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98.残念女神とポンコツ女神の戦いが低レベル過ぎる

リティア君とクルティナ君の戦いが始まった。

 

「・・・・。」

『・・・・。』

  

「ねぇ、オジサン、アタシ神々の闘いを見てるのよね?」

『ああ、これが神話の世界だ。目に焼き付けておくと良い。』

 

間違いなく伝説級のレア体験。

・・なのだが、アリサは頬杖をついて眠そうな目でニ柱の壮絶な闘いを眺めていた。

 

「オジサン、アレ見て感激する?」

『・・してあげるべきなのだろうね。』

 

そう、目の前にいるのは神々しき女神。

世の美を一身に集めたような美の化身たる女神の姿がそこにあった。

 

恐らくは一般人がその姿を一目でも見たのであれば、その瞬間から目を奪われ、金縛りに遭うはずだ。

目眩を起こし、失神してしまうかもしれない。

そんな究極の美しさを知る事だろう。

 

そんな女神が互いの信念を賭けて争っているのだ。

何という悲劇。

普通は瞬きすら惜しみ、一瞬たりとも目を離せず、この神話を語り継ぐ為に絵画に残す事を決意するだろう。

 

 

あ ん な 残 念 な 勝 負 を し て い な け れ ば !

 

 

「ふふふ、やりますねクルティナ、流石は■■■の■です。」

「クンカクンカスンスンスンスン・・リティア様こそ、もう諦めてはいかがでしょうか?」

 

リティア君とクルティナ君は、まさかの()()()()()()に突入していた。

ジャグラーとはシブい。

 

いや、そんな事よりオーパーツ!オーパーツ!

 

ゼムノア君の控え室に、いつの間にかパチスロ台が現れ、二人は隣同士腰掛けている。

 

世 界 観 を 無 視 す る な !

 

 

いや、最初の勝負は違っていたのだ。

まずは「五目並べ」だった。

勝負のチョイスがいちいちシブい。

 

しかし、これは千日手に陥った。

時間を操れる存在には無意味な勝負だったのだ。

リティア君が負けそうになったら盤面の時を巻き戻すので、延々と決着しなかった。

 

普通にリティア君の反則負けなのだが、

「やりますねクルティナ。」

「リティア様こそ。」

 

互いに健闘を讃えあい、不敵に笑っていた。

 

その会話、まともな勝負してからやれ!

 

 

次の勝負は「ダーツ」。

控え室の中に突如ダーツバーに置いてあるような電光輝くゲーム筐体が現れた。

アリサが興味津々で「何これ!何これ!?」とウザい。

 

せめて壁掛けのアナログ式にしろ!

時代考証無視するな!

 

そしてこの勝負、ドジなリティア君が勝てるはずもなくクルティナ君の圧勝。

その実力でよく勝負を受けたな!?

 

泣きの一回で、やりたくてウズウズしてたアリサも参戦。

三人仲良く和やかにダーツしてた。

遊ぶんじゃない、勝負はどこに行った!

 

アリサがふざけて魔法を使って投げたダーツが、リティア君の頭に突き刺さるアクシデントもあったが、土手っ腹に風穴空いても死なないリティア君は、気付かずに続けていた。

 

血が出てる!気付いて!

 

そして、リティア君の負けで終わりかと思ったら、

「三本勝負だから!」

とリティア君が強引に主張を始めて、何故か受諾され勝負継続。

 

止めとけばいいのに・・。

 

 

次の勝負は「麻雀」

もう世界観ぶち壊しだ。

 

しかもクルティナ君のリクエストで、何故かリアル脱衣麻雀となった。

脱衣の必要性皆無なのに、不思議と合意され配牌。

 

これもクルティナ君の勝利。

クルティナ君が強いのではない。

リティア君が弱過ぎるのだ!

 

リティア君は服を全部ひん剥かれてすっぽんぽん。

だが、謎の光が大事な部分を隠しててセーフ。

流石は神の御業。

無駄に高度。

 

脱がした服はクルティナ君の物となり、スーハーし続け恍惚の表情を浮かべている。

気持ち悪い!

絶世の美女なのに気持ち悪い!

 

 

追い詰められたリティア君は、実力が介在しない運ゲーに勝負を託す。

そして伝説のパチスロ勝負へ。

 

全裸でパチスロを打つ変態女神の隣に、隣の人の服をスーハ―しながら手慣れた手付きで目押しする変態オヤジそのものな女神がいた。

 

もう変態しかいない!

 

神話かこれ!?

神話なのか!?変態しかいないのに!

 

 

まあ、速攻でリティア君のコインが尽きたので勝負あったと思いきや、またもリティア君の暴挙によりひっくり返される。

 

「諦めたら負け」という意味不明の新ルールが制定され勝負続行。

そして何故かその横暴をクルティナ君が受諾するので終わらない勝負にもつれ込んだ。

もう止めてー!女神の尊厳はとっくにゼロよ!

 

 

いや、これって単にリティア君がすぐ隣に座っているので、クルティナ君がクンカクンカスンスンしたいだけではないのか?

もう嫌だ!こんな変態女神見てるの!

 

リティア君に至っては、「やりますね、でも勝負はこれからです。」とか言ってる。

 

「やりますね」じゃないよ!もう終わってるよ!

何いい勝負してる感出してるの!?

軽く全敗してる上に、全裸で何なのその無駄な余裕は!

 

あー無駄に無駄な時間が過ぎていく!

 

 

取り敢えず私はゼムノア君の安否を確認した。

 

『ゼムノア君、生きてるかね?』

『シャチョー様ぁ~、助けて下さい~』

 

神託通話で情けない声が届いた。

こんな神託受けたら、この世から宗教は霧散するだろうなぁ。

 

『こちらはカオスだよ。単にあの二人遊びたかっただけみたいだね。』

『そっちはそれでいいかも知れないけど、コッチは命懸けのかくれんぼしてるって事、忘れてませんよね!?』

 

いや、忘れてると思うよ。普通に。

むしろ、覚えてる事に期待してる方が愚かとすら思える。

 

『ひとしきり遊んだ様子なので、これからクルティナ君に戻るように言うよ。とにかくもう少し辛抱したまえ。』

『お、お願いします~・・ヒッ、誰か来たぁ!』

 

消え入りそうな声で通信が途絶えた。

 

不憫だ。

 

 

 

 

『では、この勝負は引き分けで良いかね。』

「はい、流石はシャチョー様です。」

「異論はないな。」

 

二人ともスッキリした、良い笑顔をしていた。

 

うん、その顔を見てると殴りたくなるね!

神様だとか、美人だとか、そんなバッファー要素は微塵も感じない。

ただただ腹立たしく、思い切り殴りたい。

 

結局二人とも勝負を始めたキッカケなど、当の昔にどうでも良くなり、目の前の遊びに夢中になってしまっていた。

バカなの!?

 

そこで当初の目的である、私とゼムノア君の戦闘能力比較の優劣を思い出させた。

色々あって結論としては、

「時と場合によって優劣が決まるので、互角」

という落とし所で納得の合意に至る。

 

こうして壮絶に下らない残念女神同士の無駄な争いに終止符が打たれたのである。

 

何故私がこんなしょーもない争議の仲立をしなければならないのか。

無駄に思えて仕方がない。

唯一得たものは、彼女達に暇を与えてはならないという教訓だけだった。

 

 

しかし、この二人が元の姿で並んでいると壮観だな。

前世でこんな究極の美女に会ったら、見ただけで胸が苦しくなっていた事だろう。

 

『はぁ、本当に残念だ。』

 

溜め息は出ないが、心の中で深々と出た。

 

「リティア様、妖木が何か失礼な事を考えているようですが燃やして良いでしょうか?」

 

物騒な事を言う女神だ。

ちなみにリティア君は服を返して貰った。

クルティナ君のヨダレ付きで・・。

 

「クルティナ、シャチョー様は私達に見惚れているだけです。さぁシャチョー様、遠慮なさらずどうぞ私を召し上がって下さい。」

「うわああ!聞こえない聞こえなかったー!」

 

ゴロゴロ床をのたうち回る女神クルティナ。

 

『・・はぁ、本当に残念だ。』

 

私は何度、この脳内溜め息をつくことになるのか。

とにかく、目下の問題は解決したので、クルティナ君にはお帰り願おう。

 

『で、クルティナ君はいつ帰るのかね?』

「は?帰りたくないが?」

 

 

・・・いや、そうじゃない。

 

『お気持ち表明を聞きたい訳じゃない。帰る時刻を訊いたのだが?』

 

イライラが募るが冷静になれ。

相手はあの筆頭自由神クルティナ君だ。

この程度の返答は予想できたはずだ。

 

「リティア様が本来の姿でいるのだ。どこに帰る理由がある?こんな簡単な事が分からないとは、妖木は頭がおかしいのか?」

『 頭 が お か し い の は 君 の 方 だ ろ ! 』

 

ダメだ、コイツを前にキレないで居れる自信が無い。

 

帰る理由はゼムノア君の命だよ!

君の滞在時間が増す毎に、ゼムノア君が消される確率が高まってる状況なんだから、もっと気を遣ってあげて!

 

「これはこれは、妖木の分際でワタシの頭脳を疑うと言うか。」

『疑うよ!最初からずっと疑いっ放しだよ!』

 

疑わしいにも程があるよ!

 

「おのれ妖木、言わせておけば!ここで滅してやる!」

 

お?何だねその憎悪に満ちた黒いオーラのようなエフェクトは?

そんな事していいのかなぁ?

 

『リティア君、クルティナ君があんな事を言ってるぞ?』

「クルティナ・・。」

 

悲しそうな表情でクルティナ君を見詰めるリティア君。

うーん、見た目だけなら、どんな人もコロッといきそうな庇護欲をそそるな。

 

「ううう~」

 

すると大人しくなるクルティナ君。

ご主人に怒られたワンコみたいだ。

 

「では五目並べ勝負だ!私の頭脳を思い知らせてやろう!」

『やらん、帰れ。』

 

コイツ、まだ居残る気か!

即答で断った。

 

大体先程見た五目並べは、頭脳もへったくれもなく、時間操作で盤面引っくり返してばかりのゴリ押しプレイだったではないか!

あれを知能戦って言って恥ずかしくないの、ねぇ?

 

「チッ。」

 

舌打ちしやがった!

 

「妖木よく聞け、この際警告しておく。貴様はリティア様に好かれているから、リティア様が存在を許しているだけだ。貴様がリティア様をぞんざいに扱って良い理由にはならない。」

 

む、クルティナ君にしては筋の通った事を言ったな。

 

『成る程、確かに。たまにはマトモな事を言うんだな。』

「ふん、まあな。」

 

嫌みが通じない。

 

「リティア様は我々にとっての絶対庇護対象。本来貴様のような穢れた存在が触れるなど禁忌侵犯に等しいのだ!いや、名前を呼ぶことすら烏滸がましい!」

 

我々と言ったな・・他にもクルティナ君みたいなリティア君妄信者がいるのだろうか。

それよりもリティア君の神界での立場が気になる。

 

『そうなのかね?私はリティア君の素性や立場を詳しく知らないからね。彼女は君達の世界ではどういう存在なのかな?』

 

本人から聞き出そうとすると困り果てた上に泣き出すし、ゼムノア君はビビって語ろうとしない。

ここはクルティナ君から事情を引き出したいところだ。

 

「正義そのもの。」

『は?』

 

何かまたバカな事を言おうとしてるぞコイツ

 

「 可 愛 い は 正 義 ! ! ! 」

『可愛いは正義!?』

 

何故誇らしげなんだコイツは・・。

 

「この上なく可愛いリティア様こそ最上の存在!究極にして完成された美(ワタシの次に)!それこそがリティア様の立つ頂だ!」

 

・・・。

 

『・・あっそ。』

「 リ ア ク シ ョ ン 薄 っ !? 」

 

期待した私がバカだった。

もうどーでもよくなった。疲れたよ私は。

 

『リティア君、強制送還だ。』

「はい、シャチョー様。」

「嫌だーー!帰りたくないー!」

 

ええーい、コイツも一度来たら帰らない子か!

そのクダリはリティア君で見飽きてるのだよ!

 

リティア君にすがり付くクルティナ君。

君の事情など知らない。

場を掻き乱すだけで役に立たないのでサヨナラ決定である。

 

『幼稚園児か!ゼムノア君が心配だろ!』

「アイツは大丈夫だ!」

 

いや、その自信はどこから来るのだ。

 

『根拠は?』

 

一応訊いてみる。

 

「・・・アイツは大丈夫だ。」

『何だその間は!リティア君!』

「はい、シャチョー様。」

 

早く送ってしまえ。

ここまで要らない子は珍しいぞ。

 

「ま、待て!このまま帰っては後悔しか残らない!」

『しつこいな君は!』

 

まだ抵抗を見せるクルティナ君。

顔だけ凛々しいが、リティア君に抱き付きながら縋る姿は心底情けない。

ねぇ、この子何の女神なの!?

 

「お・・」

『お?』

 

この期に及んで、お・・何だね?

 

「お土産!お土産が必要だ!」

 

下 ら な い 理 由 捻 り 出 し て き た !

 

『要らん、帰れ!そして真面目に働け!』

「無理無理無理!お土産ないと働けない!」

 

アリサみたいな事を言い出した。

コイツもニートの素質があるのか。

 

「ねぇ、オジサン、アタシの悪口言わなかった?」

『言ってない。』

 

心の声が漏れていなければ。

 

「クルティナ、お土産があれば素直に帰りますか?」

「はい!帰ります。」

 

リティア君、また甘やかして。

ロクな物を要求しないぞ彼女は・・。

 

「では、何が良いでしょうか?」

「リティア様関連で!」

 

ホラね。

ロクでもない事を即答しやがって・・。

 

「えー?困りました。何をあげれば良いのでしょう?」

『髪の毛1本で良いのではないかね?』

「それはもう持っている。」

 

持ってるのか!

あー、持ってるって言ってたなぁ・・。

 

『では、リティア君の爪』

「それも持っている。」

 

持ってたー!?

変態かコイツは!

 

「は?クルティナ?」

 

困惑顔のリティア君。

だがクルティナ君なら有り得る。

私はリティア君を無視して、クルティナ君が持っていないだろう物を考えた。

 

『リティア君の下着!』

「そんな初歩的なアイテムは当然持っている。」

「クルティナー!アナタだったのね!」

 

下着泥棒の犯人が判明した。

なのにクルティナ君は誇らしげ。

アホだコイツ。

 

『リティア君の汗』

「ふん。舐めるな、採取済みだ!」

 

いつ!?

 

「クルティナ?ちょっと・・」

 

リティア君が何か言いたげだが時間が惜しい。

他に無難な物は無いか・・。

 

『では、リティア君の鼻水!これならどうだ!』

「ふふふ、もう持っている、持っているぞ妖木!」

「クルティナ!?」

 

バカな、どうやって!?

真性の変態め、恐るべきコレクターだな。

 

「ワタシのリティア様愛を舐めるなよ妖木!」

『ぬぅ、ここまでの変態とは思わなかった。』

「クルティナーー!」

 

そしてクルティナ君、君のそれは愛じゃない。

世間一般ではストーカーと呼ぶのだよ?

 

『ではこれしかない。リティア君の涙だ!』

「!? そ、それは・・」

 

お、これはいけそうだな。

 

『流石に持ってないだろう。』

「ぐぬ、確かに。しかしそんな貴重な物が貴様に用意できるのか?」

 

あ、そうか。お土産持たせないといけないのだった。

だがまぁ問題ないな。

 

リティア君の涙?

 

ふ、簡単だ。

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