堅物騎士は、国王より贈り物を賜る
コンスタンタンとリュシアンに、国王から贈り物が届いた。
大きな箱が、各三つずつ。
コンスタンタンは長方形の箱が二つに、細長い木箱が一つ。
リュシアンは大きな箱と、正方形の箱、それから丸い箱が一つずつ。
「陛下は、いったい何を贈ってくださったのか……」
こちら側が祝わなければならないのに、どうして贈り物が届くのか。謎でしかない。
「アン、私のほうから、開けてもいいか?」
「はい、もちろんですわ」
コンスタンタンは緊張を胸に、箱を開封する。
長方形の箱の中には、正装が納められていた。コンスタンタンが所持しているものよりも、作りが華やかである。
上下の制服は、すべて銀の糸で縫われている。飾緒や肩章まで、贅沢に銀糸が使われていた。
「まあ、なんて美しいのでしょう」
「職人が、時間をかけて丁寧に仕上げたものだろうな」
「陛下は、以前から結婚式の護衛に、コンスタンタン様を指名しようと考えていらっしゃったのですね」
まさか、と思ったが、制服に袖を通してみると、驚くほどぴったりだった。
これは、提出している採寸表を見ないと作れないほどの、フィット感である。
リュシアンの言う通り、国王はかねてよりコンスタンタンを結婚式の護衛の一人として考えていたのだろう。
もう一つの箱には、マントと靴、それからベルトなどの小物が入っていた。
マントはデザインを一新し、丁寧に仕立ててある。広げて見ると、鮮やかな緑色の生地に、目を奪われた。
生地に光沢があり、とてもなめらかな触り心地であった。
「なんて、すばらしい品なのか」
「ええ、本当に」
三つ目の木箱の蓋を開く。そこには、長剣が納められていた。
儀礼用の剣で、鞘にエメラルドが填め込まれていた。
至る場所に蔦や葉の彫刻がなされており、王の菜園をイメージしたものだとわかる。
装飾が美しい剣であるものの、実用できる剣だ。柄を握って鞘から剣を引き抜くと、徹底的に磨かれた刃が出てくる。
これらの装備を身に着けていたら、親衛隊に交ざっても見劣りしないだろう。
国王に、心から感謝した。
リュシアンの箱も開封してみる。
「まあ!」
「これは!」
コンスタンタンとリュシアンは、箱の中身を見て驚愕した。
リュシアンのドレスは深い緑のベルベット生地で、コンスタンタンの制服同様に銀糸の飾緒や肩章がついているのだ。
まるで、騎士の制服と、貴婦人のドレスを掛け合わせたようである。
胸元にはリボンがあり、中心に半円状に磨かれたエメラルドがあしらわれていた。
あまりにも洗練されたデザインに、コンスタンタンとリュシアンは完全に言葉を失う。
「アン、残りの箱は?」
「あ、ああ、そうですわね」
丸い箱には帽子が、四角い箱には靴が入っているようだ。
帽子は丸いベレー帽で、ドレスと同じベルベット生地のリボンが結ばれている。靴は真珠のような照りがある、美しいものだった。
コンスタンタンとリュシアンは、しばし国王より賜った品を見つめる。
「あの、コンスタンタン様」
「なんだ?」
「コンスタンタン様の制服と、わたくしのドレス、お揃いみたいだと思いません?」
「ああ、たしかに」
二つの服を並べてみたら、揃いの衣装にしか見えない。
「とんでもなくすばらしい品を、いただいてしまった」
「そう、ですわね」
自分達は何を返せるのか。揃って頭を抱えてしまったのは言うまでもない。
◇◇◇
とうとう、国王と王妃となるソレーユの結婚式の当日を迎えた。
コンスタンタンとリュシアンは、揃いの衣装をまとう。
顔を合わせた途端、お互いに照れてしまった。
「アン、よく、似合っている。きれいな上に、凜々しい」
「コンスタンタン様も、とっても素敵です」
グレゴワールやロザリーも、お似合いだと絶賛してくれた。
真新しい制服は、いつも以上に背筋がピンと伸びるような気がする。リュシアンも、そうだと言う。不思議なものだ。
挙式の六時間前に王の菜園を出発し、王城にたどり着いたらリュシアンとはしばしの別れとなる。
「では、コンスタンタン様、また後ほど」
「ああ」
今日はロザリーだけでなく、クリスティーヌも同行する。注意せずとも、無理はしないだろう。
コンスタンタンは国王の執務室へ向かった。
結婚式当日でも、国王は忙しい。執務机から視線を離さずに、コンスタンタンの話に耳を傾けている。
コンスタンタンは正装と剣の礼を、丁寧に述べた。
「喜んでくれたようで、何よりだよ。それよりも、コンスタンタン、すまないね。結婚式当日なのに、バタバタしてしまって」
「いえ、私のほうこそ、忙しくしているときにお邪魔してしまい、申し訳ありませんでした」
コンスタンタンの物言いを聞いた国王は、顔を上げて笑い始める。
「君は、相変わらずだね。その生真面目な様子を見ていると、逆に安心するよ」
国王はペンを置き、立ち上がる。コンスタンタンの肩をポンと叩き、耳元で「今日はよろしくね」と言った。
その後は、親衛隊の打ち合わせに参加し、クレールと軽食を食べる。
そして――国王の結婚式が、始まった。




