第10話 “光翼”
「ハロエナの花? あぁ、綺麗な花だよ。一つ一つは小さいけど、集まって咲くからとても壮大で、見て損は無いよ。なら、次の目的地はハロエナの花だね」
「やった!」
シンとハルが宿でくつろいでいる時、ハルは外に何か変わった匂いを嗅いだ。なんだろうと、窓から外を見る。
「ねえ、シン」
「なんだ?」
「今日はお祭りなのかな?」
「そんな話し聞いてないけどな」
シンもハルと同じように外を見る。そこでは屋台の店主であろう人々が列を作り行進している所だった。
「……マジかぁ、」
外の行列を暫く見ているとシンが顔を歪ませて頭を引っ込める。ハルにはそれが、何かに見つからないために隠れたように見えた。
「どうかしたの? シン」
ハルも同じように顔を引っ込め壁に寄り掛かっているシンと同じ目線になる。見えたシンの表情は、ハルにも焦っていると分かる。
「……なあハル。魔族の間で“神速の勇者”の他に何か聞かなかったか?」
「えっと、“神速”と“絶壊”後は、“光翼”って聞いたことあるよ。それがどうかしたの?」
「…その“光翼”がそこにいる」
「え? だから?」
「見つかったら、俺が勇者だとバレる。すると、ハルのこともバレる」
「て、ことは?」
「旅が終わる、」
二人は数秒間見つめ合い、沈黙の中行列の声だけが外から聞こえて来る。
「「逃げよう!」」
二人の声が重なり合うと同時に部屋のドアからコンコンと、音がする。シンは立ち上がり、ドアに手をかけようとする。しかし、何か嫌な予感をシンの本能が感じ取っており、中々手が動かない。すると
「開けなさい」
大人の女性の声が聞こえる。ハルには聞き覚えのないその声に確かにシンは、目を見開いていた。
「ハル、こっちに、静かに来て」
小声で言うシンの言う通りに、なるべく音を立てないようにして、動く。
「まって、シン? もう一人いるの?」
その声でシンの指先がハルの頬に触れる。
「あっ」//
「シン!!!!」
シンがハルと荷物を抱え、窓から外に出ようとしたその瞬間にドアが勢いよく開き、光が差し込む。光が一瞬収まったかと思ったその瞬間、一直線に光がシンの背中めがけて飛ぶ。
「っぶねぇ!!」
光よりも速く魔装を展開したシンは、辛うじて攻撃を防ぐ。しかしそのまま宿の外へ投げ出されてしまう。
「ハル大丈夫!? 怪我無い!?」
慌てているのだろうが、無表情のシンとは対照的に、宿から見下ろしてくる女性の表情は怒っているようだった。
「ハル、逃げるぞ」
「待ちなさい! シン!」
その声と同時に、光の柱が四本、ハルとシンを取り囲む。高速で動き回り逃走の邪魔をしてくる。
「シン、なんで生きてるのに連絡くれないのよ!!」
「り、理由があったんだ!!」
「女の子とお泊まりするって事が理由なの!?」
「お泊ま、」///
「誤解だろ!!」
その場の状況がカオスになる。すると光を放った女性が声を漏らす。
「一緒に帰るって約束したのに、バカ、」
「すまん、シャル。でも、俺は今、ハルに世界を見せたいんだ。スパクだけじゃないってことを––」
「スパクだけじゃない? どう言うこと?」
「あ、」
「待って、その金色の髪、紅い瞳、もしかして、」
「話せば分かる」
「魔王の娘ね、裏切ったの? シン」
「だから、違––」
そう言おうとした瞬間、光の柱から光線が飛ぶ。致命傷を与えないようにしているからか、ギリギリハルを抱えた状態でも避けられる。
「シン、一回捕まりなさい」
シンは、攻撃を避けつつ考える。
(あいつは人の話しを聞かない。昔からそうだ! 今は逃げるしかない)
「ハル、ほんの数秒だ。力いっぱい掴まって」
そう言うとシンは地面を蹴った。




