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81.奥義とはロマンであり正義!故に尊し

そして審判を呼んで、改めて木札6枚の豹人族との試合開始である。

ゼムノア君が戦うということで、一際注目を集める。

 

「挨拶代わりだ、これで終わってくれるなよ?烈破のエアロスプレッド!」

「それは昨日見た!」

 

おお!見えない破裂攻撃をタイミングだけで読んで回避した!やるな豹の人!

そしてそのまま低姿勢で一気に距離を詰める豹人族。

速い!

疾風のスキル持ちか?

 

「いいな貴様、その調子で楽しませろ!」

 

ゼムノア君が口角を吊り上げて嗤いながら、相手の斬り上げを鉄の棒で弾く。

続く豹人族の連続斬撃を悉く跳ね除けた。

まるで魔法だけではなく、剣術すらも達人の域に達しているかのように錯覚させる身のこなし。

 

だが実際には魔法障壁が跳ね返しているだけだ。

周囲にはゼムノア君が単なる鉄の棒で華麗に攻撃を弾き、捌いているように見えるが、本人はテキトーに鉄の棒を振り回しているだけ。

 

卑 怯 臭 い !

 

それでも焦らず押し込む豹人族。

だがゼムノア君は崩れない

 

「くっ、この細身で何故これ程の膂力を」

「拒絶のストームバースト」

「うおお!」

 

ゼムノア君の周囲が爆発したような風が巻き起こる。

Lv3相当の風魔法なので、そこそこの衝撃がある。

吹っ飛びはしなかったが、バランスを崩される豹人族。

それを見逃さず、踏み込んでの掌底を相手の胴に当てるゼムノア君。

 

「衝撃のフラッシュブレス」

「ぬああ!」

 

掌底で生んだ慣性を増大させ、豹人族を吹っ飛ばした。

距離が空いたところにゼムノア君の追撃。

 

「踊れ、グランドピラー」

 

地面から土の柱が連続で飛び出す。

お、あれは私のグランドアッパーか?

私の魔法より射出スピードがあまり鋭くはないので、土魔法Lv2の練度は私の方が高いようだ。

 

「うおっ!」

 

バックステップで避ける豹人族

 

「連弾のストーンブラスト」

「チィッ!小細工を!」

 

グランドピラーで盛り上がった土の柱から、石礫が飛来。

豹人族の全身を打ちつける。

なるほど、グランドピラーはこの魔法の仕込みだったのか。

テクニカルだ。

 

「砂にまみれよ、サンドストーム」

「うわぁ、何だこれは!?」


さらに風魔法Lv3サンドストーム。

グランドピラーで出した土の柱が崩れて、風に舞い、つむじ風となって豹人族を包み込む。

砂塵を巻き上げ視界を奪う、目潰し目的の魔法のようだ。

 

グランドピラーからの、流れるような魔法のコンボ。

本当に高度だ。魔法の王、魔王の名は伊達ではない。

 

魔法攻撃に慣れていない亜人族は、ゼムノア君が立て続けに放つ魔法に翻弄されている。

全て初見の技だろうから、何が起きるのか判らないのだ。

 

「チェックメイトだ。閃光の・・スタンヴォルト」

 

視界を奪われた豹人族に接近し、光魔法Lv2の電撃ショックを食らわせた。

いや、遠くからでも発動出来るよね?何で接近したの?

 

そして無駄に隙を晒しながら、キメ台詞を吐く舐めプを始めた。

そのタメ要らないでしょ?

 

「この程度!」

「!!」

 

通常は喰らえば大抵の者が意識を手放す魔法なのだが、豹人族はスタンヴォルトの高電圧に耐えた。

耐性があるようには見えない。

もしかしてゼムノア君、ピンチを演出するために威力を抑えたか?

 

「貰った!」

 

ゼムノア君の隙に上段から斬り下ろす。

しかし、読んでいたゼムノア君はバックステップで回避。

 

「もう一撃・・何ぃ!?」

 

追撃を入れるべく、前に出ようとした豹人族が、何故か前のめりにバランスを崩した。

 

「惜しかったな、グランドロックという封縛魔法だ。」

 

豹人族の両足を土が固め、動けなくしていた。

あ、この魔法は地味だが使えるな。

 

「貴様の健闘を称え、我が奥義にて葬ってやろう。」

 

動けない相手に対して不敵に嗤うゼムノア君。

おお、魔王っぽい悪い顔してる!

 

ここで風魔法Lv1を利用しての無駄な演出も入る。

自分の周りだけ砂煙を巻き上げ、大技が繰り出される前兆を演出!

 

風 魔 法 の 無 駄 遣 い !

 

「待て!降参だ!」

 

動けない豹人族は焦って降参を宣言。

しかし見せ場を披露したいゼムノア君はそれを無視!

 

「もう遅いな、奥義!零式真空裂破衝!」

 

バァーン!

 

凄い破裂音がして、会場にビリビリと衝撃波が伝播した。

大袈裟な技名を叫んでたけど、何てことはない。

あれ風魔法Lv4のソニックブームだ。

エアロスプレッドの上位強化版の魔法である。

 

密着で放つからゼロ距離で”零式”か?

自分への衝撃波は魔力障壁で防いでるようだ。

ちなみに本来は自分にも衝撃がくるので、密着から放つ魔法ではない。

 

無 駄 な 零 式 !

 

「あがっ・・」

 

真空裂破衝という名前も、単にカッコいいからそう呼んでるだけっぽい。

正体は魔法だ。

だが、高位魔法なので威力は高い。

豹人族は意識を手放し、膝から崩れ落ちた。

 

「零式真空裂破衝・・深淵のエネルギー波動は如何なる鎧や防御をも貫く。この技を受けた栄誉を月を見る度思い出せ。」

 

聞いてもないのに、嘘っぽい技の説明を始めた。

豹人族は軽装だから、鎧貫通とか関係ないけどね。

 

「勝負あり!勝者ゼムノア!」

 

審判がゼムノア君の勝利を宣言した。

 

「くっ、やはり奥義は身体への負荷が高いか。撃ててあと二回が限界だな。」

 

いや、単に自分で放った衝撃波で痺れただけだよね?

もっと遠くから発動すれば、巻き込まれないよね?

密着で放つ意味が判らないんだけど!?

 

密着で放つからロマンがあるとでも言いそうだ!

 

しかも、何発でも撃てるクセに使用限界まで設定。

更にわざとらしく自らバラしてた。

 

何で周りに聞こえるように言った!?

 

あ、これゼムノア君の仕込みか。

「使用限界を超えてから、もう一度放つ限界ギリギリ勝負展開が熱い!」とか思ってるはずである。

 

よく見るバトル漫画の王道展開!

 

しかし、そんなテンプレートな安っすい演出でも、見慣れてない参加選手は簡単に騙された。

素直にゼムノア君の演技を信じた選手は、好機とばかりに殺到する。

 

ゼムノア君の思う壺である。

 

 

「奥義!零式真空裂破衝!」

バァーン!

「勝負あり、勝者ゼムノア!」

「ぐ・・これ以上は放てない」

 

 

「奥義!零式真空裂破衝!」

バァーン!

「勝負あり、勝者ゼムノア!」

「ハァハァ、限界だ、もう一度放てば我もただでは済まぬ」

 

・・・。

 

「奥義!零式真空裂破衝!」

バァーン!

「勝負あり、勝者ゼムノア!」

「かはっ!全身が痛む、ここまでか・・」

 

・・・・・。

 

「奥義!零式真空裂破衝!」

バァーン!

「勝負あり、勝者ゼムノア!」

「かはっ!全身が痛む、ここまでか・・」

 

 

・・・・。

 

あ、参加選手もやっと気付いたみたい。

 

 

気付くとゼムノア君の木札は25枚になっていた。

トップクラスの成績である。

 

ここで予選タイムアップ。

木札所有数上位10名が、決勝戦出場権を獲得。

 

今回の予選通過木札枚数は19枚。

トップは29枚

ゼムノア君は3位の成績だった。

 

3位なのは予選4日目からの参加と、最終日は無駄に佇んでいた時間が長かったからね・・。

積極的に試合をしてたら、トップだったのではないだろうか。

 

そして木札と交換で、予選通過の賞金、金貨5枚+25枚の銀貨を頂いた。

 

この賞金も参加者の目当てとなっており、木札の枚数✕銀貨が貰える。

多くの参加者が、地方からやって来ているので、出張手当てみたいなものだ。

 

 

「王都新聞です!インタビューいいですか!?」

「ゼムノア選手、本戦への意気込みを聞かせてください!」

 

予選通過の証明木札を貰って解散となると、会場を出ようとする選手に記者やスカウトが群がる。

当然今大会の注目株であるゼムノア君の所には、一際多い人集りが出来た。

 

いきなり大勢に囲まれてキョドるゼムノア君。

慌てて取り繕い、受け答えた。

 

「わ、我はランクシャー領に拠を構えている。話は全てそこの妖精を介せ。」

 

そう言って無言を貫いた。

それがカッコいいとファンから黄色い声が上がった。

単に魔王モードが切れたので、ボロが出ないようにしてるだけだ。

今のゼムノア君は普段の幸薄そうな美魔女に戻っている。

 

そして今度は珍しい妖精族と会話するチャンスとなり、大勢の亜人族から囲まれる事になる。

 

「噂のランクシャーの妖精ですよね!?ゼムノア選手はいつからランクシャーに!?」

「どうしてランクシャーに所属を?」

「ゼムノアさんのスリーサイズを一言お願いします!」

 

どさくさ紛れに良からぬ情報を聞き出そうとするヤツまでいた

 

「ちょっとアンタ達邪魔よ!」

 

ゼムノア君は「わ、我の背後に入るな・・あ、やめっ、引っ張るな~」とか小声で抵抗してるが、熱狂したファンに揉みくちゃにされている。

宿に帰りたいのに帰れない。

 

私はリティア君が空中に退避してくれていたので助かった。

あんなところに居たら枝が折れる!

 

「そちらの美しい妖精さん、お名前を頂いても良いでしょうか!」

「妖精さん握手してー!」

 

宙に浮くリティア君にも人が殺到するが、澄ました顔でオールスルー。

全く反応を示さない。

これはこれで凄い。

 

アリサは当初、無難な受け答えをしていたが、徐々に面倒になってきたようだ。

早くもイライラし始めていた。

 

「何故王都に!?」

「ゼムノア選手との関係は!?」

「明後日の本戦の自信は!?」

「ダァー!メンドイ!アタシから話を聞きたいなら蜂蜜持ってきなさい!話は賄賂の後よ!」

 

明瞭に賄賂を要求し始めた。

言 動 が 明 け 透 け 過 ぎ る !

 

「是非ウチのパーティーに入ってくれ!」

 

記者に混じってハンターの勧誘もあった。

 

「はあ?ウチのノアちゃんがアンタ等みたいなザコパーティーに入るワケないでしょ!」

 

半ギレになっていたアリサは、全く言葉を選ばなくなってた。

煽るんじゃない!

 

「はあ?ナメんなよ!俺達はアルクイン商会所属のハンターだぞ!」

「知らないわよ!痛い目見ない内にあっち行けタコスケ!」

「なんだとぉ!」

 

早速揉め始めた。

喧嘩っ早い妖精だなコイツは・・。

 

「エアロスプレッド!」

パァン!

「あばぁっ!」

 

間髪入れずに()()()()()()()()()

手が早い!

 

私はアリサに教えてはいけない魔法を教えてしまったかもしれない。

 

「おおおお!妖精も強いぞ!」

「アルクイン商会の狼を倒した!?」

「妖精はキレ易く、魔法も使い、口も悪いと・・」

「キャーー!妖精さんサイコー!」

 

こ、これは収拾がつかない。

留まっていたら変な風評悪評が流布される、嫌な未来しか見えない。

仕方ない、リティア君に動いて貰おう。

 

「リティア君、ゼムノア君を持ち上げて離脱しよう。」

「そうですね、それが早いかと。」

 

リティア君はスッと降下して、ファンに成すがままになっていたゼムノア君の髪を掴むと、そのまま上昇。

 

「痛い!ちょ、リティア様っ」

 

最初は痛くて抵抗してたゼムノア君だが、リティア君にジロッと絶対零度の視線で睨まれたら大人しくなった。

不憫!

 

幸薄い美魔女の髪を片手に掴んでぶら下げ、不気味な盆栽を吊り下げたまま浮遊する、絶世の美人妖精。

うわぁ、凄い絵面だ・・。

 

先程までの喧騒が嘘のように静まり返る会場。

なんかヤバい悪魔が降臨したみたいな感じになってる。

 

リティア君は唖然とした民衆を睥睨し、

 

「アリサ、帰りますよ。」

「ありがとーリティア!」

 

そう一瞥くれると、会場の吹き抜けから飛び去ったのだった。

 

「・・ランクシャーの妖精マジやべぇ!」

「シビれた!ちょっと漏らした!」

「妖精カッコいい!」

 

この日を境に、妖精は怒らせると恐いという噂が王都に広がるのであった。

 

 

 

 

途中、人目の付かない場所に降下して、歩いて宿に戻った。

そこで私達を待ち構えていたのは人集りだった。

 

妖精が泊まっていると噂になって、見物人が宿に押し寄せていたのだ。

これだから人が多い街は!

 

集団を押し退けて宿へ入り、ゼムノア君から宿主に詫びを入れる。

食堂の客入りは良くなったが、捌き切れない客数なので大変そうだったからだ。

迷惑料として多めのチップを渡しておいた。

 

 

明日は警備がいる貴族街のホテルに泊まろう。

一般の宿では迷惑がかかる。

 

いっそのこと王城に泊まった方が良いかな?

いや、それは面倒なので避けたい。


そうだ!モーリス翁の邸宅はどうだろうか。

王宮魔術師の彼なら、それなりに広い家を持っているだろう。

我々の内情もある程度知ってる彼なら、気兼ねがない。

明日接触してみるか。

 

と、部屋の中で宿泊先に悩んでいたら、クルティナ君から報告が入った。

 

『妖木、どうやら愚かな無法者達に動きがあったぞ。』

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