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99.お涙頂戴(物理)

「ひーーん」

 

泣かぬなら泣かして見せようリティア君

 

「なんだと・・」

 

驚き絶句しているクルティナ君。

すぐに泣くリティア君から涙を頂戴する事など造作もないのだよ。

 

「信じられん。リティア様の涙がこんな容易く手に入るとは・・。」

 

クルティナ君は容器に入った涙の粒を驚愕の顔で凝視していた。

いや、人の体液の1つを、そんなマジマジ真顔で見詰めるのはどうかと思うぞ?

 

◆

 

さて、どうやって採取したかと言えばだが、

まずは採取器具を準備する。

 

『リティア君、スポイトと容器を出してくれたまえ。』

「はいシャチョー様。」

 

自分の涙を採取する道具を出して、ニコニコ顔で渡してくれた。

 

『次にそこの椅子に腰掛けてくれたまえ。』

「はいシャチョー様。」

 

背もたれのある木製の椅子に座るリティア君。

 

『そうだ、自分で涙を拭かれてはいけないな。リティア君、手錠も出してくれるかね?』

「はいシャチョー様。」

 

自分を拘束する為の道具を唯々諾々と召喚するリティア君。

ガチャリと現代風の手錠が現れた。

この際オーパーツなんて気にしない。

 

『ではクルティナ君、リティア君に手錠を嵌め・・』

「ハァハァハァ!こっちに来て正解だった!まさか、まさかワタシがリティア様に、て、ててて、手錠ぉぉーーヒィヤァーー!」

 

危ない誘拐犯みたいなヤツが居た。

いいから早くしたまえ。

 

ガチャリ

 

「ハァハァハァ、まさか、まさかシャチョー様と、て、ててて、手錠プレェェーーヒィヤァーー!」

 

こっちにも変態が居た。

絶世の美人なのにもう色々台無しである。

 

「オジサン、アタシ今後一切神になんて祈らないから。」

『同意だ。この世界に神なんて居ない。居たとしても変態だけだ。』

 

アリサが呆れ果てていた。

変態に何を祈るのかと。そう言う話である。

 

しかしアリサに呆れられるとは終わっている。

神への信望はここに堕ちるところまで堕ちた事を報告しよう。

 

◆

 

『では、準備が整ったな。アリサ、助手を頼む。』

「はいはい。」

 

スポイトの使い方を教えて、出た涙を吸うように指示をした。

私はそんな器用に枝を動かせないのでね。

アリサはシュポシュポ面白いと楽しそうだ。

 

『では尋問を開始する。』

「尋問プレイ!」

 

無視

 

「無視!?」

 

『リティア君、君は何処から来たのかね?』

「え?す、素敵な国です。」

 

うんそーだねー

言えない事は分かってるので、その調子で頑張って誤魔化してくれたまえ。

 

『その国はこの世界とは別の世界と考えて良いかね?』

「ど、どうでしょうか?」

 

目が泳いでるなー

 

『そこでは君は何をしているんだね?』

「えっと、えっとぉ・・」

 

矢継ぎ早に質問を続け、リティア君を追い詰めていく。

 

『何故君は私をこの世界に呼んだのかね?』

「そ、それは・・」

 

オロオロ焦り始めたリティア君。

 

『そんな権限を持っているほど、その世界での君は地位が高いのかね?』

「う、うう~」

 

あ、もう一息

 

「貴様、妖木!リティア様が困っているではないか!やめろー!」

 

君のお土産の為にやってるのだが、目的忘れるの早くないかね?

クルティナ君は無視して尋問継続だ。

 

『君はどうやって異世界の道具をこの世界に呼び込んでいるのかね?』

「ま、魔法です。えっと、あ、召喚魔法です!」

 

今思い付いたな。

 

『どうして異世界の道具を知っているのかね?』

「な、何の事でしょう?」

『ほう、質問を質問で返すとは積極的な良い心掛けだね。その態度はつまり、その質問に私が答えれば、君は交換条件として正直に事実を話すという解釈で良いね?』

「え?いえ、それは」

 

よし、追い詰めたな。

 

『例えばそのスポイトだが、これはプラスチック製だ。この世界に樹脂製品は無いはずだが、どうやってこの世界の魔法と言う技術で、別の世界の物を召喚してるのかね?』

「あう、あうー」

 

もう涙目になっている。

溢れるのも時間の問題だ。

 

『ホラホラ答えてくれたまえ。私だって答えたのだ、君が答えないとフェアではないよね?』

「う、う・・」

 

「おのれ妖木、いたいけなリティア様を問い詰めるとは、なんと非道な!・・だがいい!!」

 

君は黙っててくれないか?

 

『さぁ答えたまえ。君の正体は一体何なのだ?君は一体誰なのかを!』

「ひーーん!困りますぅ!」

 

溢れた!はいゲット!

 

『アリサ、今だ!』

 

リティア君の目元に溜まった涙を吸い出すのだ。

 

「了解よ!うりゃっ」

 

グサッ

 

「目が!目がぁ!」

 

ア リ サ ぁ ー !

刺してどうする!?吸うんだよ!

さっきやり方レクチャーしただろ!

 

あーあーボタボタと必要以上に涙が・・

勿体ないから残らず吸っておいてくれたまえ。

 

「ねぇ、これ最初から刺しちゃえば良かったんじゃない?」

『君は鬼か?』


なんて恐ろしい事を言うのだ。

しかも女神相手に眼球潰しとか、コイツは神を何だと・・いや、まあいいか。リティア君だし。

 

「はいクルティナ、獲れたよ~♪」

「ひーん、涙が止まりませんー」

「これはさしものワタシも引くぞアリサ・・。」

 

アリサはスポイトで採取した涙を小瓶に入れて渡す。

あのクルティナ君がドン引き顔で受け取っていた。

 

うわ、何故か淡く光ってるではないか。

流石は女神の涙。単なる涙とはモノが違いそうだ。

 

「リ、リティア様の涙がこんな容易に・・貴様ら、恐るべきヤツだな。」

 

クルティナ君は震えながら小瓶を持っていた。

そんな大した物ではないと思うのだが。

 

『君の変態性は別にして、それがそんなに貴重な物がなのかね?』


様子を見るに、単なるリティア君コレクションの1つとして貴重という訳でもなさそうだ。


「めが・・リティア様の涙は、この世界で言う超々高濃度の魔力溶液みたいなものだ。物質世界では高濃度ナノマシン溶液だ。もし貴様の前世世界の湖に一滴でも垂らせば、生態系が数百年単位で進化するような代物だぞ。」

 

うわ、マジなヤバい物質だった。

 

ん?超々高濃度の魔力溶液? 

それなら私の種に垂らせば、直ぐに芽が出そうだな。

薄めて使えば魔力回服ポーションか?素晴らしい!

 

『アリサ、今の内にガンガン採取しておくんだ!』

「了解よ!」

「え?え?ええ?」

「げ、外道!?」

 

追加で涙採取決定だ。

そんな便利なものだとは知らなかった。

 

アリサはノリノリで吸って、クルティナ君はアタフタしている。

 

そう言えばリティア君の血を垂らしたら植物が有り得ない勢いで成長したな。

涙にも同じ効果があったとは盲点だった。

 

普段役に立たないリティア君の活躍の場だ。

ここは大いに活躍して貰おう。

やれ、アリサ!

 

「ちょっ、アリサ、どこを触って!」

「はい、こちょこちょこちょこちょ~」

「きゃっ、きゃはははははは!止めて!くすぐったい!」

 

尋問ではなく、くすぐりでお涙頂戴(物理)作戦に切り替えた。

 

「きゃはははははは!ひー止めてー!」

『出たぞアリサ!』

「っしゃ、それっ!」

 

グサッ

 

「目が!目がぁ!」

 

ア リ サ ァ ー ー !

どんだけ不器用なんだこの娘は!

くすぐり作戦全く意味ないよ!

 

 

でも沢山採取出来たからヨシ!

 

「貴様らの容赦の無さにドン引きなのだが・・。」

 

何を言う。君が欲しいと言うから始めた事だよ。

一滴も百滴も変わらないではないか。

 

◆

 

「ひーーん、やっと解放されましたー。」

 

尋問され、くすぐられ続け、両目をスポイトで刺されながら、リティア君はやっと解放された。

可愛そうに。

誰だこんな非道なことをしたヤツは。

 

タプン

 

よし、これだけあれば十分だろう。

 

まさかリティア君が金のなる木だとは知らなかった。

採取方法も確立したし、これからは魔力回復ポーションを量産していくぞ。

 

おっと、お宝採取に夢中になってゼムノア君の事を忘れていた。

 

『ではクルティナ君、これで思い残すことはないな?また会おう。』

「あ、ああ。」

 

ん?何か私、避けられてないか?

あの強気なクルティナ君が怯えてる?

まさかね。

 

『心配しなくてもクルティナ君から涙は採取しないよ・・ん?もしかしてクルティナ君の涙は別の特別な効果があるとか、そんな事はあるのかね?』

「無い!無いからこっちを見るな!」

 

見るなと言っても、私には目が無いので魔力感知で常時範囲認識してるだけなのだが。

だから見つめたりは出来ないぞ。

 

『怪しいな。是非ともお涙頂戴(物理)したいものだ。』

「ひっ!」

 

おお、あのクルティナ君がビビってる。

これは新鮮だ。

ちょっと意地悪に脅かしておこうかな。

 

『泣きたくなったらこっちに来て泣いてくれたまえ。スポイト用意して待ってるよ。』

「ひっ、誰が来るか!」

 

そう言い残してクルティナ君は慌てて消えた。

うん、これなら安易にこちらへ降臨しては来ないだろう。

ゼムノア君の安寧の為にも、それが良いだろう。

 

 

クルティナ君が光りと共に消えた後、代わりにゼムノア君が現れた。

良かった消されてないようだ。

 

『お帰りゼムノア君。大丈夫そうで何よりだ。』

「ひっ!」

 

おや?何故かゼムノア君が怯えているぞ?

 

『どうしたんだね?』

「いえ、リティア様は別として、あのクルティナを手玉に取るなんて・・シャチョー様の底が知れなくて・・。」

 

ん~化物扱いされてる?

何がそんなにヤバいのか、私にはサッパリ分からないのだが。

 

『こちらの様子を見ていたのかね?』

「はい、とんでもない事をされてましたね・・。」

 

んー、お涙頂戴(物理)しただけなのだが?

 

「あの、あのクルティナが、クルティナですよ?クルティナが逃げるなんて、ああ!恐ろしい!」

 

クルティナクルティナ、そんなにクルティナ君が恐いかな?

私は嫌われているがアリサには普通に接しているし、魔法の話をしている時は普通の娘だぞ?

怒りっぽいがたまに見せる照れた所など、意外に可愛い所もあるではないか。

 

『クルティナ君はイタズラしたり、嫌がらせしてくる程度で、別に怖くはないではないか?』

「有り得ません!普通は■■で■■■■されて、■■になります!その程度で済む筈がないんです。だってクルティナは■■■■なんですよ?あ、これ禁忌抵触だった。」

 

肝心なところが何を言ってるのか分からなかった。

 

「シャチョー様の身の安全の為にも、出来る限り伝えます。おそらく禁忌抵触となる言葉は、勝手に意味の無い言葉に置き換わりますけど、聞いて下さい。」

『あー、構わないが・・。』

 

「本来のクルティナは■■■■■なので、無礼は絶対に許されません。だから皆クルティナを畏れて、あんな軽々しい物言いは出来ないんです。ましてや文句をつけるなど、もしボクだったら■■・・ひぃ、考えたくもない!」

 

肝心なところが判らない!

もどかしいなコレ。

 

『そうなのかね?』

 

取り敢えず会話を合わせておく。

 

「それにリティア様も■■の■■■で■■■■■■なのですから、あんな姿を見せるなんて、信じられません。」

 

んー、判らん。

だがゼムノア君が真剣に忠告をしてくれているのは判る。

これを無碍にする程、私は短慮な愚か者ではない。

 

私にはリティア君もクルティナ君も、警戒しなければならないような存在には思えないのだが、それは彼女達が隠している本当の姿を知らないからなのか、やはり私の認識通り本質的に警戒は無用なのか、情報が不足して判断が付かない。

 

だから本性や素性を知っているゼムノア君の意見は、少なくとも聞き流す事はしない。

 

ただ、ゼムノア君の話が真実である保証もない。

だから、やはり私自身で確証を得る努力をしなければならないのだろう。

全幅の信頼は置かず、盲信せず、俯瞰視する事を忘れないようにするべきか。

 

彼女の話を聞いてそう思った。

 

『ありがとう。取り敢えず忠告は受け取ったよ。』

「そうして欲しい。アレは心臓に悪いよ。」

 

それは悪いことをしたな。

ではウィットに富んだジョークで、冷えた肝を温めてあげようか。

 

『ときにゼムノア君、君の涙はどんな効果があるのかね?』

「ヒィィーイヤーー!!」

 

全力で逃げ出した。

 

 

おかしいな・・。

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