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第7部「陰謀と儀式」

全世界に宣戦布告した組織エクリプス。

その最初の標的として選ばれたのは、城塞都市ガルタンだった。


不死の軍勢、二万。

迎え撃つ戦力、六千。


勝ち目のない戦に、ただ一人、勝算を描く軍師がいる。

――ゼム・マイスター。


これは、世界の命運を賭けた十五日間の物語。


登場人物紹介




◆ ゼム・マイスター

本作の主人公。知略と信念を武器に戦う若き軍師。

誰かを救うため、そして世界を導くために覚悟を固める。


◆ ジェイ(ジェイコブ)

黒の魔法と諜報に長けた情報工作員。

飄々とした態度の裏に、仲間への深い忠義を秘めている。


◆レナ・イニシエント

 中立国フルムーンの聖女。ゼム達暁の傭兵団に命を救われた。現在は、暁の傭兵団に保護してもらっている。


◆ローレン・マイスター

ゼムを拾った老人。その正体は賢者を継ぐものであり、ゼムに世界を見て、世界を導くよう使命を与えた。


※残りの主要な登場人物はあとがきに記載しています。

第1章「陰謀」


王都リルスティア

 栄華を誇った王都が今や見る影もなく、路地裏には浮浪者が倒れこみ、商店は軒並みしまっている。ゼム達が来た頃に比べ、廃れてしまっていた。

 誰もいないゴミが散らばった大通りを歩く男がいた。

黒いフードの男――

エクリプスの末端にして、最初の実験体。


彼は迷いなく黒水晶を掲げた。

黒水晶が脈打つように光った。

次の瞬間、路地裏に倒れていた浮浪者が、関節の軋む音とともに起き上がる。

その瞳には、光がなかった。

---


王城リルスの一室

今や人の気配のしない王城リルスはエクリプスの本拠地となっていた。

ヨイ「それにしても、全世界に宣戦布告とはやってくれるね…ベルモンド」

ベルモンド「いいじゃねえか!エクリプス計画達成まではあと少し。遅かれ早かれ全世界を敵に回すんだからな」

ヨイ「ふうん…それで最初の見せしめが城塞都市か」

ベルモンド「このアイリス王国内で俺たちをどうにかできるのは、あそこだけだ。戦力を集中できるのは今だけさ」

ヨイ「……まあ、理には適っているか」

ベルモンド「そうだろ!?まあ俺がいる限りは負けねえよ」

ヨイ「慢心は油断、油断は敗北を招く。特に暁の傭兵団とかね」

ベルモンドはムスッとした顔付きになる。

ベルモンド「まあいい。それで?俺の軍勢はどうなんだ。」

ヨイ「準備は順調。10日後には城塞都市へと進軍できるよ。総勢2万ぐらいになるだろうね」

ベルモンド「ガハハ!城塞都市にいるのは精々5000人。お前がいう暁の傭兵団を合わしても6000人ぐらいだろう。」

ヨイ「慢心」

ベルモンド「お前はイチイチうるせぇな。あとは頼むわ。俺はお楽しみがあるんでな。」

ベルモンドは下腹部を膨らませて、部屋から出ていった。

ヨイは唾を吐き捨てる。

ヨイ「頭は悪いが、カリスマ性はあるからな。まあエクリプス計画成就のために散々使ってやるよ」

ヨイはそう言うと、闇魔法で姿を消した。


---


ヨイは王城の地下に存在する自分の私室に戻ってきた。その私室は蝋燭によって光が灯されており、湿気と程よい闇により、鬱蒼としていた。

ヨイ「…報告を」

部屋の光が届かない影から1人の影が出てくる。

アリス「…不死の部隊、アリスが報告します。」

アリスと名乗った女性は全身黒い服をきており、黒いマスク、黒いマントを羽織っていた。

アリス「現在の掌握人員は約9000名。一部黒水晶に取り込まれた同志が居たため、難航しています。」

ヨイ「なぜ、取り込まれる。」

アリス「許容範囲を超過したことが原因かと。当初の予定では黒水晶1個に対して2000人を操る予定でしたが、現在では1500人が限界です。」

ヨイ「…つまり、現状は総勢15000が限界か?」

ヨイは殺気に満ちた声色と圧力で迫る。

アリス「も…申し訳ありません。」

ヨイが静かに近寄ってくる。

ヨイが懐に手を入れる。

アリス『あ…私はここで死ぬのか』

ヨイはニヤリと笑い一回り大きな黒水晶を取り出した。

ヨイ「これはお前に渡している黒水晶の親玉だ。本来は私が持つ予定だったが、お前に渡そう。親玉と小玉をリンクさせ、お前が負担を分担すれば当初の予定の人数を操れるだろう。」

ヨイは大きな黒水晶をアリスに渡す。

アリスは震えながらも、それを受け取った。

ヨイ「お前の負担も大きくなるだろうが…やってくれるな?」

アリスは一瞬、唇を噛んだ。それでも、視線は逸らさなかった。

アリス「畏まりました。」

淡々と頭を下げた。

ヨイはアリスに背を向ける。

ヨイ「この戦はアリスにかかっているよ。」

アリス「直ちに取り組みます。」

アリスはそう言うと、影に消えた。

ヨイ「…ククク、みんなキリキリ働いてくれよ」

王城の地下から笑い声が響きわたっていた。



第2章「長い15日間」


エクリプスの全世界に向けた宣戦布告から一夜が明けた。空には太陽が昇り始め、世界にとってはいつも通りの朝を迎える。

城塞都市領主サンドレイクの動きは早かった。城塞都市の騎士団を使い、以下のお触れを出したのだ。


「城塞都市ガルタンは非常事態宣言を発令する。」

「城塞都市に所属する騎士団はもとより、全ての冒険者、傭兵団はガルタン防衛のため尽力せよ。」

「本日、昼に冒険者ギルドマスター、傭兵団長、騎士団長は領主邸に集合せよ。」


ゼム「相変わらず動きが早い」

ゼムは城塞都市へ行く準備をしながら話し出す。

ジェイ「まああの領主は切れ者だしな」

バルザ「うむ。あの方は昔から判断が鋭く、感が良い方だ。」


ゼムは暁の傭兵団の拠点「ルミレスト」

今や、リシェル王女の救出、中立国フルムーンでの悪事の阻止が周囲に認知され飛ぶ鳥を落とす勢いのある傭兵団である。

ゼムはルミレストの中央の広場にある小高い壇上に登る。

眼下には、今や総勢1000人程の人間が並んでいる。


バルザ「気をつけぇい!!!各部隊長は報告!!!!」

サリイ「サリイ・アイバーン以下150名、第2戦闘部隊準備完了!」

ジェイ「ジェイ以下80名、隠密諜報部隊ここに」

アメリア「アメリア・ドーン以下150名、遠距離部隊集合しました!」

ドンパ「ドンパ・パンドン以下120名、工作土木部隊集合じゃわい」

クララ「クララ・アルセーヌ以下100名、魔法部隊準備よしよ」

セナ「セナ・イニシエント以下80名、回復支援部隊準備完了です」

トム「トム・ポート以下170名、後方支援部隊準備完了ですぞ!」

バルザは各部隊長の顔を見渡す。

バルザ「うむ!」

バルザは振り返り、壇上のゼムに正対する。

バルザ「バルザ・ドーン以下150名、第1戦闘部隊準備完了!そして、暁の傭兵団総勢1000名準備完了!!」


バルザの圧巻の敬礼を受けるゼム


ゼムは改めて、団員の顔を見る。自信満々の顔、不安を隠せない者も居るのがわかる。

日が昇り、暖かな陽気が流れてくる。

ゼムは叫ぶ

ゼム「昨日、エクリプスのベルモンドが城塞都市ガルタンに宣戦布告したのは皆も承知のことであろう。我々暁の傭兵団はリシェル王女の救出、フルムーン王国の一件など、事あるごとに奴らと戦い勝利をしてきた。しかし、次は民間人を含むガルタンへの侵略である。

我々の存在理由は民を守ること!民の安全と財産を守り、次世代につないでいくことである!城塞都市ガルタンと連携しエクリプスの野望を阻止する!!」

暁の傭兵団「うおお!」

団員達が声をあげ、武器を叩き鳴らす。

ゼム「暁の傭兵団は世界を夜明けへと導く!」


---


城塞都市ガルタン、領主邸地下会議室。

石造りの長机の上に、ガルタン周辺の地図が広げられていた。

 城壁、外郭、平原、街道。

 敵が来るとすれば、必ず通らねばならぬ線が赤く引かれている。

この地図を囲むのは

城塞都市ガルタン領主のサンドレイク

冒険者ギルドマスターのゴルドー(大剣を背負った男)、

飛翔の傭兵団長ケビン(羽飾りのついた軽装)、

乙女の傭兵団長グラス(艶やかな女)、

戦の傭兵団長サバト(傷だらけの大男)、

暁の傭兵団長ゼム、ジェイ

 淡々とガルタン軍の参謀が地図の説明をしている。

参謀「…以上が、ガルタン周辺の地域となります。」

サンドレイクが重い口を開く。

サンドレイク「会議を始める前に、みなに言っておく。」

会議場が静まりかえる。

サンドレイク「ワシはこの戦の全指揮を暁の傭兵団のゼムに任せる。」

会議場からどよめきが走る。

騎士団長「正気ですか!?我が城塞都市を守るための指揮をあの若造に任せるのですか!?」

騎士団長の怒号が飛び、会議場内が騒ぎになる。

サバト「…俺は賛成だ。」

会議場の視線がサバトに集まる。

サバト「エクリプスの連中と戦ってきたのは暁の傭兵団だ。それに、先のランド伯爵家との一戦でこちらを勝利に導いたのはゼムの指揮だ。」

グラス「そうねぇ。相手の手の内もある程度はわかってるだろうし、適任よね。」

騎士団長「し…しかし!」

 ドン!!

サンドレイクが机を叩く。

サンドレイク「なら、聞くが。お前はヨイとやらのことを知っているのか?」

騎士団長「ヨイ…?」

サンドレイク「敵の軍師の名前ぐらい知っておけ」

騎士団長は憤慨しながらも引き下がった。

サンドレイク「責任はワシが取る。だが勝ち筋を描けるのはゼムだ」

サンドレイク「静かになったな…。ゼム、作戦を頼めるか。」

 ゼムは地図を見下ろしたまま、静かに口を開いた。

「まず確認しておく。エクリプスは“不死の軍勢”を擁すると宣言している」

 室内の空気がわずかに張り詰める。

ゼム「“不死”を煽って士気を折る情報戦かもしれない」

 ゴルドーが肩をすくめる。

「不死、という割には情報が少なすぎる。噂話ばかりだな」

「そうだ」

 ゼムは頷いた。

「少なくとも、これまでエクリプスが使ってきたのは“人”だ。強化されている可能性はあるが、兵である以上、行動原理は変わらない」

 サンドレイクが腕を組む。

「進軍路、補給、指揮系統……か」

「ええ。だからこちらは“正面から来る”前提で備える」

 ゼムは地図に指を走らせた。

「城壁前方に濠を掘る。深さは二メートル。即席だが、足止めには十分だ。外郭には瓦礫と障害物を配置し、隊列を崩す」

 次々と指示が重ねられる。

「敵が密集すれば遠距離で削れる。混乱したところを叩く。そして、障害を利用してこちらの火力が集中できるところに誘い込む。」

グラスが地図を覗き込み、頷いた。

「……普通の兵士なら、確実に嫌がる配置ね」

サバトも低く笑う。

「死体が出れば道はさらに塞がる。前に進むほど、進軍は遅くなる…」

 一瞬だけ、ゼムの視線が止まった。

 ――死体。

 だが、すぐに思考を切り替える。

ゼム「恐怖は最大の武器だ。進めば死ぬ、止まれば削られる。兵士である以上、その状況で冷静ではいられない」

ゼムは淡々と言った。

ゼム「退却か、突撃かの判断を誤らせれば勝機はある」

 会議室に、反対意見はなかった。

騎士団長が肯定したくないが、嫌嫌ながら話し始める。

「理には適っている。しかし、このような大工事を誰がするのだ?」

ゼム「我々、暁の傭兵団の工兵部隊120名と騎士団からの支援80名で可能な規模だ。それに、飛翔の傭兵団の空輸があれば資材は確保可能だ。」

騎士団長は信じられないという顔だった。

サンドレイク「これで、決定だな。」

 決定の声が落ちる。

 だが、ゼムは一拍置いて、言葉を添えた。

「……ただし」

 全員が顔を上げる。

「もし相手が“恐怖を感じない存在”だった場合、この策は成立しない」

 沈黙。

「だが、現時点ではそれ以上の想定はできない。未知を恐れて手を止めれば、確実に負ける」

サンドレイク「ならば、敵の出方をみる必要があるな。つまり、戦闘前哨ということか。」

ゼム「はい。しかし、何も情報もない上にぶつかるのでリスクが大きすぎる。」


サバト「俺の所でやろう。」

会議場の目線がサバトに集まる。

サバト「前のランド伯爵家のときに見せ場がなかったからな。任しておけ…」

ゼム「ありがとうございます。暁の傭兵団の斥候部隊もつけますので、お役に立てればと思います。」

サバト「承知した…」

ゼムは淡々と続ける。

ゼム「騎士団は城塞都市内の治安と住民の避難の誘導、飛翔の傭兵団は物資と人員の輸送、乙女の傭兵団は救護所の開設、暁の傭兵団は城外の警備と障害構築でいきましょう。」

 ゼムはそう締めくくった。

 会議は終わる。

ゼム(……敵が人であるなら、これで勝てる)

ゼム(だが“不死”が真実なら――地獄になる)


第3章「作戦準備」


ドンパ「こらー!しっかりせんか!!」

工兵部隊「へ、へい!!」

城塞都市ガルタンの周囲は、これまでにないほど慌ただしかった。

 城外では、工兵部隊の鍬が土を裂き、

 城内では、人の流れが組織的に動いている。


空では--

「次! 次を回せ! 重い物資は後回しだ!」

 空から響く怒声に、何人もの人間が顔を上げた。

 飛翔の傭兵団――ケビン率いる輸送部隊が、次々と空を舞っている。

 木箱、鉄材、縄、食料。

 それらを吊り下げ、城外の集積地へと正確に投下していく。

「風向き良し! 高度維持! 次は北側だ!」

 ケビンは空中で身を翻しながら、指示を飛ばす。

「この速度なら、予定より半日早く終わりそうだ!」


 地上ではドンパが腕を組み、満足げに唸った。

「上出来じゃ……空輸がなければ、これほどの規模は無理じゃった」

 壕の構築は、着実に進んでいた。


 一方、城塞都市の内部。

騎士「落ち着いてください! 西門から順に誘導します!」

 騎士団が盾を構えながら、住民たちを守るように並んでいる。

 老人、子ども、荷を抱えた商人。

 不安そうな顔があちこちにあったが、騎士たちは声を荒らげない。

騎士「大丈夫です。避難先は確保されています」

騎士「荷物は最低限で。命が最優先です」

 列は混乱することなく、静かに流れていく。

 その様子を見ていたサンドレイクは、静かに頷いた。

サンドレイク「……敵の正体が分からぬ以上は止むを得ぬ」


救護所は、城内の広場に設けられていた。

グラス「はい、こちらは軽傷。あちらは重傷者優先!」


 乙女の傭兵団長グラスは、迷いなく指示を飛ばす。

 白い布が張られ、簡易ベッドが並ぶ。

 治癒魔法と薬草、包帯が整然と配置されていた。


 城外の平原では、剣と盾の音が鳴り響いていた。

「構えが甘い! 盾は“守る”んじゃない、“押す”んだ!」

 バルザの怒号が飛ぶ。

 暁の傭兵団と騎士団による、合同戦闘訓練。

 隊列を組み、前進、後退、交代――

 最初は噛み合わなかった動きが、徐々に一つになっていく。

「今だ、後列交代!」

「了解!」

 汗にまみれた騎士が、息を切らしながらも笑った。

騎士「……傭兵ってのは、思ったより理屈派なんだな」

傭兵「生き残るために、な」

 短い言葉が、信頼を生んでいく。

サリイ「そこー!サボってんじゃないよ!」

騎士「女ってのは強いねぇ」


少し離れた城壁から、ゼムはその光景を見つめていた。

(動いている。人も、街も、戦の歯車として――)

 計画は、確かに機能している。

(本当に大丈夫か?落ち度はないか?)

真下では汗をかきながら、ドンパが土木工事をしているのが見えた。

(あの壕がこの防御の要だ。だが、それで本当に大丈夫か?)

 日が傾き、作業が一段落した頃。

 ゼムに近づいてくる影があった。


レナ「忙しそうですね」

ゼム「はい。でも……皆が動いているのを見ると、不思議と心が落ち着きます」

レナは、遠くの壕を見つめた。

レナ「本当はどうなの?」

 ゼムは一瞬、言葉を探した。

「……正直、不安です。こんな大部隊を動かしたことすらない。相手の正体もわからない。」

 レナは、静かに頷いた。

レナ「誰だって、始めてはあるものよ。逃げないだけ立派よ。私はあなたに救われたのだから」

 その指先が、ほんの一瞬、ゼムの手に触れる。

 それだけで、十分だった。

ゼム「そろそろ、ジェイ達の斥候部隊が戻ってくる頃です。」

ゼムは城壁の出口へと身体を向ける。

そして、振り返り手をだす。

ゼム「参りましょう」

レナ「そうね」


---


城塞都市ガルタンの作戦室

ゼムとレナはジェイから報告を受けるためそこに向かった。

ゼム「おかしいな…まだ来てないのか」

いつもなら時間ぴったりに報告に来るジェイの姿が見えない。

レナが部屋の端を指さした。

レナ「ゼ、ゼム!あそこ!」

赤い液体…?血だった。

ゼムが駆けつける。そこには、腹を押さえて座っているジェイが居た。

ジェイ「……よう」

ゼム「大丈夫か!?」

レナ「すぐに治療します。」

ジェイ「すまねぇ…ちょっとヘマをした。」

ゼム「報告はあとでいい!とりあえず…」

ジェイがゼムの顔の前に手を出して、話を遮る。

ジェイ「いや…それはダメだ。」

ジェイは一呼吸吸うと、話しだした。

ジェイ「戦の傭兵団は壊滅した。」



第4章「不死」


ジェイは、そのまま気を失った。

 血に染まった床に崩れ落ちる彼を、騎士と暁の団員が慌てて抱え上げる。

ゼム「担架を! 急げ!」

城内の衛兵が走ってくる。

ゼム「救護所だ、走れ!」

 レナの治癒魔法が追いすがるように施されるが、傷は深かった。

 ジェイは呻き声ひとつ上げることなく、意識を失ったまま運ばれていく。

 ゼムは、ジェイが運ばれるのを見ながら、動けなかった。

 胸の奥に、嫌な予感が沈殿していく。

 領主邸では、すぐに次の判断が下された。

サンドレイク「戦の傭兵団の残党を回収する。救助隊を出せ」

 サンドレイクの声は低く、重い。

サンドレイク「生死は問わん。情報を持ち帰れ。それが最優先だ」

 騎士団と傭兵混成の救助隊が、夜の平原へと向かっていった。

 その背を、ゼムは城壁の上から見送る。

(……頼む)

 それが祈りなのか、願望なのか、自分でも分からなかった。

 そして――

 作戦準備から十二日目。

 正午を少し回った頃だった。

救助隊を率いていたバルザが門をあける。

バルザ「どけ!?道を空けろ!!」

 城門前がざわつく。

 担架が、静かに運び込まれてきた。

 血の匂いが、風に乗って届く。

 担架の上に横たわっていたのは――

 戦の傭兵団長、サバトだった。

 全身は包帯で覆われ、呼吸は浅い。

 だが、確かに生きている。

バルザ「団長、サバトはもう……」

ゼム「サバト……!」

 ゼムは駆け寄り、膝をついた。

 サバトの片目が、わずかに開く。

サバト「……ゼムか」

 掠れた声だった。

サバト「すまない……しくじった」

ゼム「そんなことはいい!」

 ゼムは必死に首を振る。

ゼム「生きて戻った。それで十分です。敵は――敵は何だったんですか!」

 一瞬、サバトの視線が宙を彷徨った。

 何かを思い出そうとするように。

 あるいは、思い出すことを拒むように。

サバト「……人の形はしていた」

 呼吸が、乱れる。

サバト「鎧を着て、武器を持って……歩き方も、人だった」

 ゼムは息を呑む。

サバト「だが――」

 サバトの指が、微かに震えた。

サバト「人じゃない」

 沈黙。

サバト「斬った。確かに斬った。首も、胴もだ」

 喉が鳴る。

サバト「……だが、止まらなかった」

 サバトは、そこで一度大きく息を吸い込んだ。

 そして、ゆっくりと吐き出す。

サバト「恐怖が……なかった」

 声が、ほとんど音にならない。

サバト「燃えても、叫ばない。仲間が倒れても、振り向きもしない」

 ゼムの背筋を、冷たいものが走る。

サバト「……あれは」

 サバトの目が、ゼムを捉えた。

サバト「戦じゃない」

 それが、最後の言葉だった。

 サバトの胸が、静かに上下する。

 そして――

 二度と、動くことはなかった。

 その場にいた誰もが、言葉を失った。

 勝ったか、負けたかではない。

 何と戦っているのかが、分からなかった。

 ゼムは、拳を強く握り締める。

(……人だと思っていた)

 それが、すべての間違いだったのかもしれない。

 戦は、すでに

 こちらの常識の外側で始まっていた。


---


サバトの死から数刻後、ジェイが目覚めた。

ゼム、サンドレイクはジェイの病室へと向かった。

ジェイは包帯に巻かれた姿でレナの治療魔術を受けながらベッドに座ったままこちらを見た。

ジェイ「…よう!心配かけたな」

ゼム「元気そうだな」

ジェイ「そりゃあレナ様の回復魔術を受けたからね!」

ゼムは少し笑顔になったが、表情を戻す。

ゼム「斥候部隊が見た敵の情報が欲しい」

喉を鳴らし、一度だけ深く息を吸う。

ジェイ「俺たちは……敵を見た」

 ゼムの背筋が、自然と伸びる。

ジェイ「遠目じゃ、人の軍勢だった。隊列も、進軍の仕方も、普通だった」

 言葉は途切れ途切れだ。

ジェイ「だが、近づいた瞬間……違和感があった」

 ジェイの指が、わずかに震える。

「……音が一つなんだ。」

「音?」

「ああ……足音が揃いすぎてる。鎧が擦れる音も、呼吸も……全てだ。」

 ゼムは、無言で頷く。

ジェイ「戦の傭兵団が敵の正体を暴こうと突撃したよ。」

ジェイは一拍置く。

ジェイ「でも…斬られても、燃えても……止まらない。 退かない。叫ばない。仲間が倒れても、振り向きもしない」

 ジェイは、苦しそうに眉を歪めた。

ジェイ「……戦の傭兵団は数の暴力に押し流されて行ったよ。」

 その言葉が、重く落ちる。

サンドレイク「ならば、敵の総数は分かったのか?」

 声が、震えた。

ジェイ「あいつらは先遣隊さ。敵さん、総数を分かりにくくするために分散しながら、こっちに接近してる。」

 ゼムは、思わず拳を握り締める。

ゼム「人……なんだな?」

 問いは、祈りに近かった。

 ジェイは、しばらく沈黙した後、ゆっくりと首を横に振る。

ジェイ「……人だった。確かに」

 そして、続ける。

ジェイ「でも、人じゃなかった」

 レナが、息を呑む音が聞こえた。

ジェイ「生きてるのに、生きようとしてない。

 殺されることを、拒んでない」

 ジェイは、力尽きたように目を閉じる。

ゼム「ありがとう。ジェイ、よく休んでくれ」

 その言葉を最後に、ジェイの意識は再び沈んでいった。

レナ「私はここで、治療を続けます。」

ゼム「頼んだ。」

ゼムとサンドレイクは病室から出る。

サンドレイク「ゼムよ。此度の相手は厄介だな。」

ゼム「ええ…最悪の形が的中するかもしれません。すぐに手を打たないと。」

ゼムとサンドレイクはそう言うと、足早に去って行った。


---


作戦準備から14日目

作戦室にてサンドレイク、騎士団長、ゼム等が会議をしていた。

そこに、慌てて騎士が入ってくる。

騎士「王都の方角に敵影が見えました!」

騎士団長「……して敵勢は?」

騎士は息を切らしながら、報告する。

騎士「や、約2万です。」


不死の軍勢2万vs城塞都市ガルタン軍6000の決戦がすぐそこに迫っていた。


第5章「決戦」


ゼムとサンドレイクは城塞都市の城壁へときていた。

眼前に広がるは約2万の軍勢


――音が、なかった。


鎧の擦れる音も、足音も、呼吸すらも。

ただ、黒い波だけが、ゆっくりと近づいてくる。

ゼム「……想定通りだ。最悪の、な」

サンドレイク「うむ…」


そして、一斉に進軍が止まった。

すると、敵勢から馬に乗った2人が現れる。

ベルモンド「約束通りだ、城塞都市!

明日になったら――お前たちの街は、なくなる!」

ヨイ「死ぬ準備は、もう終わっているよ」


---


夜。

 城塞都市の作戦室には、灯りがともっていた。

 地図が広げられ、駒が動かされる。

 だが、ゼムは多くを語らない。

ゼム「……それで行く」

 短い言葉だけが落ちる。

 サンドレイクは頷き、騎士団長は歯を食いしばる。

 ドンパは無言で地図の一点を指し、

 アメリアとクララは視線を交わした。

 誰も、詳細を問いたださなかった。

 作戦は共有され、

 だが内容は、語られなかった。


そして――

 作戦準備から十五日目。

 角笛が鳴った。

 黒い軍勢が、一斉に動き出す。

工兵部隊「来るぞ……!」

 次の瞬間。

 地面が、爆ぜた。

 ドンパが仕掛けた地雷型魔法罠が連鎖的に炸裂し、

 土砂と肉片が宙を舞う。

 敵の先頭が、弾け飛ぶ。

「止まったか!?」

 誰かの声が上がる。

 だが――

 土煙の向こうから、影が立ち上がった。

 折れた脚を引きずりながら。

 首の角度がおかしいまま。

 軍勢は、歩いていた。


「弓部隊! 一斉射!」

 アメリアの号令とともに、矢の雨が降り注ぐ。

 胸を貫かれ、喉に突き刺さり、

 何体もの敵が倒れ伏す。

 ――そして。

 起き上がった。

 矢を突き立てたまま、

 何事もなかったかのように、列に戻る。

魔法部隊「……嘘でしょ……」

 誰かが、呟いた。


「魔法部隊、展開!」

 クララの杖が振り下ろされ、

 青い光弾が奔流となって敵陣を薙ぎ払う。

 水刃が、胴を断ち切る。

 上半身と下半身が、はっきりと分かたれた。

 ――それでも。

 上半身だけの兵が、腕で地を掻き、前へ進んだ。

騎士「来るな……!来るなよ!」

 叫び声が、城壁に響く。

 だが黒い軍勢は、止まらない。

 恐怖も、痛みも、死も。

 最初から、持っていないかのように。

 ゼムは、城壁の上でその光景を見下ろしていた。

(……始まった)

 それは戦ではなかった。

 災厄だった。


不死の軍勢はその速度を変えることなく進軍してくる。

ゼムは城壁に立ち、合図をおくる。


ドンパ「てめぇら!ここが踏ん張りどころだ!!」

工兵部隊は大きな黄色の光球を作り出す。

ドンパ「気合いいれろぉ!!!」

ドンパ率いる工兵部隊が、黄色の光球を掲げ、そして、地面に投げた。

ドンパ「アースクリエイト!!!」


大地が唸りを上げ、

断崖絶壁の土が軍勢の前に隆起した。


進軍路は、強制的に絞られる。


ゼム「魔法や罠で止まらないなら、進軍の角度を変える。

出口を狭くするんだ」


ゼム「――つまり、肉の壁を作る!」


黒い軍勢の先頭が、土壁へと押し寄せる。


その様子を、敵陣の奥でヨイが眺めていた。


ヨイ「……いいねぇ。」

ヨイは不敵に笑う。

ヨイ「そう来ると思ってたよ、ゼム」


ヨイは、大きな黒水晶と一体化したアリスの肩に手を置く。


ヨイ「アリス。指揮を変わるよ」


次の瞬間。


土壁に触れた兵の身体が、

内側から弾けるように崩れ落ちた。


悲鳴は、上がらない。

ただ、破裂音だけが戦場に響いた。


ドンパが決死の覚悟で作り出した土壁は、

数多の衝撃によって、徐々に削られていった。


壁の表面が、内側から破裂する。

触れた兵が弾け、その衝撃で土が崩れる。


ゼム「魔法部隊及び弓矢部隊は壁に人を近寄らせるな!」


サンドレイクも声を張り上げる。


サンドレイク「戦闘部隊は、這い出た敵を薙ぎ払え!」


命令は的確だった。

魔法も、矢も、剣も、すべてが正しく使われている。


動けなくなった敵は、少なく見積もっても2千を超えていた。


――だが。


二万の軍勢にとって、それは誤差だった。


黒い波は、速度を落とさない。


騎士「壕に到達されます!」


その叫びと同時に、

壕の縁に、進軍が迫ろうとしていた。


土壁はかろうじて機能しており、壕内に進入する敵兵は少ない。

しかし--

ゼム「壕が敵の身体で埋まるのは時間の問題だ。」

ゼムは、もう一度だけ前線を見据えた。


壕は、まだ持っている。

だが――埋まる未来は、確定している。


「第2の秘策、投入」


その合図と同時に、

空に影が走った。


飛翔の傭兵団だ。


ケビン率いる輸送隊が、壕の上空を旋回する。


ケビン「投下――今だ!」


飛竜に積まれた火薬樽が敵の軍勢のど真ん中に炸裂し、油とともに飛散する。

火が移った敵兵は、悲鳴もあげず灰になっていった。


クララ「いきましょう!」

ドンパ「気合いじゃあ!!!」

黄色と青の光球が、壕の中へと落とされる。

空中で砕け、混ざり合い、

粘つく油となって壕の底を満たしていく。


そこへ――


アメリア「火矢、放て!」


数十の矢が、赤い軌跡を描いた。


炎が、走る。


壕の中で、静かに、確実に、

黒い影が燃え落ちていく。


悲鳴はない。

煙だけが、ゆっくりと立ち上った。


進軍速度が、明確に落ちた。

壕から這い出てきた敵兵はバルザとサリイ率いる戦闘部隊がしらみ潰しに薙ぎ払う。

バルザ「城壁に指1本触れさせるな!」

サリイ「さあ!やっと出番よ!!!」


――成功だった。


だが、ゼムは笑わなかった。


(これでも……時間稼ぎに過ぎない)


敵陣の奥で、ヨイが目を細める。


ヨイ「……なるほど。焼くか」

そして、口元を歪めた。

ヨイ「君の命がほんの少し伸びただけだね」

---

決戦から10時間、夕方に差し迫っていた。

壕内の焼却、空爆により確実に敵兵は減っていた。

しかし、進軍は止まらない。

壕の向こうで、炎がまだ燻っている。  

煙は上がっているが、戦場は不気味なほど静かだった。

 ゼムは、城壁から必死に指示を出していた。

サンドレイク「待て、ゼム」

 低い声が指示を止める。  

振り返ると、サンドレイクがそこに立っていた。

サンドレイク「ここから先は、ワシが預かる」

その声に、迷いはなかった。

――生きて帰る声ではない。

ゼム「……領主」

サンドレイク「このままだと、負ける。」

ゼムは押し黙った。

サンドレイク「唯一の勝ち筋はお前だ。」

サンドレイクは城壁から戦場をみる。

サンドレイク「城壁、壕、兵。お前の秘策によりここまで戦えている。しかし、不死の軍勢の謎が解けない限り勝てはせぬ。お前が作った策と我が城塞都市の城壁であれば、夜明けまでは持つだろう。」

サンドレイクは、真っ直ぐゼムを見る。

サンドレイク「だから行け。答えを掴んでこい」

ゼム「……必ず戻ります」

ゼムは城壁の下へと駆け下りる。

そして、城壁の外に出ようとした。

 そのとき。

レナ「――ゼム」

 振り返ると、レナが夕日に照らされて立っていた。  戦装束ではない。だが、その瞳は揺れていなかった。

レナ「一人で行くつもり?」

ゼム「……危険です」

レナ「だから?」

一歩、近づく。

レナ「あなたは、皆を救うつもりの覚悟でしょう?何のための仲間なのよ!?」

ゼムは、言葉を失った。

 その沈黙を破ったのは、聞き慣れた声だった。


ジェイ「おいおい……」

壁際から、包帯姿の男が現れる。

ジェイ「相棒を忘れるなんて、薄情だな」

ゼム「ジェイ……!」

ジェイ「医者には止められたけどさ」

肩をすくめながら、ゼムに近づく。そして、肩を叩く。

ジェイ「一緒に止めるぞ。」

 その瞬間だった。

――ドンッ。

 遠くで、重い爆発音が響いた。

火薬樽の残りが、連鎖するように弾ける。

 ゼムは反射的に、戦場を見た。

 黒い軍勢の一角が――  一斉に、崩れ落ちた。

ゼム「……?」

 数ではない。  数千だ。

 焼かれたからでも、押し潰されたからでもない。  まるで、糸を切られた人形のように。

 動かなくなった。

ゼム「……止まった?」

 だが、ゼムは違うものを見ていた。

 倒れた兵の周囲。  その近くにいる兵は、まだ動いている。  距離がある。

 ――偏っている。

ゼム(爆発の中心……いや、違う)  

視線が走る。

火薬樽が炸裂した地点。

ゼム(……何かが、切れた)

 心臓が早鐘を打つ。

ゼム「……不死じゃない」

ジェイ「何だって?」

ゼム「いや……正確には」

ゼムは、唇を噛む。

ゼム「不死の軍団は操られている?」

 沈黙。

レナ「……操られている、どういうこと?」

ゼム「……可能性が高い」  

ゼムは、戦場から目を離さなかった。

ゼム「しかも、無差別じゃない。範囲がある」

ジェイ「……つまりは指揮をとっている何があるか」  ジェイの声が低くなる。

ジェイ「じゃあ、あいつらは……“人形”か」

 ゼムは、ゆっくりと頷いた。

ゼム「カラクリがある」

ゼム「そして――それを壊せば、全部止まる」

 

ゼムは振り返り、仲間を見る。

ゼム「行こう」

レナとジェイは頷いた。


黒い軍勢の向こう。 謎を解き明かしに。

 戦は、まだ終わっていない。

だが――  勝ち筋は、確かに見え始めていた。


第6章「秘密」


不死の軍勢の指揮所--

ベルモンド「ヨイ!あっちの軍勢にいた黒水晶壊れたんじゃねぇのか?」

ヨイ「まあ、あれだけ無差別に空爆やってたらいつかは当たるでしょう。」

ベルモンド「でもいいのかよ?」

ヨイ「……彼なら、そこまでは辿り着くでしょう」。まあ何かは分かってはいませんが」

ベルモンド「おいおい…そうやって各個撃破されたら終わりだぞ。」

ヨイ「倒されなければいいんです。それより、ベルモンド様、出番ですよ。」

ベルモンドはロングソードを片手に立ち上がる。

ベルモンド「ようやくか!」

ヨイ「ええ…」

ヨイはそう言うと大きな黒水晶と一体となったアリスに手を添える。

アリス「ヨイ…様…もう限界…です。」

ヨイはニヤリとする。

ヨイ「すぐに楽にしてあげますよ」

ヨイは漆黒の光球を生み出す。

ヨイ「ダークサモン」

アリスの黒水晶が光り出す。

それと同時に戦場の各地から漆黒の光が立ち上がる。

アリス「ヨ…イ……さ…ま」

アリスは黒い球体へと変化し周りの人形を吸収し始める。


---城壁の上


サンドレイク「なんだ……あれは…!?」

10本の黒い球体が周りの敵兵を吸収していく。

そして、一番奥に黒い鱗のドラゴン

戦場に発生した球体は黒い肌のオーガへと姿を変えていた。


今や戦場にはあの約2万の軍勢はいない。

いるのは前線に黒い肌のオーガが9体、

そして、一番奥。


戦場が、静まり返った。


黒い鱗のドラゴンが、そこにいた。


騎士「ああ……終わりだ…」


---


ゼム「……あれを止める」


ジェイ「は?」

レナが視線を追う。


戦場の奥。

黒い鱗を持つドラゴンが、静かに佇んでいた。


ゼム「黒い球体の中で、最も大きい」

ゼム「操られているとすれば、あれが“親玉”だ」


レナは、目を閉じる。

そして、ゆっくりと頷いた。


レナ「完全ではないけれど……」

レナ「黒い魔力が、確かに流れています」

レナ「オーガへ、そして軍勢全体へ」


ジェイ「つまり……」

ゼム「倒せば、止まる可能性が高い」

ゼムは振り返る。

ゼム「ついてきてくれるか?」

ジェイはアッハッハと笑い出した。

ジェイ「…いいねぇ!クライマックスと行こうじゃないか!」

レナ「この聖なる力で必ずやお守りします。」

ゼムはドラゴンを見据える。

ゼム「行くぞ!!!」


---

その時。

前線で、黒いオーガの群れが暴れ始めた。

剣と魔法がぶつかり合う。

騎士がオーガの大きな手に捕まる。

騎士「や…やめてくれ!!」

バルザ「ぬぅん!!」

バルザの渾身の槍がオーガの腕をきり落とす。

オーガはうめき声を上げるが、すぐに腕が再生した。

バルザ「けが人は下がっておれ!」


一方では


アメリア「ウィンドアロー!!」

アメリアの放った矢がオーガの目を貫く。

アメリア「今です!」

騎士と傭兵が視界を失ったオーガを攻撃している。


サリイ「まとめて来なさい!」

サリイは2体のオーガから狙われながらも、華麗な身のこなしによって、オーガ達を足止め、攻撃していた。

クララとドンパは前線の後方で次の魔法の準備をしていた。

騎士団長「軍勢は居なくなったが、あのオーガの耐久力と力は異常だ。」

騎士団長は前線の向こう側を見る。

そこには、赤いローブに身を包んだ男が2人を連れてドラゴンの方へと駆けていた。

騎士団長「ゼム殿…」

騎士団長は前線を見る。

オーガに投げ飛ばされる兵達、決死の攻撃をする兵達

騎士団長

(ここで、立ち上がらなければ男ではない!!)

騎士団長「聞けい!!」

騎士団長「これより、前線は騎士団長が全ての指揮をとる!暁の傭兵団のバルザ、サリイ、ドンパ、クララ、アメリアは団長ゼムに続き、ドラゴンを討伐せよ!!」


騎士団長はバルザに近づく。

騎士団長「あとは頼みました。」

バルザ「任された。」

バルザ達5名はドラゴンへと走っていった。


---


ゼム達3名はドラゴンと対峙する。

ジェイ「デカいな」

ゼム「行くぞ!」

ゼムは全開とばかりに赤、青、黄、白、緑の光球を展開する。

ゼム「ジェイはレナの援護のもと、背後に回れ!」

レナ「ゼム!ジェイ!行くよ!」

レナの白の光球が光る!

レナ「ホーリーアクセラレーター!」

ゼムとジェイは聖なる加護を受け、ドラゴンを挟み撃ちにする。

ゼム

(ドラゴンを倒すにはまずは足元から崩す!)

ゼムの黄の光球が光る。

ゼム「マッドディメンション!」

ドラゴンの足元が泥に変化し、ドラゴンは大勢を崩す。

ジェイ「いいタイミングだ!」

ジェイの黒い光球が光る。

ジェイは一瞬にして、ドラゴンの股下を駆け抜ける。

ジェイ「…影縫い!」

ジェイの影縫いがドラゴンに炸裂する。

ジェイ「硬い鱗だな!!!」

ドラゴンは怒り狂い、尻尾を振り回す。

ジェイ「うお!?」

ゼム「ジェイ!大丈夫か!?」

ジェイ「大丈夫だ!後ろに回り込めたぜ!」

ゼム

(ジェイの影縫いでも斬れない鱗…大容量の魔法をぶつけるしかない!)

ゼム「レナ!光魔法の準備を!」

レナ「わかりました!」

レナは大きめの白の光球を作り出す。

ゼム「ジェイ!俺たちでドラゴンを引きつける!」

ドラゴンに交互に攻撃を浴びせる。

ゼム「白と緑の光球…ライトニングアロー!」

ジェイ「シャドウエッジ!!」

ドラゴンが上を向く!

ゼム「ブレスだ!」

ジェイ「伏せろ!!」

ゼムに放たれた漆黒のブレスは、辺り一面を黒い炎で焼き払った。

ゼム「ぜぇぜぇ…今だ!レナ!」

ゼムは赤い光球で作り出した炎で炎をそらしていた。

レナ「行きますよ!!」

レナ「ホーリーラ…」


次の瞬間、レナは刺されていた。

ゼム「レナーー!」

ベルモンド「よう…また会ったな」



第7章「エクリプス」


レナは、地面に膝をついていた。

肩で呼吸をしている。

生きてはいる。

だが、魔力の流れが感じられなかった。


その髪を、ベルモンドが掴んでいた。

ジェイが、一歩踏み出す。

ベルモンド「動いたら、終わりだ」


ロングソードの切っ先が、レナの喉元に触れる。

わずかに、血が滲んだ。


ジェイは、その場で止まる。

ゼム「ジェイ、危ない!」


その瞬間だった。

黒鱗のドラゴンの尻尾が、唸りを上げて振るわれる。

鈍い音がした。

ジェイは何も言わず、吹き飛ばされた。


ゼム「ジェイーー!!」

ゼムは怒りのままに行動する。

五色の光球が、ゼムの周囲に再び展開した!

赤、緑、白、青、黄。


背後から、声がした。

ヨイ「……まだ、絶望していないの?」


振り返るより早く、冷たい気配が背中に触れる。

黒の光球。


ヨイは、そこに立っていた。


ヨイ「いい加減、諦めなよ」

ヨイ「君は、もう十分やった」


---


ゼムは、光球を収めた。

ゼム「最後に……教えてくれ」

ヨイが、わずかに目を細める。

ゼム「エクリプス計画とは、何だ?」

ヨイは、楽しそうに笑った。

ヨイ「……いいだろう。土産だ」

ヨイ「特別に、教えてやるよ」

指を鳴らす。

その手に、黒水晶が現れた。

ヨイ「これが、不死の軍勢を率いていた“正体”だ」


黒水晶が、ゼムの足元に転がる。


ヨイ「生きた人間を操れる」

ヨイ「しかもね……不満が大きいほど、よく言うことを聞く」

ゼムの脳裏に、廃れた王都が浮かんだ。

ゼム「……だから、傀儡政権にした」

ゼム「民衆の不満を、意図的に増やしたんだな」

ヨイは不敵な笑みを浮かべる。

ヨイ「……ククク」

ヨイ「その通りだ」


ヨイは、誇らしげに腕を広げた。

ヨイ「全ての心を、この黒水晶に縛る」

ヨイ「それが、エクリプス計画だ」


ゼムは、乾いた笑いを漏らした。

ゼム「なんて……小さな野望だ」


ヨイ「どう言おうと構わないさ」

ベルモンド「ヨイ!やれ!」

ヨイはやれやれと頷く。

ヨイ「君も、特別に操ってあげよう」

ヨイ「君の手で、城塞都市を壊すんだ」

ゼムはニヤリと笑う。

ゼム「いいや」

ゼム「それは、できない」


ヨイ「……ほう?」


ゼムは、真っ直ぐに言った。


ゼム「俺たちは――暁の傭兵団だ」



その瞬間。

アメリア「ウィンドアローーー!!」

緑の光を纏った矢が、ヨイへと飛ぶ。

ヨイ「くっ!」


ドンパ「アースクリエイト!」

地形が、唸りを上げて変化する。


ベルモンド「なんだ!?」

足元が崩れ、ベルモンドとレナが引き離された。


戦場が、再び動き出した。



最終章「暁の傭兵団」


ゼムは一歩、前に出た。

その背後に、暁の傭兵団が揃う。

ゼムが号令を発する!

ゼム「サリイとアメリアはベルモンドを!ドラゴンはバルザとドンパ!クララはレナの治療!」

バルザ「ジェイはどうする!?」

ゼム「大丈夫さ!あいつは相棒だからな」

ゼムはヨイを見据える。

ゼム「ヨイは俺がやる!」


ドラゴンが咆哮を上げる!

ベルモンド「面白え…女2人か!半殺しにして、楽しんでやるぜ!」

ヨイがマントを翻す。

手を出して、手招きする。

ヨイ「やってみなよ…暁の軍師!」


---

ベルモンドは、嗤っていた。

ベルモンド「ははっ……逃げねぇのかよ」

ロングソードを肩に担ぎ、血に濡れた戦場を見渡す。 目の前にいるのは、女が二人。

ベルモンド「女二人で俺を止めるつもりか?」

ベルモンド「いい度胸だ。気に入ったぜ」

ベルモンドは赤の光球を展開し、剣に炎を纏わせる!

ベルモンド「さぞや、いい声で泣くんだろうな!」

サリイは長剣を構え、軽く息を吐く。 アメリアは一歩下がり、弓を引き絞った。

サリイ「アメリア、距離を保って」

アメリア「了解。風、回します」

ベルモンドが踏み込む。

一歩。 それだけで、地面が砕けた。

ベルモンド「遅ぇ!!」

剣閃が、横薙ぎに走ると同時に炎がサリイに向かう!

サリイは、髪を焦がしながらも、紙一重でかわした。

だが、空気が焼ける。 衝撃が、身体を打つ。

サリイ「……っ!」

受け身を取りながら距離を取る。 その瞬間――

アメリア「今!」

緑の光を纏った矢が、風に乗る。 ベルモンドの肩を掠めた。

ベルモンド「チッ……!」

だが、止まらない。 ベルモンドは踏み込み、剣を振り上げる。

ベルモンド「邪魔だ!!」

衝撃波が、前方一帯を薙ぎ払う。

アメリアが後退する。

アメリア「速い!」

ベルモンドは笑った。

「四肢をもいでやるよ!」

その瞬間――

サリイが、正面にいた。

サリイは剣を合わせ、鍔迫り合いになる。

ベルモンド「力比べか!?」

サリイの脳裏に浮かぶ。

ダンク『タンクはみんなを守るのが仕事ですから』

サリイはベルモンドの力を利用し、ロングソードを受け流す。

サリイ「残念」

長剣が、ベルモンドの脇腹を裂く。

だが。

ベルモンド「浅ぇ!!」

肘打ち。 サリイの身体が吹き飛ぶ。

地面を転がる。 呼吸が、一瞬止まる。

ベルモンドは剣を振り上げた。

ベルモンド「お前からだ!」

そのとき。

風が、逆巻いた。

アメリア「――テンペスト・ウィンドアロー!!」

アメリアの矢が、真正面から放たれる。 しかも、一本じゃない。

二本。 三本。

三本が螺旋状に放たれる!

ベルモンドは舌打ちした。

「小細工が!!」

剣で叩き落とす。 だが――一本、逃した。

矢が、太腿を貫く。

「……あ?」

ベルモンドの動きが、一瞬止まった。

その一瞬を―― サリイは、見逃さない。

(今だ)

全身の力を、足に込める。 地面を蹴る。

「これで……終わりよ!」

長剣が、喉元へ。

だが――

ベルモンドは、笑った。

「甘ぇんだよォ!!」

剣が、振り下ろされる。

だが。

アメリア「――風よ!!」

アメリアが、叫ぶ。

風が、爆ぜた。

ベルモンドの身体が、わずかに浮く。

その瞬間。

サリイの刃が、喉を裂いた。



音は、なかった。

ベルモンドの口が、動く。

「……ああ…もったいねぇ…」

巨体が、崩れ落ちる。

力でねじ伏せてきた男は、 力で倒れた。


---



黒い鱗のドラゴンが、頭をもたげた。

夜空を覆うほどの巨体。

その胸の奥で、黒い魔力が脈打っている。

ドンパ「……化け物じゃの」

バルザは槍を構え、一歩前に出た。

バルザ「竜だろうと、魔物だろうと同じじゃ」 バルザ「――止めねば、後ろの民が死ぬ」

ドラゴンが咆哮を上げる。

音圧が、地面を抉った。

ドンパ「来るぞぉ!!」

次の瞬間、黒いブレスが吐き出される。

「伏せろぉ!!」

ドンパが地面を叩いた。

ドンパ「アース・バルク!!」

土壁が隆起し、ブレスを受け止める。

だが――

バキバキと、土が溶け始めた。

ドンパ「くっ……威力が桁違いじゃ!!」

バルザ「構わん、耐えろ!」

バルザは壁を蹴り、跳躍する。

ドラゴンの前脚へ――一直線。

バルザ「ぬぉおおお!!」

渾身の一撃。

槍が、黒い鱗に突き立つ。

だが。

ガギン、と金属音。

刃は、弾かれた。

バルザ「……硬いの」

ドラゴンの前脚が振り下ろされる。

ドンパ「バルザァ!!」

ドンパが即座に詠唱する。

ドンパ「アース・チェイン!!」

地面から岩の鎖が伸び、脚を絡め取る。

完全ではない。

だが――一瞬、止まる。

その一瞬で、十分だった。

バルザ「感謝する!」

バルザは槍を反転させ、関節部へ叩き込む。

ギシリ、と嫌な音。

鱗の隙間に、刃が食い込んだ。

ドラゴンが咆哮する。

ドンパ「効いとる!!」

ドンパ「だが、長くはもたん!!」

ドラゴンの尾が振るわれる。

大地が裂け、衝撃が走る。

ドンパは吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。

ドンパ「……がはっ……」

それでも、笑う。

ドンパ「まだじゃ……まだ、終わっとらん……!」

震える手で、地面に触れる。

ドンパ「この老骨、まだ使えるわい……!」

地面が、再び唸る。

ドラゴンの足元が沈む。

バルザ(……命を削る気か)

バルザは、深く息を吸った。

バルザ「ならば――」

バルザ「ワシも、全てを出そう」

槍を構え、真正面から駆ける。

ドラゴンが、再びブレスを溜める。

ドンパ「来るぞぉ!!」

バルザ「構わん!!」

バルザは、真正面から突っ込んだ。

ブレスが放たれる。

だが――

ドンパ「今じゃ!!」

地面が割れ、バルザの足元が跳ね上がる。

バルザは、その反動を使い、跳んだ。

ブレスの上を越え、

ドラゴンの胸元へ。

バルザ「――暁の名に懸けて!!」

全力の一撃。

槍が、黒い魔力の中心を貫く。


渾身の跳躍。


槍先が、一直線に――

ドラゴンの眉間へ。

ズンッ。

刃は、確かに突き立った。

だが――

ドラゴンは、まだ動く。

首が、わずかに持ち上がる。

ドンパ「……くそっ!」

ドンパは歯を食いしばった。

ドンパ「あと一歩が足らん!!」

その瞬間。

「――あら?」

場違いなほど、軽やかな声。

振り向くと、クララが立っていた。

その隣には、膝をついていたはずのレナ。

クララ「手を貸すわよ♡」

レナ「クララさん……!」

二人の前に、光が生まれる。

白と、淡い金。

二つの光球が、ゆっくりと重なり合う。

空気が、震えた。

クララ・レナ「――トール・ハンマー!!!」

雷鳴。

光が、落ちる。

天から振り下ろされた雷鎚のような一撃が、

バルザの槍を導火線にして、突き刺さる。

轟音。

光が、炸裂する。

ドラゴンは、悲鳴を上げた。

それは咆哮ではない。

断末魔だった。

巨体が、大地に崩れ落ちる。

黒い魔力が、霧のように散っていく。


静寂。


誰も、すぐには動けなかった。

バルザは、地面に横たわり、息を吐いた。

バルザ「……もう……動けんな……」

その言葉と同時に、ドンパが駆け寄る。

ドンパ「無茶しおって……」

ドンパ「だが、ようやったわ」

クララは肩をすくめる。

クララ「ふふ。年寄りばっかりに任せてられないでしょ?」

レナは、静かに胸に手を当てていた。

レナ「……終わりましたね」

遠くで、夜が白み始めていた。

暁は――

確かに、そこまで来ていた。


---


黒い魔力が、地を這う。

ヨイの周囲に、無数の黒の光球が展開されていた。

空気が歪み、足元の大地が軋む。

ヨイ「……まだ立つか」

ヨイ「君は、もう限界だろう?」

ゼムは息を整えながら、立っていた。

膝は震え、額から血が流れている。

ゼム「……ああ」

ゼム「正直、きつい」

ゼムは光球を展開する。

赤、青、黄、緑、白

ヨイは笑った。

ヨイ「だろうね」

ヨイ「君は、ここまでだ」

ヨイの手が振り下ろされる。

黒の奔流が、ゼムを呑み込もうとする。

ゼムは、光球を展開する。

ゼムは白の光球を反応させる。

ゼム「フラッシュ!」

光が、弾けた。

ヨイ「また…それかい」

ゼムは赤、黄、緑の光球を合成する。

ヨイ「三属性の合成!?」

ゼム「フレア・トルネード!!!」

ゼムの手から炎の螺旋が発射される。

ヨイ「こんなもの…」

ヨイは泥に足を取られていた。

ヨイ「しまった!?」


衝撃。


ゼムの身体が吹き飛び、地面を転がる。


砂埃から服がボロボロのヨイが現れる。

ヨイ「よくも…」

ヨイの背後の黒の光球が光る。

ヨイ「ダークレーザー!!」

無数の漆黒の光線が、雨のように降り注いだ。

ゼム「……っ!」

避けきれない。

一本が、ゼムの脚を貫いた。

次の一本が、肩を抉り――

ゼムは膝をついた。

地面に手をつく。血が落ちる。


ヨイは、ゆっくりと歩み寄ってくる。

ヨイ「……終わりだ」

勝利を、疑っていない声。

ゼムは、俯いたまま笑った。

ゼム「……だから」

ヨイ「?」

ゼムは、顔を上げる。

その目に、焦りはなかった。

ゼム「だから……遅いって言ってるんだ」

一瞬。

ヨイの背後で、影が動いた。

――ズン。

鈍い音。

ヨイの胸から、刃が突き出る。

ヨイ「……な……?」

短剣。

黒くも、鈍くもない。

ただの、使い込まれた刃。

ゼム「……相棒」

背後に立っていたのは、

血に染まった包帯姿の男。

ジェイ「遅刻して悪いな」

ヨイの身体が、崩れる。

ヨイ「な……ぜ…?」

ジェイ「吹き飛ばされたのは俺の影さ」

ゼム「その後はずっと俺の影に隠れてたのさ」


ゼムがジェイに抱えられて立ち上がる。

ヨイを見下ろす。

ヨイ「ちくしょう……」

ヨイ「ちくしょう!ちくしょう!!」

地面に転がり、のた打ち回る。

ヨイ「なぜだ!」

ヨイ「なぜ俺が負ける!!」

ヨイ「全て……全て勝っていたはずだ!!」


ヨイを見下ろすその表情に、怒りはない。

侮蔑も、勝ち誇りも。

あるのは――

ただ、憐れみ。


ゼム「それはな」

ゼムは静かに言った。

ゼム「お前には、永遠に解けない謎だ」


ヨイ「ちくしょう……ちくしょう……」

その声は、次第に弱くなる。

空が、白み始めていた。

夜明け。

ヨイは、顔を上げる。

朝日が、地平線から差し込む。

ヨイ「……光は……嫌だ……」

ヨイ「光は……!!」

悲鳴とも、呪詛ともつかない声。

ヨイの身体が、朝日に照らされる。

黒い魔力が、霧のように剥がれ落ちる。

そして――

消えた。

何も、残さず。



ゼムは、空を見上げた。

ジェイが、肩をすくめる。

ジェイ「……終わったな」

ゼムは、小さく笑った。

ゼム「ああ」


ゼム「……夜明けだ」

朝日は、確かに昇っていた。



---



エクリプスとの戦いから一月が立った。

城塞都市は復興し、王都の復興に出発するところだった。

ゼムの元にリシェル王女が駆け寄る。

リシェル「何から何まで、暁の傭兵団にはお世話になります。」

ゼムは膝をつく。

ゼム「勿体ない御言葉です。」


リシェル王女は言いにくそうな表情で話す。

リシェル「あの…王都の復興が終われば、暁の傭兵団を私の親衛隊として支えてもらいたいです…」


ゼムは目を丸くする。

ゼムはしばらく考え込む。

ゼム「我々は、騎士団では手の届かない辺境の村を助けるために組織されました。大きな組織とはなりましたが、その理念は変わっておりませぬ。」


リシェルは残念そうな顔をする。

リシェル「なら、わが国が再び窮地の場合は助けてくれますか?」


ゼムは立ち上がり、後ろを見る。暁の傭兵団のみんなの顔を見る。


マントを翻す。

ゼム「それが暁の傭兵団ですから」


しばしの沈黙。


そして――


バルザ「出発!」


赤い旗を掲げて進む。赤い旗は自由の象徴。朝日模様のシンボルはみんなの希望


ゼム(ローエン、俺はみんなと共に世界を歩むよ。そして、たくさんのことを知る。)


朝日に照らされ、赤い旗が風にはためいた。



終わり


◆サリイ・アイバーン


金髪の女騎士。身長は155センチ前後。剣術に自身を持っており、実力は高い。性格は曲がったことが大嫌いで猪突猛進タイプ。




◆クララ・アルセーヌ


シスターとしての実力はトップクラスで白と青の光球が得意。体つきは非常によく、豊満な胸を強調している。シスターにもかかわらず信者を誘惑するなどが問題視され、教会から破門されたところを傭兵団に拾われる。


傭兵団での役割は、後方支援及び回復を担当




◆トム・ポート


異国を渡り歩く商人。魔物に襲われているところをゼムに助けられた。ゼムとジェイの傭兵団に共感し、出資する。傭兵団での役割は、非戦闘員ながら兵站及び会計を担当




◆ ドンパ・パンドン


ドワーフの鍛冶職人。かつて鉄の傭兵団に属していたが、理想を求めて暁へ加入。罠や武器の開発、大斧戦闘を得意とする。




◆ バルザ・ドーン


元・城塞都市ガルタンの騎士団長候補であり、槍術の達人。沈着冷静で戦場全体を見渡せる判断力を持ち、ゼムの作戦遂行において頼れる実戦指揮官。




◆アメリア・ドーン


バルザの娘。父譲りの戦闘センスで緑の光球を使用した弓による狙撃が得意

◆ダンク・ダンストン


 暁の傭兵団の気弱な巨漢。傭兵団での役割は皆の盾となり、前線を維持すること。王国の騒乱の際、ゼム達を逃がすため、自らを盾として敵の攻撃を防ぎ殉職した。



【敵の勢力】


◯ ベルモンド


 エクリプスの団長。大柄の男で長剣を得意としており、赤の光球からの火の魔法が得意


◯ ヨイ


 通称、宵の軍師。エクリプスに所属している。ゼムに一目置いている。アイリス王国の傀儡政権の樹立のため暗躍した。

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