Li sTe N -リッスン- 7
最終下校のチャイムが、校舎に響いた。
「どんな歌になってもいい」
美月が言う。
「お前のまっすぐな言葉で、歌を作れ」
「そんなムチャクチャなこと言うなよ」
「お前が聴いてる歌にいつも自分を重ねてるように」
一歩、近づく。
「未來が作った歌を聴いた誰かも自分を重ねるはずだ」
「そんなこと……」
「確かめてみるか?」
「無理だね」
また、即答だった。
「俺は知ってるぞ」
「また、なにをだよ」
「お前の父さんが生きてた頃、ピアノ買ってもらって、教えてもらってたことぐらい」
「……ゲッ」
「それに」
少しだけ口角を上げる。
「俺の部屋のピアノ、勝手に使ってるのもな」
ニヤリと笑う。
「やるか?」
「やんねぇーよ」
即座に切り返す。
「もし作ったところでどうすんだよ」
「文化祭で披露する」
一瞬、間が止まる。
「絶対、嫌ッ!!」
強く言い切る。
「お前が書いた感情が音に乗って誰かに届いたとき」
静かに続ける。
「そのとき、涙するやつがいる」
未來の目を見る。
「その光景が“自分だけじゃない”って証拠になる」
「……俺の書いた歌で、か?」
「そうだ」
「だからって出来ねーよっ」
「ほんとに出来ないのか?」
「……出来ない」
少しだけ間が空く。
「そうか」
あっさりと美月は頷く。
「なら仕方ないな」
「……どうする気だよ」
「そうだな」
淡々とした声。
「お前の両親が亡くなってから、俺が引き取って面倒見てきたけど」
一拍。
「今日で終わりにする」
「……おい」
「明日、荷物まとめて施設に戻れ」
「ちょっと待ってよ……そんな急に」
「じゃあやるか?」
間髪入れずに返す。
「……勘弁してくれよ」
「俺は本気だぞ」
静かな声だった。
冗談じゃないと、わかる声。
未來は手元のノートを見る。
開いていないのに、そこに全部詰まっている気がした。
「……もう」
小さく息を吐く。
「わかったよ」
顔を背けたまま言う。
「やればいいんだろ……やれば」
「よし」
すぐに表情が変わる。
「よく言った。決まりだな」
口元が緩む。
「……チェッ」
舌打ちが漏れる。
「じゃあ、もう遅い。暗くならないうちに帰れ」
「はーい……」
気の抜けた返事。
未來はノートだけを鞄に入れると、そのまま教室を出ていく。
扉が閉まる音が、やけに響いた。
「……少し、言いすぎたか」
ぽつりと呟く。
遠ざかっていく背中をしばらく見ていた




