第4部「鉄の足音」
これは、幼い頃に森で拾われたギム・マイスターが人との出会いを通じて成長する物語
前回までのあらすじ
エドガー・フェルディナント“暁の軍師”の後継者として、世界を導くために、ローレンから森を出て世界を見るように言われた主人公ゼム。ゼムは城塞都市で暁の傭兵団を結成。ようやく訪れた依頼に意気揚々と飛びつく。訪れたフリード村は魔物襲撃で悩まされていた。調査や聞き込みにより、魔物襲撃が村長達の自作自演であり、標的が自分達暁の傭兵団と分かると、その罠を利用し、背後にいた鉄の傭兵団を撃破した。村には平和が訪れ、ゼム達は城塞都市に戻り宴を実施した。ギルド長のゴルドーからの言葉から、まだまだ波乱は続きそうである。
ここまでの登場人物
“暁の傭兵団”
◯ ゼム・マイスター
本作の主人公。幼い時に森でローレンに拾われ賢者の弟子として修行に励む。ローレンから渡された“世界の兵法”という書物などを読み、知識は豊富
魔法は黒の光球以外は生み出せるが、威力については今一つ
◯ ジェイコブ(通称ジェイ)
黒の光球の使い手であり、自身を影にしたり、闇の魔法が得意。陽気で軽薄な口調が目立つがかなりの観察家。
傭兵団では斥候、諜報及び裏工作を担当
◯ サリイ・アイバーン
金髪の女騎士。身長は155センチ前後。剣術に自身を持っており、実力は高い。性格は曲がったことが大嫌いで猪突猛進タイプ。乗馬も得意。前回の作戦で失敗し反省中。
傭兵団では、中衛を担当
◯ ダンク・ダンストン
身長は約2m前後で恰幅がよく、巨漢。大きな大盾を装備して敵の攻撃を受けながら、その大盾を振り回して敵を圧倒する。性格は臆病で謙虚。自信を得るため傭兵団に参加する。
傭兵団での役割は前衛での敵の阻止及び拘束
◯ クララ・アルセーヌ
シスターとしての実力はトップクラスで白と青の光球が得意。体つきは非常によく、豊満な胸を強調している。シスターにもかかわらず信者を誘惑するなどが問題視され、教会から破門されたところを傭兵団に拾われる。
傭兵団での役割は、後方支援及び回復を担当
◯ トム・ポート
異国を渡り歩く商人。魔物に襲われているところをゼムに助けられた。ゼムとジェイの傭兵団に共感し、出資する。
傭兵団での役割は、非戦闘員ながら兵站及び会計を担当
◯ ドンパ・パンドン
ドワーフ。約120センチくらいの小柄だが、身の丈のある大斧を得物としている。鍛冶の腕も確かである。
傭兵団では、武器の手入れ、開発、作成、戦闘では前衛又は工作員を担当
“その他の登場人物”
◯ リサ
宿屋の女将、恰幅の良い女性。陽気で頼りがいがある。
◯ ゴルドー
城塞都市ガルタンの冒険者ギルド長。大剣を得物としている。
◯ ソルティ
冒険者ギルドの無表情で受け答えをする受付嬢。密かにファンが居るとか居ないとか
◯ サンドレイク・ガルタン
城塞都市ガルタンの領主。サリイとダンクを紹介した。
“各種組織”
◯暁の傭兵団
ゼムが団長を務める新しく発足された傭兵団。民衆の救い及び幸せを守ることを目的に結成
◯鉄の傭兵団
フリード村で物資の横領や人身売買など黒い噂が絶えない傭兵団。ある領主との癒着があるとされるが細部は不明
第1章「悩み事」
鉄の傭兵団を撃破して、城塞都市に戻ってきた暁の傭兵団だが、そのおかげもあってか連日、拠点にしている宿屋にたくさん人が来る有様だった。
ゼム「このままでは、宿屋に迷惑をかけてしまうことになる…」
サラ「あら?私は賑やかで良いと思うけど」
ゼム「いや、女将さんがよくても、この間、衛兵さんに言われたんだよ。暁の傭兵団目当てにここに来る人が多いから、対応するのが大変だってね」
サラ「そうなのかい…」
ゼム「……暁の傭兵団はこれからもっと大きくなる組織だ。そのためにも、どちらにしろ俺達の拠点が必要だ。」
ジェイ「賛成!」
トム「となりますと…どこがいいのでしょうか?」
ゼム「城塞都市の中では、いずれ手狭になるだろう。城塞都市の外で開拓した方がいいだろう。」
ドンパ「開拓か!そりゃあええ!自分達の拠点を自負達で作るか!ワクワクするのう」
ゼム「というわけで、皆には拠点候補地を捜してもらう!」
ゼムが出した拠点の条件
◯水場があること
◯開拓すれば、広い地域
◯城塞都市より15キロ以内(馬車で1時間以内)
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数日後…
ドンパ「ゼム!良いところが見つかったぜ!」
ゼム「どんなところだ?」
ドンパ「城塞都市の北に約10キロぐらい行った所に廃村になった場所だ。家屋も古いが残っているし、川も近くに流れている。井戸はまだ調べてない。」
ゼム「なるほど…廃村か。行ってみるか!」
暁の傭兵団はドンパの案内でその廃村に向かった。
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城塞都市から北へ約10キロくらいの位置に確かに廃村はあった。村の入り口のゲートは壊れ、ゲートからは1本の大きな道があり途中で1本の道が交差している。交差点には井戸がある。村のゲートは東にあり、北には教会らしき建物、西には小川が流れ小川の向こうは森になっている。南には畑の跡がみてとれ、荒れ果てていた。
ゼム「条件が揃いすぎてて怖いぐらいだ。」
ドンパ「どうだ!良いところだろう?」
トム「城塞都市との立地も良い、店を開くにも最適ですな!」
ダンク「畑は整備したら使えそうですね…」
サリイ「小川近くに広い空き地があるから、訓練場も作れそう!」
クララ「教会も掃除すれば使えそうですねぇ」
ジェイ「………」
ゼムはジェイがある1点を見て考え込んでいるのを見た。
ゼム「ジェイ?どうかしたか?」
ジェイ「いやぁ?なんでこんなにも立地が良いのに廃村になったんだろうなって」
ドンパ「とりあえず、中をみてみようぜ。」
ドンパを先頭に傭兵団は村の中へ入っていく。
ジェイ「ゼム!こっちを見てみろ!」
ゼム「これは…血の跡?まだ新しいな…」
ジェイ「誰か居るぞ…?」
シュー!
その瞬間、ゼムはすぐに振り向き、クララに向かってきた矢をタクトで弾いた。
ゼム「何者だ!」
???「名乗る名前などない!」
長身の男が槍を片手に突っ込んできていた。ダンクが盾で受けるが、態勢が悪かったのか崩れてしまう。そこにサリイがニタリと笑い剣を抜いて応戦する。
長身の男はサリイの剣を槍で器用に捌いて、足を払って転ばせる。
???「まだまだ荒いな」
ドンパ「うおぉ!」
ドンパの大斧が空を切り、地面にぶつかる。
長身の男はサリイにトドメが刺せず、後ろに下がる。そこに若い女性が弓をもって現れる。
ゼム「君達は何者だ!」
ゼムを先頭にジェイが隣で短剣を構えている。
???「ふん!どうせ噂に惑わされてこの村にある宝物を狙いに来たのだろう。ここは私達の故郷だ!指1本触れさせぬ!」
若い女性も弓を構えて、背中には緑の光球が3つでている。
ゼム「待つんだ!誤解をしている!話を聞いてくれ!」
ジェイがゼムの前に手を出す。
ジェイ「ゼム、やるしかないよ。なんとか無力化させないと…」
ゼム「そう…だな…」
ゼムは覚悟を決めると、青、赤、緑、黄、白の光球を同時に発生させる。
長身の男と若い女性が目を見開く。
長身の男「なんという魔力制御力だ…心してかかるぞ!まずはあの光球の男を集中して叩く!」
若い女性「わかりました…射ちます!」
若い女性のつがえた3つの矢のそれぞれに緑の光球が混ぜ合わさる。
若い女性「ハリケーンアロー!」。
風を巻き上げる3本の矢がまるで竜巻のように空気を捻りながら迫ってきた。
それに続くかのように、槍を突き出して長身の男が突っ込んでくる。
ゼム『あの矢を避ければ、槍にやられる…なら避けなければいい!』
ゼムは緑と赤の光球を融合させた!
ゼム「ライジングエアー!」
ゼムを中心に上昇気流が発生する。クララのスカートがめくれるが、頑張って抑えている。
クララ「覚えておきなさいね!」
その上昇気流に巻き込まれ、矢は上方に逸れていった。
若い女性「ああ!」
長身の男「大丈夫だ!あとは俺がやる!」
長身の男が突き出した槍を振り上げ、ゼムに振り下ろそうとする。
ジェイ「ゼム!」
ゼムはタクトを構え、黄色の光球を融合させる。
ゼム「アイアン・タクト!」
タクトが黒色に変化し、槍を受け止める。
長身の男「なに!?どれだけ硬いのだ!」
あまりの硬さに槍が跳ね返される。
そのスキを捉え、緑と白の光球が融合する。
ゼム「ライトニングハンマー!」
ゼムの足に雷が付与され、長身の男の腹にクリーンヒットする。長身の男は吹き飛ばされ、家屋の壁を破壊した。
若い女性「うそ…?」
若い女性の背後にはジェイが短剣を突き立てて立っていた。
ジェイ「動くな…動けばやる」
若い女性は目を見開きながら、弓をその場に落とした。
壊れた家屋から長身の男がお腹を抑えながらでてくる。
長身の男「ちくしょう…頼む、娘だけは見逃してやってくれ…降参だ…」
ゼム「ジェイ!離してやれ!」
ジェイ「はいよー…」
ジェイは短剣を引いて、若い女性から距離をとる。
若い女性は安心したのか、腰が抜けてしまっている。
ゼムは長身の男に近付いて、手を差し出す。
ゼム「俺たちはここに宝物を探しに来たんじゃない。この村を俺達傭兵団の拠点として再生しようとしているだけだ。」
長身の男「そうか…その話、詳しく聞かせてもらっていいか?」
長身の男は差し出された手を掴み、立ち上がった。
長身の男「あっちに俺達の家がある。そちらで話をしよう」
長身の男は若い女性の肩を取って、歩いて行った。
ゼム「ふぅ…なんとかなったぁ〜…」
ドンパ「流石だな大将」
トム「旦那様ご無事で何よりです。」
ジェイ「相棒流石!」
クララ「ちょっと!スカートめくれちゃったじゃない!」
サリイ「キワドイ…」
ダンク「ボクハナニモミテマセン」
ゼム「さて…お招きに預かろうか」
ゼム達暁の傭兵団は長身の男性の向かった家に歩いて行った。
その家は外はオンボロだが、中はよく掃除がされていた。
長身の男性「先程は悪かった。最近、村を争うとする奴らが多くてな…俺の名前はバルザ・ドーン。こっちは娘のアメリア・ドーンだ。」
アメリアは軽く会釈する。
バルザ「この村はつい半年前までは賑わっていたのだが、ある奴らのせいで廃村に追い込まれてしまった。」
ゼムは真剣な顔をして話す。
ゼム「鉄の傭兵団ですね?」
バルザだけでなく、他の団員も目を見開く。
バルザ「なぜ、知っている?」
ゼム「以前、フリード村という所でも鉄の傭兵団が搾取していたんです。私はこれを間接侵略の一種だと思ってます。」
ダンク「間接侵略ってなんですか?」
ゼム「間接侵略とは、直接的な攻撃ではないが、内政や経済に干渉することにより、国家を弱らせていく手口だ。」
ジェイ「なるほど…城塞都市から立地の良いこの村を無くせば、補給ルートが限られる。フリード村も同じ理由か…」
ドンパ「………知らなくてすまなかった」
バルザ「つまりは、この村を復活させれば良いということか?」
トム「1から村を作るのは困難でしょう。一度人が離れた村です。鉄の傭兵団が変な噂を流していてもおかしくはないでしょう。」
サリイは難しい話になってきたので、外に出て行った。
ダンク「でも、拠点にすることはできるってことですね?」
ゼム「そのとおり。俺達は鉄の傭兵団との因縁がある。ここを拠点化して、少しでも抗ってみよう。」
バルザ「ならば、私とアメリアを暁の傭兵団に加えてくれないか?私は引退した身だが、アイリス王国で部隊長までした男だ。アメリアは幼少期から弓については教えている。足手まといにはならないはずだ!」
ゼム「もちろん!あなたのような戦争の経験者を私は望んでいたんです!アメリアもよろしく!」
アメリアは顔を赤くして小さい声を出した。
アメリア「よろしく…おねがいします…」
ゼムが笑顔で返すとアメリアは顔を真っ赤にして顔を逸らした。
クララ『あらあら♡初々しいわね♡』
ジェイ『やっぱり天然たらしだわ』
暁の傭兵団は拠点となる廃村を手に入れた。
第2章「召集令状」
ゼム達が暁の傭兵団の拠点をこの廃村に決めて整備し始めて1ヶ月が立った。
その間、トムは物資を調達し、ドンパの指揮のもと村の整備が着々と進んでいく。
村ではなく拠点なので、治水して、拠点の外周に堀も作った。全部、ゼムが魔法を使ってやったので、毎日クタクタだった。
クララは教会の聖母像を綺麗にした。若干変化してクララに似てるのは見て見ぬ振りをした。
サリイは訓練場の整備を真っ先に実施して、見事な訓練場を作り上げた。
ダンクとバルザは力仕事をしている。
ジェイはよくサボるが、ドンパに怒られながらやっている。
アメリアはゼムが疲れると水やタオルを差し出すなどをしたいた。そして、それをジェイやクララからいじられていた。
そして、廃村に到着してから1ヶ月と10日で概成した。
ゼム「ようやく出来た!」
ジェイ「いやー仕事したぜぇー」
ドンパ「ジェイ!お前はサボりすぎだ!」
ダンク「少し筋肉が増えた気がします。」
バルザ「村ではなくなったが…これもこれで良いものだ。」
アメリア「これが…私達の拠点」
クララ「拠点に相応しい聖母様がいる教会になったわね♡」
サリイ「聖母様って谷間見せてたっけ?」
トム「ふぅ…何とか予算ギリギリで出来ました。」
ジェイ「ところで、この拠点の名前は?」
ゼム「え?拠点じゃダメなのか?」
暁の傭兵団「ダメでしょ」
ゼム「え?そうなの?」
クララ「また“暁の〜”とかはやめてね♡」
ゼム「まじかぁ…うーん…」
少しの間、沈黙が流れる。
サリイ「はい!アルティメットフロンティアベースキャンプ!」
全員「却下!」
ゼムは閃いたように話す
ゼム「ルミレスト…ルミは光、レストは休む」
ジェイ「いい名前だ」
クララ「賛成よ♡」
ドンパ「いい拠点だな」
トム「それでは、城塞都市にその名前で申請しますね!」
暁の傭兵団の新拠点ルミレストがここに誕生した。
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ルミレスト発足から数週間が立った。
その間にゼムとアメリアは魔法の修行、クララはお祈り、ドンパは新しい鍛冶場で武器の製作と兵器と罠の開発、ダンクとサリイはバルザと連日特訓の日々、トムは商人として資金集めを実施していた。
そこに、城塞都市から1人の衛兵が馬に乗ってこっちにやってきていた。
衛兵「この拠点の主は暁の傭兵団で間違いないか!」
ゼムが前に出てくる。
ゼム「はい!私が暁の傭兵団団長のゼムです。」
衛兵は馬からおり、書状を開き、読み始めた。
衛兵「暁の傭兵団 殿!この度、ランド伯爵領より我がガルタン領への宣戦布告が成された。我が国に拠点を構えていることに縁を感じ、今回の戦争への参加を要請するものである。良い返答をお待ちする。ガルタン領領主 サンドレイク・ガルタン」
ゼム「承りました。すぐに、領主邸へと向かいます。」
衛兵「了解した。この書状を持って参られるがよい」
そう言うと、衛兵は馬に乗り、ルミレストを後にした。
ダンク「あわわ…」
サリイ「戦争ね!ぶった斬ってあげるわ!」
それぞれが戦争について話す中ゼムが話始める。
ゼム「戦争か…ジェイとバルザは付いてきてくれ。3人で行く。」
ジェイ「あいよ!」
バルザ「承った」
ゼムとジェイとバルザは、馬に乗って城塞都市の領主邸へと向かった。
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馬を走らせ、領主邸についた。
領主邸の庭には、他にも呼ばれたと思われる傭兵団が数組来ていた。
ゼムがバルザとジェイを連れて現れると、他の傭兵団がこちらを見てくる。
他の傭兵団員「誰だあの若造は?」「知らねぇのか?あの暁だよ。鉄の傭兵団を撃退したって噂の」「まだ若いじゃねえか」
バルザが鋭い眼光で周りを威嚇する。
ゼム「バルザ、気にすることはない。」
ジェイ「そうだぜ?若いことを妬んでるだけさ」
バルザ「うむ…しかし、万が一がある警戒は怠らないようにしよう。」
しばらくすると、領主邸の2回のベランダに領主サンドレイクが現れた。
サンドレイク「聞け!東のランド伯爵領から宣戦布告があった!内容は、不当に捕縛された領民を解放すべしという内容だ。この不当に捕縛された領民というのは、3カ月前に暁の傭兵団が捕らえた鉄の傭兵団のことである!鉄の傭兵団はフリード村を不当に搾取し、我が領民の平和を乱していた悪党である。私はこの要求を断固拒否する構えだ!悪党を正当化するランド伯爵を許してはおけない!」
傭兵団は全員が傾聴している。
サンドレイク「そして、この戦争で一番功績があった傭兵団には白金貨を10枚与えよう!協力してくれる意思があるならば、団長は領主邸の中に入ってくれ」
サンドレイクはそう言うと、領主邸の中に入っていった。
その声を聞いた他の傭兵団の団長達が次々と入って行く。
ジェイ「どうする?」
ゼム「鉄の傭兵団とつながりがある以上、ケジメをつけないとな…」
ゼムは単独で領主邸へと入って行った。
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ゼムが領主邸の中に入ると部屋に案内された。
そこには領主サンドレイク、他の傭兵団の団長が3人居た。
すると、3人の団長が自己紹介をしてきた。
ケビン「僕は飛翔の傭兵団の団長のケビンさ!普段はワイバーンとかで流通だったり護衛をしたりしてるよ。」
グラス「私は乙女の傭兵団のグラスよ。よろしくね坊や。私達は回復をメインとする傭兵団よ。」
サバト「俺の名前はサバト…力の有り余ってる奴らばかりを率いている。暁の団長…よろしくな」
ケビンは若い男性でパイロットスーツのような出で立ちをしている。グラスは正に妖艶が似合う経験豊富な女性、サバトは屈強な傭兵という感じだった。
ゼム「俺はゼム。最近出来た暁の傭兵団を率いている。鉄の傭兵団とは因縁があるから志願した。」
サンドレイクが口を開く。
サンドレイク「これで全てか…集まってくれてありがとう。この傭兵団と我が軍を持ってランド伯爵と戦争をする。地図を!」
衛兵が目の前の大テーブルに地図を広げて、兵とか軍を模した置物を置いていく。
ガルタン領対ランド伯爵領の戦争に巻き込まれようとしていた。
第3章「作戦会議」
地図を囲んで地図の正面に領主サンドレイクが座し、その両隣に宰相らしき人、騎士団長、そこから、サバト、グラス、ケビン、そして一番末席にゼムが居る。
すると、参謀らしき人が、司会をして、現在の相手の伯爵領の動きについて話始める。
そして、誰もが参謀が準備した地図をみて沈黙していた。敵の領地から城塞都市に1本の赤い線と矢印がつながっている。まるで、敵の攻撃が城塞都市を破壊しようと伸びてきているようだった。
参謀「それでは…説明致します。現在、ランド伯爵領は宣戦布告の後、各隷下の領地からの援軍を集め部隊を再編成しております。再編成の完了する時期は短く見積もっても6日であります。」
サンドレイク「ふむ…その主力の推定戦力は?」
参謀「………およそ1万ぐらいであると認識しております。」
1万の数字が出たとき、確かに作戦会議場がざわついた。
騎士団長「静粛に…」「それで、敵の出方はどんな感じだ?」
参謀「はい…説明を続けます。ランド伯爵領は城塞都市に主力を投入するため、約100名前後の軍団を先に行かせ、敵の主力の攻撃の足がかりを構築しようとしております。そして、その足がかりを作る部隊は鉄の傭兵団、約3日後には、動き出すとのことです。」
サンドレイク「うむ…相手の動きはわかった。我の作戦は?騎士団長…」
騎士団長「はい…我々の総戦力は約5000人、編成するには7日はかかります。よって、急いで向かうよりも城塞都市にて防衛する方がよいと考えます。」
サンドレイク「そうか…無駄に攻めるよりも守りを選ぶべきか…」
グラス「でもそれじゃあ守りも固まらないうちに攻め込まれることにならないかい?」
騎士団長「それは…少しは前に出て戦えば1日ぐらいは稼げるだろう。」
サバト「それをやるのは俺と暁の傭兵団ってことか?バカバカしい。死ねと言ってるようなものだ…」
騎士団長「貴様達、傭兵は我々市民のために戦い、死ぬことが本望だろうが!?」
サバト「死ぬ戦と勝つための戦は違う。」
騎士団長「なら、籠城以外の案が出せるというのか!?」
サバト「……」
ゼム『みんな…ごめんな…』
ゼム「私から意見があります。」
騎士団長「ほらみろ!何もないではな…えぇ?」
ゼム「…いやあります。まずは前提を…」
サンドレイク領主がニヤリと笑っている。
サンドレイク「ゼム、申してみよ。」
ゼム「ごほん…説明します。そもそも、籠城という前提が間違っています。籠城というのは、増援があるのをわかった上で防衛に徹することです。この場合は王国軍ですが…領主様?王国軍からの増援は?」
サンドレイク「ない…あくまで内輪揉めだから、自分達で対処せよ。とのことだ。」
ゼム「であるならば、我々は城塞都市の前方の草原で敵を撃滅しなければならないということです。それに7日間が必要なら、どこかで日数を稼ぐ必要がある。」
グラスはやるじゃない坊やという顔をしている。
サバトは目を瞑り、静かに聞いている。
ゼム「参謀さん…敵の進軍経路は?」
参謀「あ…えっと…街道沿いに進んでくる可能性があります。主な要衝は、ランド伯爵領から広がるランドリース平原、途中の山脈を超えるランガン渓谷、そして、城塞都市の前に広がるガルター平原です。」
ゼム「ケビンさん!飛竜便で暁の傭兵団の10名と3日分の物資ならどれくらいで渓谷まで運べますか?」
ケビン「10名とその物資なら1日と言わず、半日で行けるぜ。」
ゼム「ありがとうございます。ならば、我が暁の傭兵団と城塞都市の兵を30名程頂ければ、ランガン渓谷にて鉄の傭兵団を撃破し、そのあとの主力を2日間足止めして見せましょう。」
サンドレイク「そんなことが可能なのか…?」
騎士団長「バカバカしい!それこそ死に行くようなものだ!」
サバト「それは違う。この小僧は、足止めすると言ったんだ。殲滅するのと足止めでは戦の意味合いが全然違う。小僧…我が傭兵団も協力するが…どうする?」
ゼム「サバトさん…ありがとうございます。サバトさんの傭兵団はここに残って、私達が失敗したときの尻拭いをしてくださればと思います。」
サバト「承知した…後ろは任しておけ…」
サンドレイク「任してよいのか?」
ゼム「お任せください。寡兵を持って大軍を制す戦いをお見せしましょう。」
サンドレイク「よしわかった!」「騎士団長は、騎士団を指揮して、城塞都市前の平原で決戦ができるよう準備せよ。サバトの傭兵団も共に準備。乙女の傭兵団は救護班を編成。飛翔の傭兵団は暁の傭兵団に協力、各地への輸送任務を徹底せよ。」
「そして…暁の傭兵団は兵30名を与え、ランガン渓谷での鉄の傭兵団の撃破及び主力の2日間の足止めを命ずる。」
会議場に居た皆が頭を下げ、その号令に対し了解の返事をした。
ゼムは会議場を後にすると、ジェイとバルザが居た。
ジェイ「全部影の中で聞いてたぞ。結構見せ場ありそうじゃねぇか」
バルザ「うむ…撃破と足止め…武者震いがするわい」
そこに騎士団長がやってくる。
騎士団長「ゼム…すまぬな…若いのに任せてしまって」
ゼム「そんなことは…鉄の傭兵団は暁の傭兵団でぶっ潰すつもりだったのでついでですよ。」
騎士団長「そうか…ん?バルザじゃないか!久しいな」
バルザ「おお…お前も偉くなったもんだ…」
騎士団長「ふん…お前がやるはずだった騎士団長を貰っただけだ…ちょうどいい以前のお前の部下を中心に30名は編成しよう。明日の朝にそちらの拠点に行かせるとしよう。」
バルザ「それはありがたい!あやつらが居ればこの戦は勝ったようなもんだな!ガハハ!」
バルザと騎士団長が陽気に喋ってるところにケビンがやってくる。
ケビン「よう!大変になったな!向こうへの輸送は俺達に任せておけ!明日の朝にそっちの拠点でいいか?」
ゼム「ああ…それで頼むよ。」
ゼム「さあ…これから忙しくなるぞ…」
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ゼム、バルザ、ジェイはルミレストに戻ってきた。そこでゼムから戦争に参加することになり、ランガン渓谷に行くことを話した。
トム「至急、物資を準備致します!明日の明朝までに必ずやりますぞ!」
ドンパ「ガハハ!最高じゃねえか!開発してた兵器が存分に使えるぜ!」
クララ「あらら…怪我をしたら私に言ってくださいねー」
サリイ「100人対10人なら1人当たり20人やればいいですね!」
ダンク「それだとオーバーキル…」
ゼム「よし、今から役割分担をするぞ。ドンパとサリイ、バルザは渓谷で使えそうな兵器と罠を厳選してくれ。クララとトム、ダンク、アメリアは物資の調達だ。そして、ジェイ!」
ジェイ「うぉ!遊んでていのか?」
ゼム「違う、ケビンの傭兵団に頼んでもらって先にランガン渓谷の情報を収集してほしい。」
ジェイ「なーんだ…まあ向こうでも敵さんを遊べるように地形とか諸々調べておいてやるよ!」
ゼムの号令で、各々が動き出す。
ゼム「さあ…ここからが本番だぞ…」
第4章「ランガン渓谷」
ケビンの飛竜便に乗せられて、ランガン渓谷に到着した。ケビンが言うには最高級の飛竜便で飛ばしてくれたそうだが、非常に早く、そして安定した良いものだった。空の旅では、ドンパが下をみては、目を逸らしていた。
ランガン渓谷は、ランド伯爵領から城塞都市ガルタン領を繋ぐ街道上にある渓谷だ。全長は約10kmで街道は切り立った崖の間を縫って整備されている。崖、川、街道、崖のような構造で途中は川に沿っていて、川はランド伯爵領へと流れている。
ゼム「ここがランガン渓谷か…」
ランガン渓谷は霧がいつも立ち込めており、ランド伯爵領側は拝むことができない。
サリイ「さあ、どこで切ればいいっすか?」
クララ「あらあら…寂しい場所ねぇ」
ダンク「霧がでてますよ…魔物とかいないんですか…?」
ドンパ「腰が抜けて動けぬ…」
トム「ドンパさん、もう地上なので大丈夫ですよ」
バルザは向こうで城塞都市兵30名を指揮している。
アメリア「……ちょっと怖い場所ですね…」
全員が不安に思っている所に、影からニュルっと出てきて、ダンクの背後に立つ。
ジェイ「ここは、こわーい場所だよー…」
ダンク「ひぇー!」
ジェイ「めっちゃビビってんじゃん!」
ゼム「…はぁ…ジェイ、報告」
ジェイ「はいよ!任しておきな」
ジェイは自分で書いたであろうランガン渓谷の地図を広げて説明する。
ジェイが持ってきた情報は以下の通り
◯敵の情報
・敵の斥候とかの気配はない。
・敵を監視できる場所がある。(霧の影響はほとんどない)
◯ランガン渓谷の状況
・霧は朝と夜に特に強くなる。昼はそこまで酷くない。
・街道は途中平で広い場所が存在しており、宿営場所として最適
・街道の側の切り立った崖にはいくつか潜伏できそうな場所が多数
・街道側の川は渡渉するのは流れが早くて厳しい。
・街道は馬が並んで2頭程しか歩けない幅しかない
ジェイ「こんなもんかな」
ゼム「ありがとう。助かったよ。」
ゼムは思考を巡らせる。
◯今回の戦争での役割と目的
役割は鉄の傭兵団の撃破と主力の足止め
必ず達成すべき目標は鉄の傭兵団と2日間の主力の足止め
達成するのが望ましい目標は鉄の傭兵団を撃破、そして、主力を足止めした上で敵戦力をできる限り削ること。
◯地形
非常に守りやすい地形だ。よって、地形の利用は当たり前
◯敵
まだ兆候は見えないが、鉄の鎧を着けていることから機動には乏しいだろう。
◯我
戦力は、暁の傭兵団10名と城塞都市兵30名、30名はバルザの元部下達で士気も高い。
罠と兵器はドンパがかなり用意してくれている。
◯時間
鉄の傭兵団が到着するまで、残り約2日、主力は約5日後だ。時間が少ないがやるしかない。
というようなことをゼムは1人で黙々と考えていた。
ダンク「ゼム…さん…?」
ゼムは振り返り、全員を集める。
ゼム「只今から、作戦を伝える。」
全員がゼムの顔を見ていた。
ゼムが出した指示は以下の通り。
◯ジェイ
敵の監視及び斥候の排除、城塞都市兵の情報戦に長けた3人を与える。
◯ドンパ、サリイ、バルザ、ダンク、城塞都市兵の近接部隊の15名は街道上に段階的に罠を仕掛ける。足止め用、爆殺用、柵の順で街道上に何カ所も設置。
併せて、宿営適地の広場には燃えやすい物を設置
◯アメリア、ゼムと城塞都市兵の魔法部隊5名と弓兵部隊5名街道上の潜伏可能な場所を選定して、地上のドンパ達の罠に連接させる。
◯トム、クララと城塞都市兵2名
渓谷の城塞都市側において、拠点を整備。
特に負傷者の収容施設と宿営のための施設を整備
ゼム「以上だ…質問は?」
ドンパ「川を堰き止めて流せばいいじゃねえか。」
ゼム「そうすると、この街道は使えなくなるし罠も一緒に流されてしまう。一網打尽にできなかった場合、こっちには対処する術がなくなる。」
ドンパ「なるほどな…でも、崖の上の岩とかに罠を仕込んでおいて落とすのはいいんじゃねえのか?」
ゼム「それは可能だ。うまく罠と連接させてくれ」
ドンパ「了解したぜ。」
ゼム「それでは、全員かかってくれ。」
暁の傭兵団が動き出す。
---
視点が変わって、鉄の傭兵団側
鉄の傭兵団団長は、若い頃に鉄の傭兵団を結成し、そのカリスマ性によって成り上がってきた。トレードマークはその黒い鉄の鎧を身にまとった軍団であり、その足音は敵を震えさせるものだった。
今や鉄の傭兵団はランド伯爵のお抱えであり、普通の傭兵から黒い仕事まで全てを担っていた。
ランド伯爵「鉄の傭兵団の団長グスタフよ…そろそろ行くのね?」
グスタフ「ガハハ!そうよ、あと2日もすりゃ武器と物資も整うからな。お相手さんは、急の宣戦布告でまだ動けていねぇだろうからな。余裕だぜ。」
ランド伯爵「そうか…ならいいんだが」「こっちの兵はあと5日は必要だ。頼んだぞ」
グスタフ「なぁに。渓谷を抜けて城塞都市にちょっかいを出す簡単な仕事だ。ガハハ!」
そう言うと、グスタフは、部屋から出て行った。
---
鉄の傭兵団の接近まで残り1日。
暁の傭兵団と城塞都市兵30名は、順調に罠を張り巡らせている。
全ての罠の設置が終了したあと、ゼムが全員を集める。
ゼム「それでは、作戦を言い渡す。作戦名は鉄鎖の楔作戦だ。」
ゼムが言い渡した作戦は以下の通り。
◯ジェイ+情報部隊3名
渓谷内に侵入した敵の動向について、常にゼムへ報告
◯ドンパ
渓谷内の罠の発動
◯アメリア
渓谷の崖の上に潜伏し、敵が罠により足止めされれば、そこに対して弓をもって攻撃する。
◯サリイ
渓谷の崖の上でアメリアの護衛
◯ダンク、バルザ+15名の近接部隊
渓谷の街道上で足止めされた敵の殺傷及び柵を利用したヒットアンドアウェイを徹底。
◯トム、クララ
拠点にて後方支援
◯ゼム
アメリアとは反対側の崖上にて魔法部隊を指揮
足止めされた敵ではなく、後ろからくる敵を魔法の集中砲火により足止めする。また罠の発動のタイミングについてもゼムが指揮
ゼム「以上だ。質問は?」
バルザ「宿営施設の物はどうするんだ?」
ゼム「敵がそこまで到着しないと思っているが、そこで宿営された場合は火矢でもって攻撃するだけだ。夜の寝静まった時にな…」
バルザ「了解した。あと、敵将のグスタフが来た場合は?」
ゼム「撃ち取れるなら討ち取っていいが、基本は逃げろ。バルザやダンクが討ち取られたら敵の勢いが増してしまうからな。グスタフは俺が上からみて追い込み、トドメを指す。要は盤上がのぞける詰み将棋だよ。」
バルザ「承知した。」
サリイ「えー私、地上じゃないの?」
ゼム「大丈夫だ。敵もバカじゃなければ崖上に斥候かなんかを放ってくるからな。アメリアを守る騎士様さ。頼りにしてるぞ。」
サリイ「アメリア!まかせてね!」
アメリア「お願いします!サリイさん!」
ダンク「不安です…」
バルザ「始めての戦場だ。仕方ない…その気持ちを忘れぬことだ。」
ダンク「わかりました!」
ドンパ「ガハハ!明日の戦争でワシのお手製の罠で奴さんの度肝が抜かれるのが楽しみじゃわい!」
トム「皆さん!しっかりと物資の補給をお願いしますね!」
クララ「怪我したら、こっちまで来るのよー怪我してなくても歓迎するわよ?♡」
ゼムは仲間達の会話を聞きながら、安心していた。
ゼム『ここまでやったんだ…必ず勝てる。』
そこに、ジェイが影と共にやってくる。
ジェイ「今日までやってきた斥候の数はゼロだ。敵さんは大分油断しているか…」
ゼム「相当、こっちを舐めてるかだな…」
霧が立ち込めるランガン渓谷での決戦が明日の明朝から始まろうとしていた。
第5章「ランガン渓谷での決戦」
ランガン渓谷はいつも通り霧が立ち込めている。まだ朝が早く、ほのかに朝日が差し込んでいる。普段なら静かで気持ち良い朝だが、今日は違っていた。
ガシャン、ガシャン、ガシャン
ジェイ「やっと来なすったか」
ゼムはジェイからの連絡を受け、号令を出す。
ゼム「総員!先頭用意!」
全員がその号令の元、整斉と動き出した。
---
グスタフ「ようやく、渓谷か。今日は渓谷で1泊して城塞都市に攻め込むとしようかの。」
そこに、先に送っていた団員が走ってやってくる。
団員「お頭!こんなものが!」
団員は今にも引き抜いてきた看板をグスタフに見せる。そこの看板にはこう書かれていた。
[鉄の傭兵団に告ぐ、この先の渓谷は我々暁の傭兵団が陣を構えた。今から引き返すならよし、来るならば容赦しない。賢明な判断を期待する。暁の傭兵団団長ゼム]
グスタフは看板をへし折ると
グスタフ「舐めやがって!全員皆殺しだ!」
グスタフは号令を飛ばし、渓谷へと全員を向かわせた。
ジェイは崖の上からその様子を見ていた。
ジェイ「おうおう…まさに単細胞って感じだな」
鉄の傭兵団の先頭がある地点を通りかかる。
ドンパ「今じゃな…」
ドンパが麻痺の罠を発動させる。
先頭の10名前後が痺れる。
団員「なんだ…こりゃ…」「…動けない…」
そこに、アメリアの弓兵部隊の矢がふりかかる。アメリアは緑の光球を矢に纏わせ、正確に動けない敵を狙撃していく。
静寂に包まれた渓谷に阿鼻叫喚の声が上がる。
鉄の傭兵団の先頭から50m後ろを前進していた中軍は急いで向かおうとする。
ゼムは緑と白の光球を混ぜ合わせ、雷を準備する。その他の団員は青の光球を大気に投げ、水を生成する。
ゼム「知ってるか?水は雷を伝えるだぜ?」
中軍に水がかかる。
団員「なぜ?ここに水が…?」
バリリ!バリバリ!!
そこにゼムの雷魔法が炸裂した。
ドンパ「さらに、もう一発!」
ドンパのが崖上の岩を抑えている支柱を破壊する。
岩はゴゴゴゴゴゴと騒音を上げながら、魔法で足止めされていた中軍の頭上に落ちてきた。そして、その岩は街道を塞いだ。
後ろは岩に阻まれた中軍は、前からの雷に耐えていたが、そこに、怒声を伴ったバルザとダンクと近接部隊15名が襲撃する。
またたく間に、中軍も全滅した。
グスタフは悠々と渓谷を進んでいたが、行軍が止まってしまった。
グスタフ「どうした!何が起きた!?」
そこに、団員が走ってくる。
団員「……報告します…先頭及び中軍の総勢50名は敵の罠にはまり、全滅しました。そして、上空からの落石により街道は塞がっております。」
グスタフ「なんだと!?まだ数分しか立ってないぞ!」「俺が先頭に出る!俺が道を切り開く!」
グスタフを先頭に鉄の傭兵団が再編成されている。
ジェイ「ここまで、単細胞だと団員達が可哀想に見えてくるな」
ゼムはジェイからの報告でグスタフが先頭に出ることを知った。
ゼム「ドンパ!グスタフが通過してから地雷は発動させよ。グスタフはダンクが応戦!バルザはグスタフをすり抜け後ろの団員を殲滅せよ。アメリアと魔法部隊は、鉄の傭兵団の後方から順に殲滅せよ。俺はダンクの援護に回る!」
全員「了解!」
---
グスタフは街道を塞いだ岩を持っていたハンマーで粉砕した。
グスタフ「俺に続け!」
鉄の傭兵団が鉄の足音を鳴らして、総攻撃してくる。グスタフが他の団員を置き去りにして、走っている。
ドンパがグスタフが通過したのを確認して、街道に敷き詰めた地雷を発動させる。
ドゴン!バゴン!
グスタフは後ろを振り向くが、そこにダンクが抑えに入る。
グスタフ「この若造がぁ!」
グスタフは振り払おうとするが、ダンクは揺るがない!
ダンク「僕の役割は!お前を!動かさないことだ!」
バルザ「そのとおりだ!通るぞ!」
バルザの部隊がグスタフとダンクの横を通り過ぎていく。
グスタフ「ちくしょう!」
グスタフが足止めされている。後ろでは、先程まで共に居た団員の悲鳴と断末魔が聞こえてくる。
グスタフ「ちくしょう…やめてくれ!!」
ゼム「そうやって、お前はフリード村の村人に同じことが言えるのか?」
ゼムがグスタフの目の前に現れる。
グスタフ「誰だ…?貴様は!」
ゼム「暁の傭兵団、団長ゼムだ。お前ら鉄の傭兵団との因縁に終止符を打ちにきた。」
グスタフはダンクを振り払い、持ってたハンマーを振り上げ、ゼムに振り下ろそうとする。
グスタフ「貴様さえ居なければぁぁ!」
ゼム「もう、お前は俺の掌の上だ。」
ドンパが罠を発動させ、グスタフの身体が硬直する。
グスタフは動けない身体でゼムを見据える。
グスタフ「クソがぁ…俺の傭兵団が…」
ゼムは赤と白の光球を展開しながら話す。
ゼム「残念だったな。お前らの時代はここで終わりだ。」
赤と白の光球が融合し、タクトにブォンと光の刃が現れる。
ゼム「ライトブレード…」
次の瞬間、グスタフの首と胴は永遠の別れを告げた。
街道には、鉄の傭兵団の全員が死に絶えていた。
ランガン渓谷の戦い。鉄の傭兵団100名対暁の傭兵団10名+城塞都市兵30名、鉄の傭兵団全滅、暁の傭兵団負傷者10名、死亡者ゼロ。
ゼム「鉄鎖の楔作戦終了。楔にもならなかったな」
第6章「主力の足止め」
[ランガン渓谷にで、暁の傭兵団が鉄の傭兵団を撃破!団長グスタフ死亡!鉄の傭兵団全滅!]
この報告がランド伯爵領及び城塞都市陣営に響き渡る。
城塞都市領は歓喜に満ち溢れている。
サンドレイク「やりおったか!」
ランド伯爵領では、ランド伯爵はイライラしていた。
ランド伯爵「何が余裕だ!」
ランド伯爵は握り拳で机をダン!ダン!と叩く。
「簡単にやられてんじゃねえか!」
机の上の資料を全部落とす。そして、頭を抱える。
「このまま進軍しても、鉄の傭兵団の二の舞ではないか…!誰か…!策はないのか?」
そこに出てきたのは、ランド伯爵領の騎士団長ドルンガだった。
ドルンガ「安心してください。伯爵よ…敵も馬鹿ではない。こちらが、編成し1万で攻め込めば渓谷など簡単に突破できます。」
ランド伯爵「そうか…ドルンガ任せたぞ!」
ドルンガ「……御意」
ドルンガは領主の部屋を出て、私室に戻る。
ドルンガ「これでよかったのか?」
ジェイ「ああ…それでいい助かったよ。」
ジェイはゼムの要請で鉄の傭兵団撃破後、ランド伯爵領へと潜入していた。ゼムからは「誰か内通者になりそうな奴を探せ」と言われていたのだ。
ドルンガ「なぜ、戦争を望む?あのままであれば、無駄な血を流さなくて良いと思うが…」
ジェイ「うちの相棒が、このままではランド伯爵は攻めてこない可能性がある。そして、攻め込まず和平を目指して、宣戦布告した理由を鉄の傭兵団のせいにされたら困るって言うんでな。」
ドルンガ「なるほどな…血を流させてランド伯爵を完全に悪者にするのか。」
ジェイ「あと、うちの相棒はこの戦争はランガン渓谷でケリをつけれればケリをつけるってさ。あとはあんた次第だ。」
ドルンガ「………」
ジェイ「じゃあ、敵に回らないことを祈るぜ!」
ジェイは影の中に消えて行った。
ドルンガ「俺の剣は何処へ向ければ……」
手を机に出し、俯いていた。
---
鉄の傭兵団に勝利後、またたく間にゼムの号令が出ていた。主力の迎撃態勢を整えるためである。
ゼムはあわよくば、ここで決着をつけるつもりだった。
ゼム『敵は鉄の傭兵団がいなくなったとは言え、まだ1万近く残っている。こっちの兵力を考えると少しでも時間を稼ぎ、敵を排除すべきだ。』
そして、諸々準備している間に主力到着前夜となった。
ドンパ「俺の罠の前にゃ敵は絶対問題なしだ」
サリイ「ちょっと!斥候全然来ないじゃないか!」
アメリア「狙って…撃つ…それだけ…」
クララ「前は負傷者が少なかったから、今回もそれでお願いね♡」
トム「補給物資は潤沢ですぞ!一週間ぐらいはここで暮らせますぞ」
ダンク「私は私の役割を遂行…します!」
バルザ「前の戦は上手く行き過ぎている。奢るなよ。」
ジェイ「奴さんの斥候の数はスゴイ数だ…正直、びっくりしてる。」
ゼム「皆、揃ったな。それでは、作戦を伝達する。とはいえ、やることは前回と変わらないが」
「作戦名は戦場の陽炎、この作戦は2日間の耐久だ。だが、罠の数と敵兵の数だと1日が限界だ。よって、宿営適地までは前回と同じ。宿営適地から後ろを確実に守る。」「そのあとは、宿営施設を夜襲、火にかける。」「最後は、朝とともに逃げるだけだ。」
バルザ「逃げる?最後まで耐久しないのか?」
ゼム「おそらく、敵は1日目と夜襲で俺達に対する警戒画強くなっているはずだ。よって、2日目は俺とドンパ、アメリアの部隊で足止めしつつ、頃合いを見て逃げればいい。そうすれば相手は勝手に警戒して先に進むのが慎重になるからな。」
ジェイ「警戒しているときが進軍速度が落ちるからな」
ゼム「そういうことだ。みんな、できる限り敵を殺すのが目的だ。必ず生き残れ!」
全員「おう!」
主力との戦いが切って落とされようとしていた。
---
ランド伯爵率いる総勢1万の軍勢がランド領から出ていた。先頭に1000人、中軍に1500人、主力に5000人、後方に2500人の軍隊だった。
ジェイ「いやー壮観だね…ここまで人が居ると大変だわ」
ランド伯爵「全軍!進め!城塞都市を我が物に!」
ドルンガ「……」
ランド伯爵「ドルンガ、どうした?お腹でも痛いのか?」
ドルンガ「…いや…渓谷に送った斥候が戻ってこないため、敵の出方がわからないのがな…」
ランド伯爵「大丈夫だ!この人数だ!敵がどのようなことをしてこようとも、数には勝てぬ!」
ドルンガ「……そう…ですね…」
ドルンガの部隊は心なしか進軍スピードが遅いようだった。
ゼムはジェイからの伝達を受け、号令を流す。
ゼム「総員戦闘用意、作戦名戦場の陽炎」
暁の傭兵団と城塞都市兵は淡々と配備を整えて行った。
---
ランド伯爵領軍の戦闘が渓谷内に入ってきた。
ゼムは崖上からそれを覗いていた。
ゼム「まだだ…まだ…」
ランド伯爵領軍の戦闘100人があるポイントを通過すると、
ゼム「今だ!やれ!」
ゼムの号令により、ドンパの麻痺トラップが発動し、戦闘の30人が動けなくなった。
それと同時にジェイが岩を支えている支柱を外す。
ジェイ「プレゼントだ!とくと味わいな!」
岩はゴゴゴと音をかけながら戦闘部隊に襲いかかる。
これにより、戦闘部隊のうちの先端の100人が孤立した。
そこに、アメリアの的確な狙撃、ゼムの雷魔法と水魔法のコンボ、バルザとダンク率いる近接部隊により、戦闘の100名をまたたく間に抹殺した。
アメリアとゼムは次の罠には備えて移動を開始する。
移動を開始した直後、アメリアは敵の接骨により命を狙われたが、サリイ画止める。
サリイ「ようやく、出番が回ってきたわ!」
サリイは敵の短剣による攻撃を剣で簡単に払い除けて斥候をその場でぶった斬った。
サリイ「あれ?こんなもの?」
アメリアはサリイにお礼を言いながら、次の狙撃スポットに移動を始めた。
そのような攻防を繰り返して、敵はようやく宿営の適地にやってきたが、時刻はもう夜を回っていた。
ドルンガ「今日はこの地点で野営をする!警戒を怠るな!」
ランド伯爵「ドルンガ!動きが遅すぎるぞ!何とかならないのか!」
ドルンガ「申し訳ありません。敵の罠や兵器に手こずりましたが、明日からは早く進軍できるでしょう。」
ランド伯爵「頼んだからな!俺は寝る!」
ドルンガはランド伯爵が野営のテントの中に入って行くのを膝立ちで伏せていた。
ドルンガ「さて、どうするか…」
---
深夜となり、辺りには濃い霧が立ち込めている。
ドルンガ「…どうしたものか…」
と机の地図とにらめっこしていた。
そこにジェイがやってきた。
ジェイ「よう…まだ迷っているのか?」
ドルンガ「…当たり前だ。裏切るかどうかなんだぞ」
ジェイ「まあいいや。手紙だ。」
ドルンガはジェイが持っていた手紙を読む。
[ランド伯爵領の優秀な騎士団長ドルンガ殿、私達は平和を求めています。1万人以上の被害を出さないためにも、明日の朝からの攻撃はじっくりしてもらい、私がランド伯爵の前に姿を現したなら、あなたの決意を見せてもらいたい。暁の傭兵団団長 ゼム]
ドルンガは、もらった手紙をすぐに燃やした。
ドルンガ「非常に優れた作戦だな…そちらが羨ましい。」
ジェイ「そりゃあ、俺の相棒だからな!あとはよろしくー」
そう言うとジェイは影の中に姿を消した。
ジェイが姿を消した瞬間、夜の暗闇が赤い炎で照らされた。乾いた薪に火が灯り、導火線のように陣内に炎が回っていく。
兵士「敵襲ー!」「敵の数は不明だ!」「全員、叩き起こして、消火作業だ!」
暁の傭兵団はこれを夜通し行い、敵の戦意を喪失させていった。
---
翌朝、夜襲による負傷者は500名前後、死亡者は200人だった。
ドルンガ「中軍は再編成して、敵の罠に気をつけつつ、前進だ!」
中軍は編成を取り直し、街道上を進み始めた。
昨日と同じ要領で敵を効率的に殺していく。
ドルンガ「くそう…このままだとジリ貧だ…敵の近接部隊が姿を現してない以上、慎重に進めねば…」
中軍は死亡者が400人を超えていて、ほぼ壊滅状態だった。
夕方になり、渓谷の出口に着いたが、そこにはもぬけの殻となった拠点の跡が残っていた。
ドルンガ「ちくしょう!やられた!あんだけ攻撃して去るのは一瞬だとは……」
ランガン渓谷の戦いランド伯爵領1万のうち、2000人が死亡若しくは離脱、負傷者2000人、暁の傭兵団負傷者20名、死亡者ゼロ。
ゼムは見事、ランガン渓谷での2日間の足止めに成功したのであった。
ゼム「これが、俺達の戦いさ。先程まで居たのに居なくなる。逃げることが逆にこっちの勝ちになるのさ…陽炎の如し。」
第7章「領地争いの決着」
ドルンガがランガン渓谷にて悔しがってる時と同時刻。ゼム達は、城塞都市に戻ってきていた。城塞都市のサンドレイク領主が迎えてくれた。
サンドレイク「そなたのおかげでこちらも準備を整えることができた。しかも、死亡者ゼロとは素晴らしい。」
ゼム「ありがとうございます。貸し与えて頂いた兵士は存分に戦ってくれました。今は休みを与えてください。」
サバト「小僧…よくやったな…」
ゼム「ありがとうございます。あなたが後ろを守ってくれたおかげです。」
サバト「俺達は何もしてない。お前が勝ち取ったものだ誇ると良い…」
ケビン「おー!よく無事で戻ったな?」
ゼム「ケビン!飛竜便ありがとう。おかげさまで物資に困ることはなかったよ。」
ケビン「こちらこそ、頼りにしてくれて助かったぜ!」
グラス「あなたの所で負傷した人は、今治療を受けてるわ。全員無事よ。」
ゼム「ありがとうございます。グラスに見てもらえるなら最高でしょうね」
城塞都市の騎士団長が近付いてくる。
騎士団長「君のおかげで我々は迎撃態勢を整えられた。礼を言う。」
ゼム「まだ、戦争は終わってませんよ」
その場に緊張感が走る。
ゼム「領主様、騎士団長、これを」
ジェイがゼムの代わりに書状を渡す。
ゼム「敵の軍団の編成とランガン渓谷からの展開の布陣予想図です。敵はランガン渓谷にて2割を消耗しています。こちらから出向けば間違いなくやれるでしょう。」
サンドレイク「ここまで、調べておったのか…」
サンドレイクは素晴らしいと思う反面、ゼムの才覚に冷や汗を覚えていた。
騎士団長「この情報があれば、必ず勝てる!行くぞ!出撃準備だ!」
ゼム「待ってください!」
騎士団長「どうした?暁の傭兵団はもう休んでていいのだぞ?」
ゼム「……僕はできることなら人を殺したくない。なので、出撃前に一度ランド伯爵と話してみてもらえませんか?」
騎士団長「ダメだ!奴らは根絶やしにするべきだ!」
ゼム「そうやって根絶やしにしてきたから、新たな復讐を生むんだ!」
騎士団長とゼムは睨み合う。バルザが剣の柄に手を添えている。
そこに、重い声が響く。
サンドレイク「わかった。今日の態勢の有利は、暁の傭兵団の活躍によるものだ。明日の決戦前に陣前進しにてワシとランド伯爵で会談いたそう。」
ゼム「ありがとうございます!」
サンドレイク「しかし、頓挫したならば、問答無用で根絶やしだ。いいな?」
ゼム「……承知しました。」
領主の部屋から、落ち込んだ様子で部屋を出る。
しかし、その顔には薄っすらと笑みが溢れていた。
---
決戦直前、城塞都市前の平原において、城塞都市軍とランド伯爵領軍が対峙していた。
その対峙する両軍勢の前に領主サンドレイクとその騎士団長、ランド伯爵とその騎士団長ドルンガが対峙していた。
サンドレイク「ランド伯爵よ!鉄の傭兵団も敗れ、そちらも約2割が消耗している。我の軍は健在だ。無用な殺生を、避け和平と行かないか!」
ランド伯爵「たわけが!我が軍勢は確かに2割減っているが、総数はそちらを上回っている!我々は最後の1人になるまで戦う。」
2人の領主の言葉の応酬にドルンガは警戒しつつも耳を傾ける。
ドルンガ『確かに、我々が数で勝っているが士気は低下、勝ったとしてもかなりの戦死者が出てしまう…しかし、我々はランド伯爵のために戦うべきなのだ。』
サンドレイク「彼ら兵士には、帰りを待っている家族が居るはずだ!それを考えないのか!?」
ランド伯爵「ふん!彼らは俺のために戦うのだ!私のために戦い、死んでいくことに何か躊躇いがあると言うのか?」
サンドレイク「復讐に取り込まれた亡霊め!ここで引導を渡してやろう!」
サンドレイクが剣を抜き、号令をかけようとした瞬間
???「申し訳ありませぬ」
ザク!
ランド伯爵の胸を1つの剣が貫いている。
ランド伯爵「…ぐぬ…ドルンガぁ!貴様!何をしている…」
ドルンガ「あなたの私闘はここで終わらせる。」
ドルンガは剣を身体から抜き、ランド伯爵は剣を抜いて応戦したが、ドルンガの一閃により、ランド伯爵の首は地面に横たわっていた。
ドルンガは返り血を浴び、血まみれになり立っていた。
沈黙が流れる。今まさに、戦争が始まろうとしていたが、今や全員がドルンガを見つめている。
ドルンガは血まみれの剣を地面に落とし、兜を脱ぎ、膝をつく。
ドルンガ「ランド伯爵は死んだ。降伏する。私が降伏し全ての責任は私が負う。後ろの全ての兵をランド伯爵領を返して頂きたい。」
サンドレイク「その覚悟、見事なり。そなたの身柄は我が領で管理する。この降伏…受けよう。」
両陣営は、勝敗が決まったのにもかかわらず静かに引き上げていく。
この引き上げていく様子を城塞都市からゼムは見ていた。
ゼム「全て、俺の掌の上…か。」
第8章「戦争終結」
薄暗い地下の牢獄にゼムはジェイと共に来ていた。
そこには、やつれた顔で牢獄に繋がれているドルンガが座っていた。
ゼムはドルンガの鉄格子を挟んで前に立った。
ドルンガ「……何者だ?」
ゼムは何も答えない。
ドルンガはその横に居るジェイを見て悟った。
ドルンガ「…そうか…君が彼の相棒か…」
薄暗い地下の牢獄の中は静まり帰っている。
ドルンガ「…気にする必要はない。私は弱みを握られていたわけではない。自分の意思で主君を殺すことを決めたのだ。」
ゼム「………」
ドルンガ「……最後に君に会えてよかった。そして、最後に1つ忠告しておこう。」
ゼム「…………」牢獄内が静まりかえる。
ドルンガ「私のように理性が保てる敵は、君の掌で回るだろう。敵にして一番厄介なのは、何かを捨て去った者だ。何かを捨てる覚悟をした者が一番怖い。」
ゼム「………忠告ありがとう。」
ゼムはジェイを連れて、牢獄を出て行った。
次の日、ドルンガが牢獄内で舌を噛み切って、死亡していることが知らされた。
---
ゼムと暁の傭兵団は領主邸に呼ばれていた。
領主の部屋に入ると、騎士団長、宰相、ケビン、サバト、グラスが並んで立っていた。
宰相が叫ぶ。
宰相「これより!ランド領地戦役の報酬を授与する!」
宰相の口から次々と功績が伝えられていく。
サバトは第4位、活躍の機会がなかったから、本人も納得しているようだ。
第3位はグラスの乙女の傭兵団、予想以上に負傷者が少なかったからだ。
第2位はケビンの飛翔の傭兵団。飛竜便による人員と物資の輸送が高く評価されたみたいだ。
そして、第1位が発表される。
宰相「戦功第1位は、暁の傭兵団!ランガン渓谷にて鉄の傭兵団の撃破、ランド伯爵軍の2日間の足止めにより、我の迎撃態勢の完了に寄与した。よって、白金貨10枚を授ける。」
ゼムは領主サンドレイクの前に歩み出る。
サンドレイク「よくやってくれた。そなたの名前はわが領地の英雄として語り継がれるだろう。」
ゼム「勿体ないお言葉、全ては我が団員のおかげです。」
スゴイ歓声と共に、報酬の授与が終了した。
---
報酬の授与が終了し、ルミレストに戻ってきたゼムと暁の傭兵団はトムが準備しておいた食料と酒で宴会を始めた。
ルミレストの中央の広場には、木が組まれ、火が灯り大きな火となっている。
今回の宴には、暁の傭兵団全員とランガン渓谷にて共に戦った城塞都市の兵達が参加した。
他にも、騎士団長とギルド長ゴルドー、ソルティ、お忍びで領主サンドレイクも来ていた。
ドンパはお立ち台で酔っ払って祖国ドワンゴの歌を歌っている。そして、ランガン渓谷の罠は俺が作ったぁ!と叫んでいる。
サリイとアメリアは仲良くなったのか、一緒に隣に座って飲んでいる。時折、ゼムの方を見てアメリアが顔を赤くしてるが、何かあったのだろうか?
ダンクはバルザと城塞都市の兵達と酒を囲んでいる。
ダンクと城塞都市の兵達で腕相撲をしている姿が見える。バルザは久しぶりの旧友と過ごせて楽しそうだ。
トムは食材をせっせと運び、手配した料理人に指示を出して忙しそうだ。
クララは、相変わらず酒は飲んでないが、時折誘惑して視線を集めている。
ゼムはジェイと共に飲んでいた。
ジェイ「お疲れさん…相棒…」
ゼムとジェイは静かに乾杯をする。
ジェイ「お前の策が全てハマったな。」
ゼム「本当に、怖いくらいだよ。」
ゼムは自分の掌を見る。
ゼム「自分では殺してないのに、大多数の人を…俺は殺させた。」
ジェイ「でも、俺達はそれのおかげで生きてる。」
ゼム「そうだな…全ての罪を受け入れ、俺はこの笑顔を守るために戦うよ。」
ゼムとジェイが静かに飲んでいる所に、お忍びで来ていたサンドレイクがやってくる。
サンドレイク「隣いいかな?」
ゼムとジェイは横によって席を空ける。サンドレイクは空いた所に腰を降ろした。
サンドレイク「まずは、今回の戦のお礼を言わせてくれ。君達がいなかったら、この城塞都市は取られていただろう。」
ゼム「………」
サンドレイク「実はまだ誰にも言ってないが、ランド伯爵領が攻め込んできたとき、隣の魔皇国タルタロスが動いていたと情報が入っている。」
ゼムとジェイは目を見開く。
サンドレイク「しかし、鉄の傭兵団が瞬く間に敗れたとき、魔皇国の動きはやんだ。まだ、相手からの動きは入手できていないが、何かしら関係があるかもしれん。」
ゼム「それが本当なら真の黒幕が居ると…?」
サンドレイク「それは断言できぬ。」
ゼムは視線を手元の酒のグラスに移すが、すぐに目線を上げた。
ゼム「何があろうと、私が守ってみせます。」
サンドレイクはその言葉を聞いて安心したのか、1枚の手紙を差し出す。
サンドレイク「王都での活動の推薦書だ。これで君達、暁の傭兵団は王都での依頼も受けることができる。駆け上がれよ。」
サンドレイクはスッと立つと、そのまま宴会の中央へと歩いて行った。
ジェイ「王都での推薦書か…大きくなってきたな。」
ゼム「……そうだな…」
ゼムは考えていた。自分の使命とは?エドガー・フェルディナントの意思とは?自分が何をすべきなのか。
ゼム「……それでも進むしかない…自分の道は仲間と共に歩む。」
宴の歓声と共に夜は更けて行った。
第4部 完




