表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
219/225

219.聖女と遠隔視の罪を誤魔化せ!

見慣れた応接室に、教皇と枢機卿数名、そして聖女エリーゼが揃い踏みした。

対面に着席するはEランクハンターパーティー「モザイクおじさん」の面々。


「・・・?」


あーー、聖女ちゃん、ガッツリ怪しんでるなー・・。


「あの、教皇様、この方々は一体・・。」

「聖女エリーゼ、こちらが新たに教団生産技術顧問に就任したモザイク殿と、その仲間だ。」


教皇がにこやかに私を紹介する。


「モ、モザイク様?えっとどなたの事でしょうか?」


だが分かっていない聖女。


「あちらのモヤモヤした方だよ。」

「え!?あの何だか分からない物体Xって人なのですか!?」


失礼な。私は人ではない。モザイクという生命体だ。

正体は妖木の魔王だけど。


『モザイクだ。』

「喋った!?」

「聖女エリーゼ、気持ちは分かるが失礼だよ。」

「も、申し訳ありません。でも、どこかで聞いた声・・」


更にこちらの四天王が自己紹介をする。


「アリサでーす。」

「リティアです。」

「クルティナだ。」

「ゼ、ゼ、ゼムノア・・。」


はいアウトーー!


見た目は可愛らしい兎・狐・猫の亜人族三名+ヒョロガリ犬人族。


だけど、声が妖魔の王のそれ!


そう、擬態スキルで姿は変えられても、声はそのままなのだ。

つまり、妖魔の王を知ってる者には、声でバレてしまう。


聖女とは魔境の前庭で結構会話しているからね。

名前からして隠す気ゼロな4名のせいで、疑いが確信へと変わるのは時間の問題だろう。


「???」


あー、やっぱり聖女が戸惑っている。

見た目と声の正体との整合性が取れないので、疑念に囚われている様子だ。


仕方ない。もうここは開き直るか・・。


『聖女エリーゼ、これは思念通話だ。君にだけ聞こえる声なので、落ち着い・・』

「魔王!?」


ちょっとぉー!?

話の途中で叫ぶんじゃない!


「どうした聖女エリーゼ?」

「突然魔王など声を荒げるとは、聖書の読み過ぎではないか?ふふふ。」

「信仰熱心なのは良いが、このような場で不釣り合いな言葉ぞ。」


訝しげに聖女を窘める枢機卿。

よし、まだ間に合う。


『ちょっ、いいから声に出さず聞きたまえ。』

「!?」


私は焦って聖女を制止する。

こら、キョロキョロするんじゃない。


『これは思念通話というスキルで、頭の中で念じるだけで会話が出来る。私の声はウチのメンバーと君にしか聞こえていないので、君も念じるだけで答えて欲しい。』

『やっぱり妖魔の王!何でアナタ達がここに居るのですか!?』


そりゃそう思うよねー。


『その質問に答える前に、取り敢えずこの場を無難に乗りきって欲しい。ちなみに私達は今や立派なリティナス教信徒で、教皇や枢機卿とも親交厚いのだ。余計な混乱を招きたくない。』

『そんな話を信じられますか!ここを何処だと思ってるのですか!?』


アークティア

リティナス教の総本山大聖堂の応接間だ。

だからどうしたのかね?


『落ち着いて見たまえ。この中で焦って浮いているのは君だけだ。』

『っ!?どうやって教団に取り入って・・また色仕掛けですか!?』


またって何だね、またって。

・・あー、S級コンパニオンクルティナ君作戦のの事か。

残念だが、あの作戦をリティナス教へ仕掛けるなら、リティア君に元の姿でやって貰うよ。


『それは追って説明する。とにかく私達はリティナス教の敵ではない。』

『アナタに敵意はなくとも、わたくしにはあります!』


相変わらずカルシウム足りてないなこの娘。


『まあそうカリカリしないで。少しの間一緒に過ごすのだ。仲良くしよう。』


のらりくらりと聖女の激昂を抑えながら、場を収める努力をした。

するといつもと変わらないノリで四天王も挨拶を交わす。


『やっほー、ここでもヨロピク~。』

『一緒にリティシア様を讃えましょう。』

『等身大リティシア様御神体が出来上がるまで、ここは離れないからな。』

『し、新参者ですが、よ、宜しくお願いします。』


『やはり妖魔の王・・相変わらずの調子ですね・・。』


魔境の前庭の酒場ではそれなりに会話したことがあるので、妖魔の王の柔和な性格は聖女も知っているはず。

そして例の採取物対決を経て、私達に害がない事は彼女も理解した筈だ。


だが、教団の最深部に私達が居ること自体が、強烈な違和感となる。


本来は絶対に相容れない筈の魔王と教皇が、親しげにしているのは何故か?

何の目的で敵の本拠地に乗り込んできたのか?

疑念が怒濤のように押し寄せていることだろう。


それを一旦置いといて、場をやり過ごせという要求は、果たして通るのか賭けに近かった。


『・・・取り敢えず敵意は無いみたいですね。分かりました。一時休戦としましょう。』


聖女は深刻に悩みながらも、休戦に承服してくれた。

私達が動かない事と、何故か教皇達と親密な関係にあることを鑑みての一時的措置なのだろう。


助かった。


「エリーゼ殿?大丈夫かね?」

「も、申し訳ありません。最近魔王を打倒する事ばかりを考えており、モザイク殿の不思議な姿を見て、つい見間違えてしまいました。」


精神病んでる人を演じてくれた。


「旅の疲れが残っているようだね。それなのに急に呼び立てて済まない。」

「いえ、問題ありません。」


あの言い訳で通る辺り、私達との対戦の後、教団に戻っても精神的に不安定だったのだろう。

今は吹っ切れたように見えるが、実際はどうなのか分からない。


「顔合わせは食事でもしながら改めてすれば良いだろう。今日はもう自室で休みなさい。」

「あ、いえ・・。」


聖女はまだ話が残っているとでも言いたげだ。


『こちらから出向くので、そうしたまえ。』


思念で追って会えることを伝えた。


「・・ではそうさせて頂きます。失礼しました。」


聖女もそのつもりの様子だ。

よし、この場は何とかなりそうだ。


「モザイク殿は訳あってこのような姿をしているが、莫大な寄付金に、様々な技術提供まで頂いている。今や教団に不可欠な御方だ。今後失礼の無いように頼むよ。」

「申し訳ありません。」


教皇に窘められる聖女。

だが、悪いのは私達なのでフォローしておこう。


『気にしていない。元よりこの姿を見て、怪しむなという事が無理な話だよ。』

「それもあり、早めに顔合わせをしておくべきと思ったのだ。突然バッタリ合って浄化されては敵わぬからな。ガハハハハ!」

『ハハハハハハ!』


脳筋枢機卿と笑い合う。

すると聖女が小さく咳払いして注目を集めた。


「リティナス教聖女エリーゼです。以後お見知り置きを。」


ああ、そう言えばまだ自己紹介が済んでいなかったな。

つい懐かしい知ってる顔を見て安心していた。


『Eランクハンターのモザイクだ。噂の聖女様とお会い出来て光栄だ。』


私は落ち着いた声(思念)で挨拶をする。


『何が光栄ですか。』

『思念が漏れてるよ。』

『故意に漏らしました。』


聖女が思念通話を利用して文句を言う。


『ハハハ、言うではないか。では、後程君の自室に行く。窓を開けておいてくれたまえ。』

『あの転移魔法で来るのではなくて?』


あの転移魔法ではない、アビスゲートだ。

私もアビスゲートで行きたいが、使えない理由がある。


『君の自室が分からないから使えないのだよ。』

『・・分かりました。この応接の向かいの棟の三階です。』

『了解した。』


ではリティア君とアリサを伴って、擬態スキル本来の使い方である光学迷彩を使いながら、飛行して潜入するか。


『ちなみにアタシ達、聖書全巻2回読んだから。』

『あなたより詳しいかもしれませんよ。』

『リティシア様とクルシュミナの関係が素晴らしいな。』

『ボ、ボクはクルシュミナが死んでからの展開が胸熱だと思う。』

『何だとゼムノアァ!』

『ちょ、クルティナの事じゃないでしょ!』


「ハァ・・これにて失礼します。」


聖女は溜め息混じりに部屋を出て行った。


やれやれ、何とかなったな。

 

 

 

 

取り敢えず私達は聖女の部屋を訪ねる。


まずは準備だ。

モザイクおじさんの擬態スキルを解く。

妖魔の王に戻ったら、次は擬態スキル本来の仕様である背景と一体化する光学迷彩モードに変更。

これをすると周囲から見えなくなり、透明人間のように振る舞える。


リティア君と私はその状態で応接室から飛び立ち、聖女の部屋を探す。

まずは見付からないように高度を上げて、向かいの棟へ。

上空から三階で開いている窓を探せば直ぐに判明した。


うん、まだ寒いからね。

窓を開けてる変人は、他には居なかった。


スッと音もなく忍び込む。



聖女が着替え中だった。



オウ、ジーザス・・。




「はー、疲れた。やっと戻ってきたのにまた面倒事?何で妖魔の王がここに居るのよ!」


聖女は下着姿のままのプンプンプリプリ不満を漏らしている。

おやおや、淑女がはしたなくてよ。


クローゼットからアレコレと服をベッドに広げ、着るものを選んでいた。

その為、なかなか服を着てくれない。


これ、いつまでかかるのか分からないな。



・・・。


・・・・ま、いいか。


私は木なので、亜人族の裸とか下着とか関係ない。

着替え終わるまで部屋の中で待つ事にした。


『・・シャチョー様、これは覗きという犯罪なのではないですか?』


おやおや、またリティア君がおかしな事を言っているよ。

この娘にも困ったものだ。


『何を言うのだねリティア君、私は木だよ?何処の法律に木による覗きを縛る法があるのかね?』


そんな法律があるなら、花束や観葉植物、サボテンにマリモすら逮捕投獄対象になるではないか。

そんなの現実的に有り得ないだろう。

種族が全く違う相手に亜人族の法を適用するのは、見当違いも甚だしく横暴というものだ。


『確かに樹木を裁く法はありませんが、倫理的に限りなくギルティに近い合法という枠ではないですか?』


やれやれ、リティア君は考え過ぎだよ。


『倫理や価値観と言うのも種族に基づくものだよね?木である私には、亜人族の女性の裸を見て喜ぶ感性や価値観は無いのだが?第一私には性別がない。』


はい論破。


って言うか、私はいつも君達と一緒に女風呂に入ってるではないか。性別はないという事実証拠だ。


『ここではシャチョー様の存在や主張は問題ではありません。相手からどう思われるか、相手がどう思うかです。シャチョー様の嗜好や価値観が、人の男性に近しいものなので、自重すべきと心配しています。』


近いから何だと言うのかね。

法には抵触せず、物理的にどうこう出来ず、精神的にも興味がないので動機もない。

それで何故犯罪者扱いされなければならない?


嫌われようが、彼女が嫌な思いをしようが、それは彼女の主張であり個人的価値観だ。

一般性が無い。

一般的に植物の目を気にして着替えられないヤツがいるのかね?

そんなんじゃ部屋の中にサボテンすら置けないぞ?


サボテンが見てて不快だから、サボテンを訴える!

なんて言い始めたら、精神疾患を疑われるレベルだ。自意識過剰も甚だしいと判断されるだろう。

これが一般的意見だ。


加えて言えば、彼女の価値観に尊重はするが、過度な気遣いをするほど関係性が濃い訳でもない。

どちらかと言えば希薄、というか敵対的なのだから、嫌な思いをしたから責任取れなど、勝手な主張を押し付けられても、それに応じる義理はない。


聖女からどう思われても、私にとっては関係がないのだ。

無実の罪を着せられようと、断固抗議するのみだ。


『問題ないよリティア君。私は清廉潔白だ。』

『あの、シャチョー様は痴漢冤罪に気を付けて下さい。』


心配性だなリティア君は。


大体私はその場に居なくても、覗こうと思えば遠隔地からでも覗けるスキル持ちだよ?

現在の状況がアウトなら、私はどこに居てもアウトになってしまうではないか。

そんなの理不尽ではないか。遠隔視スキル持ちは、全員投獄なんて横暴だ。

私が四六時中覗き魔してるなら、有罪判決を喰らっても納得が出来るが、そんな事は断じてしていない。


現に今も聖女の近くにいるが、見ないように心掛けてはいる。

いくら敵対的相手とはいえ、その程度の配慮は前世の倫理観を適用している。

それに目の前でポイポイ脱ぐクルティナ君もジロジロ見たりしてないからね。(もう見慣れたけど)


医者と同じだ。

必要に応じない限りは故意に見たりはしない。

元男として興味がない訳ではないが、見たとしても何の感慨もないのだ。異性の裸を見る意味がない。


木には人と同じ性欲はない。

それに男は全てエロい、とは必ずしも言えない筈だ。

元男=エロい、だから木の魔物でもエロい、なんて短絡的過ぎる。

言い掛かり甚だしく、名誉毀損を逆に訴えたくなるね。


今の私は、木の魔物であって、男でも、エロい男でもない。木、つまり植物なのだ。

もう少し今の私に対する理解を頂きたいものだ。


ん?だとしたら・・


『だが、そんなことを言うと君達神格存在なんて、世界の何処でも、あらゆる種族のプライベート情報を覗き放題なのだろう?君達の方がアウトなのではないかね?』


君の言い分では、種族の違いや性別も関係なく、相手の同意なく見たらギルティ足り得るのだろう?


『・・・。』

『・・・。』



『・・・・そうですね!このまま居ましょう!』


語るに落ちたか。

掘り下げると、私達の存在そのものがアウトになる。

 

つまり、考えたら負け!

 

邪な心や悪意が無いならセーフとしなければ、私達は社会生活が出来ない存在なのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ