それを教えて下さい」


「…はい、あります。それが?」


 エルフの里では罪を罰するために、“追放”と言う手段がある。種族として、森が故郷であり、生きるべき場所であるエルフにとって、この罪は死刑の次に重い罰となる。


「名前は? 経歴も教えて下さい」


「なっ、そこまでは––」


「俺は数百の魔獣と二体のオーガを、この里のために倒しました。不服ですか? それとも信じられないのであれば、案内しますよ。死骸の山に」


「……わ、分かりました」


 そう言うと、エンデルはモジモジしながら最近追放したエルフの情報を言う。

 同じ仲間を三人殺した為追放した。彼は子どもの頃から魔獣の観察をしていた。名は、


「シュラウデンです」


「…ありがとうございました」


 シンは立ち上がり、ハルを連れて行く。シンの目には何処か納得した感情が見えた。








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