鬼襲撃!狙われた顕如
剣丞視点
春日山城を奪還したその日の夜、いつの間にかいなくなっていた小波が帰ってきたのだが、その小波は傷だらけだった。
訳を聞いてみると大坂に拠点を構えているはずの石山本願寺の顕如が現れ、偵察していた小波は見つかってしまい、負傷しながらも何とか逃げ帰ったという
俺はその事を美空に伝えると
美空「顕如と繋がりがある人物に心当たりがあるわ。晴信よ 」
晴信?
俺はその人物の名前に心当たりがなかった。
だが
美空「あら、もしかして天の御遣いと呼ばれている人間が武田晴信を知らないのかしら? 」
武田晴信…
そうか!後の武田信玄だ!!
信玄ってのは出家してからの名前
目の前にいる美空こと長尾景虎も歴史上人物の上杉謙信。謙信も出家してからの名前なんだ。
武田信玄。確か戦国最強の武将
三方原で徳川家康を壊滅寸前にまで追い込み、謙信とは川中島で何度か戦ったことがあるという
美空「顕如の嫁は晴信の嫁の妹。つまり二人は親戚関係なのよ 」
剣丞「成程 」
この世界の嫁は女の子友達を意味する。
ということは顕如は尼さんなわけか
美空「きっと晴信が私に対抗するために顕如を呼んだに違いないわ。あいつ、今度こそ倒してやるんだから 」
恐ろしい美空だな!?
すると
柘榴「御大将!大変っす! 」
美空「どうかしたの柘榴? 」
柘榴こと柿崎景家さんが現れると
柘榴「た…武田晴信の使者がや…やって来たっす!? 」
美空「何ですって!? 」
どうやらこっちの展開はすごいことになりそうだ。
そしてこの頃、別の場所で大変なことが起きているのを俺は知らなかった。
語り手視点
こちらは僧兵達を率いる顕如一行がいる場所
頼廉「顕如様、もう少しでございますね 」
顕如の側近的立場である下間頼廉が言うと
顕如「そうですね頼廉 」
布で顔を隠しているが、そこには石山本願寺軍総大将である顕如がいた。
頼廉「しかし晴信め!長尾景虎と戦うために我らを呼び出したというのに迎えの一つも寄越さぬとは!大坂からここまで何日かかると思っているのだ! 」
愚痴をこぼす頼廉に対し
顕如「落ち着きなさい頼廉!義姉上も忙しい方なのです。宿敵である長尾景虎の相手をするのに手一杯なのでしょう 」
頼廉「は…はぁ、申し訳ありませんでした 」
そんな頼廉を叱る顕如であった。
そして一行が武田晴信の元に向かおうとしていると
顕如「むっ! 」
顕如が何かに気づいた。
頼廉「顕如様、どうかなされましたか? 」
顕如「どうやら先程のネズミとは違うネズミが見張っていたようですね。私としたことが今の今までネズミの存在に気づかなかったとは迂闊でした 」
そう顕如は言うと
スッ!
顕如「そこに隠れている者よ、出てきなさい! 」
大木に向かって顕如が言うと
バッ!
ズッシィーンッ!!
?「アンタガ顕如カナ? 」
バァンッ!!
そこに現れたのは人というより機械のような体をした化け物であった。
それと同時に
ババッ!!
ギャギャギャーッ!!
鬼の大軍が顕如一行を襲ってきたのだった。
僧兵「ば…化け物だぁーっ!? 」
僧兵「怯むな!!戦うのだ! 」
僧兵達は勇気を出して懸命に鬼と戦うも、並の人間が鬼に勝てるはずもなく苦戦を強いられてしまう。
一方顕如の方では
鋼鉄鬼「オレノ名ハ鋼鉄鬼!顕如、貴様ノ命ハオレガモラウ! 」
鋼鉄鬼という名の鬼が顕如に襲いかかるが
頼廉「顕如様には指一本触れさせぬ! 」
バッ!
頼廉が鋼鉄鬼の相手をしようと構えるが
バキィンッ!!
頼廉「なっ!? 」
頼廉が繰り出した錫杖は鋼鉄鬼には通じず、破壊されてしまった。
顕如「下がりなさい頼廉! 」
バッ!
頼廉「顕如様!? 」
顕如が頼廉の前に出ると
顕如「南無阿弥陀仏… 」
顕如が呪文を唱えると
ボボボッ!!
顕如の後ろに火の玉が出現し
ドドドンッ!!
火の玉が鋼鉄鬼目掛けて繰り出された!
頼廉「見たかもののけ!顕如様の仏の力を!これで奴も滅びて… 」
ところが
シュウゥッ…
顕如「!? 」
頼廉「なっ!? 」
鋼鉄鬼は多少傷ついただけでほとんど無傷であった。
鋼鉄鬼「オレニハソンナ攻撃、一切通ジナイ!! 」
ガシガシンッ!!
鋼鉄鬼は顕如に襲いかかるが
ガッ!!
頼廉「顕如様には指一本触れさせぬと申したであろう!! 」
頼廉が力ずくで鋼鉄鬼を押さえ込んでいた。
顕如「頼廉! 」
頼廉「顕如様!こいつの狙いは顕如様です!こいつは押さえておきますので早くお逃げください! 」
頼廉の言葉を聞いた顕如は
顕如「すみません頼廉! 」
ダッ!!
助けを呼ぶためにその場から去っていった。
頼廉「このもののけめ、顕如様を殺したくば、この頼廉を倒すことだな! 」
力の限り鋼鉄鬼を押さえつける頼廉であったが
鋼鉄鬼「・・・ 」
鋼鉄鬼は頼廉を振りほどこうともせず、先程から動きが止まったままであった。
一方
顕如「待ってなさいよ頼廉!すぐさま義姉上の軍を引き連れて戻ってきますからね 」
急いで武田晴信の元へ向かおうとする顕如であったが
?「それってば無理だからさぁ 」
顕如「!? 」
突然何者かの声が聞こえてきたのだった。
ちょうどその頃
バッ!
頼廉「うわっ!? 」
ようやく鋼鉄鬼が動き出し、頼廉を振りほどいたのだが
鋼鉄鬼「鬼共、撤退ダ! 」
ダダダッ!!
鋼鉄鬼は撤退命令を出し、部下の鬼達を引き連れてその場から去ってしまった。
頼廉「一体何が起きたのだ?おっと、こうしてはおれん!直ぐ様顕如様の元に… 」
先に向かっていった顕如を追うべく急ぐ頼廉であったが
顕如「安心しなさい頼廉、私ならここにいます 」
頼廉「け…顕如様! 」
バンッ!!
頼廉の前に顕如が現れたのだった。
頼廉「顕如様、よくぞご無事で! 」
顕如「私の事はどうでもいいのです。それより負傷者はいないようですね 」
頼廉「はい。噂に聞いた鬼と戦いましたがどうやら鬼は弱く、重傷者はいません 」
顕如「ならば先を急ぎましょう。義姉上が首を長くして待っているでしょうから 」
頼廉「ハッ! 」
このまま武田晴信の元へ急ぐ顕如一行
だが一行は気づいていなかったのだった!
バンッ!!
一行が通り過ぎた場所に殺されてしまった顕如の遺体があることを…
オリキャラ紹介
・顕如
石山本願寺軍総大将。仏の力と呼ばれる不思議な術を使う尼。晴信を義姉上と呼ぶ
・下間頼廉
本願寺の軍事部門総帥であり名だたる武将。顕如に心酔しており、自身の命よりも顕如を大事にする坊主




