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41. お茶会の準備は万全に

ロゼリンはカーンの妹でした。やんちゃで不真面目な兄にしっかり者の妹です。

お茶会というには何やら不穏な香りがしそうですが、まずは、準備を始めましょう。

少し短いですが、次話はいよいよお茶会が始まります。

「旦那様?そろそろ起きてはいかがですか?」


「ろぜりん・・・?」


 昨夜遅くに王都にある幻惑の館(高級娼館)に着いた一行は、館の最上階を借り切っていた。

 娼館の女主人(マダム)は慣れたもので、先駆けの連絡が届くと、速やかに寝具や家具類をオーキッド好みに替えて彼らの到着を迎えた。有り余る資産を持った金払いの良い彼は、この館のVIPだった。オーキッドは高級宿よりも、ここのホスピタリティーが何より気に入っていた。なぜなら、彼好みの()()()()()がたくさん咲いているし、()()()()()()()のプロ達ばかりだったから。それに、 ≪秘密保持≫ は当たり前に徹底しているから。



「ロゼリン。おはよう。そうだね、もう起きなくてはいけない時間だね」


 ロゼリンは、今日も少年の様な格好をしている。年若い彼女がドレス姿で、万が一階下の花々(娼婦)に間違われたらいけないと、オーキッドの指示があったからだ。賢そうな瞳に、濃茶の髪を一つに結んだ華奢な姿が本当に少年のように見える。


「ルイとカーンは?」


「ルイ様はすでに食堂にいらっしゃいます。兄さんは食事を頼みに行きました」


「そう。ありがとう。さあ起きようか」


 ロゼリンはカーンの妹だ。ふざけた兄とは違い、利発で気が利く可愛い娘だ。にっこり笑うとすぐに準備を始めてくれた。


 オーキッドは手早く身支度を整えると、皆で朝食を摂るための食堂に向かう。館は夜の華やかさからひっそりとしていたが、階下からは朝帰りの馬車が何台か出て行ったようだ。飾り窓に寄り掛かり厚い豪奢なカーテンを少し開けて見ると、明るい光が降り注いだ。(今日はいい天気になりそうだ)と思った。


 食堂に着くと、すでに皆は着席していて、後ろから付いてきたロゼリンが椅子を引きオーキッドを座らせた。


「さあ、食事にしよう」





 食事を終えたオーキッド、ルイ、カーンとロゼリンはサロンに集まっていた。ロゼリンがお茶を淹れてオーキッドに渡すと、香りを吸い込んでから優雅な仕草で飲んでいる。


「で、今日はどうすんの?リリちゃんに会いに行くんでしょう?」


 カーンがティーカップを受け取りながら言った。

 

「王妃のお茶会に行くよ。リリちゃんの誕生日と結婚祝いをしなくちゃでしょ?お祝いが二重なんておめでたいね」


「貴方はそれで良いのですか?結婚が事実なら貴方にも手は出せませんよ?仮にも公爵家の嫡男が相手ですから」


 笑いながら言うオーキッドに、ルイが冷静に突っ込んだ。言葉の影には、一体何がしたいのだとの含みが感じ取れる。カーンはそんな二人のやり取りをニヤニヤしながら見ていたが、


「なに?また攫うの?それすっごいリスクあるよ!宮廷近衛騎士団の副団長サマなんでしょ?ムリ!」


 流石に反対する。


「ちょっと、二人とも物騒だね。攫うなんてしないよ?純粋にお祝いに行くんだよ?」


「「な・ん・で・!?」」





 ルイとカーンが顔を見合わせ、ロゼリンは無表情のまま立ちすくんだ。




「さあ、お茶会まではまだ時間があるから、ゆっくり準備をしようじゃないか」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「お嬢様、髪飾りを付けますので、前を向いて下さいませ」


 今日も、マーサとビューティーエキスパートの皆が頑張ってくれています。お茶会には前もって決めていた薄桃色のドレスです。これも流行の小花の刺繍が全体に散っていますが、少し大人っぽいデザインで甘さは抑えめになっています。

 髪型も後ろに流す予定でしたが、()()()()なので片側を垂らしたアップにして、共布のリボンで華やかに飾りました。


 そして、シリウス様から昨夜手渡された ≪サファイアのイヤリングとネックレス≫ を着けます。これは、シリウス様のお母様であるヘレン様から譲られた ≪公爵家の青≫(ディーク・ブルー) という貴重な宝石達です。大切にしなければいけません!


「「なんて、お綺麗なのでしょう!!!」」


 マーサもエキスパートのメンバーもうっとりとした表情で褒めてくれます。そうです。貴方達の技術は素晴らしいです!確実に増し増しになっていますもの。


 女子トークで盛り上がっていると、シリウス様がお迎えに来て下さったようです。


 そうです。これからなのですわ。何が起きるか判りませんから緊張感をもって行きましょう。


「お待たせしました。シリウス様」


「・・・・・」


「・・・シリウス様?」


「ああ、余りの可憐さに言葉が出ませんでした。なんて美しいのでしょう。今日は少し大人っぽい感じがしますね?」


「ええ。だって今日で私17歳ですわ。それに晴れてシリウス様の奥様になったのですもの」


「そうでした。今日から貴方は私の妻です。もう遠慮はいらないですね」


 シリウス様は、膝をついて私の手を取るとチュっと口づけを落としました。


(続きは、馬車の中としましょう)私の耳にだけ聞こえる声でそうおっしゃると、馬車にエスコートして下さいました。

 


 多分、私の顔は真っ赤だったと思います!!このヒト、キャラかわってきていませんか?


誤字脱字は気づき次第修正します。

面白かった、続きが気になると思って頂けましたら、

評価ボタンを押して頂けると嬉しいです。

なんせ、初めての投稿なのでドキドキなのです。

最期まで書き抜くパワーを頂けると頑張れます。


40話を超えたのでいよいよ主要人物が一堂に顔合わせとなります。


ブックマークしてくださった皆様もありがとうございます。


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