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23. 宮廷近衛騎士は結婚に積極的

誤字脱字、一部微修正しました。

 結局リリ嬢はしばらく暴れて?いたが、広間を横切る頃には諦めて大人しくなった。しかし、物凄い視線を下から感じる。それは、常日頃感じる女性からの熱く物ありげな視線では無い。と思う。思わず広間の真ん中で足を止めた。


「そんなに見られると、さすがに居た堪れないのですが」


 そう言って、すぐ側にあるリリの顔に視線を向けた。グリーンのアースアイが真ん丸に開かれ、虹彩には王国の国花である矢車菊の花が見える。


 (これが、妖精姫の瞳か)美しさに思わず見入ってしまった。光の加減で、エメラルドグリーンに見える瞳に鮮やかな青の花が咲いている。2年前にはじっくり見ることが無かったから印象に残らなかった。まじまじと、至近距離でお互いがお互いの顔を見つめていた。


「・・・詐欺師・・・」


「はい?リリ嬢、今何と?」


「シリウス様は詐欺師です!どさくさに紛れて私に返事をさせましたもの」


「でも、きちんと聞きましたよ?≪リリ嬢、私と結婚して下さい。いいですね?≫と」


「まさか、聞いていなかったのですか?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()など?」


「そんな!そんな失礼なことはしませんわ。・・・しませんけれど・・」


「そうですよね。良かったです。これでも大変緊張していましたから。でも、これで無事に両陛下にご報告が出来ます。貴方に求婚するというので随分ご心配を掛けてしまいましたので」


「へ、陛下?もうご存じなのですか?」


「ええ。今朝求婚することをご報告し、許可も頂いております。当然王妃様もアレッド王太子様もご存じですよ」


「!?(やられた!)」


 リリが自分の腕の中でピキッっと固まったのを少し楽しく感じたシリウスだった。




 シリウスに姫抱きされて家族の控えるサロンの前まで来たが、さすがに家族の前では恥ずかしいので降ろしてもらった。

 しかし、その代わりにと手を取られると肘にそっと添えられた。リリは今後の展開を思って気が遠くなりそうだった。昨日までは結婚のけの字も無かったのに、翌日の昼には婚約者ができてしまったのだ。それも、相手方の両親も自分の両親、更に王族の許可まで既に取っているとのこと。外堀は埋められていた。


 どういうこと。本人が一番最後かーい!  突っ込んでしまったわ。


「グランデルク伯爵、夫人。そしてクラウス。リリ嬢から()()()()()()を頂くことができました。誠にありがとうございます。これからは、末永くよろしくお願い致します」


「そうですか。シリウス様、リリ、おめでとう」


「リリ、良かったわ。シリウス様と幸せになってね。シリウス様、どうぞリリをよろしくお願いしますわ」


 両親は満面の笑顔です。今まで、結婚のことなど一言も言ったことのない人達だったのに。もしかしたら実は気にしていたのでしょうか?引き籠って婚活していない17歳の娘を、心配しないはずは無かったですわね。


 その引き籠りに、いわば王国でトップ3に入る物件が来てくれたのですもの。それもあちらから。そりゃ、お父様もお母様も大喜びでしょう。


「クラウスお兄様?」


 両親の隣にいるお兄様の様子が何だか変です。今にも泣きそうな顔でシリウス様を見つめています。


「シリウス、約束してくれ。絶対リリを幸せにすると。妹を何者からも守ると誓ってくれ」


「解っている。クラウス、お前の妹だ。大事にする。安心してくれ。これでお前とは義理の兄弟となるな。これからもよろしく頼む」


 2人は向かい合ってそう言い合うと、お互いをガシッと抱きしめました。クラウスお兄様が涙を拭うと、シリウス様がにっこりと優しくお兄様を見つめました。




(・・・なに?この雰囲気は。私とより甘々な感じがしますけど?)




 一連のやり取りから若干ハジキにされた感がしないでもない私は、少しやさぐれた気持ちで目の前の光景を見ていました。

 盛り上がっている家族を見ていたら段々頭が冷えてきましたわ。結局この方が、私と結婚したいと思う理由も、どこが好きだとかの愛の言葉?も聞いていませんし。本当にこの方は何を思っているのでしょうか?

 

 私も貴族の娘ですから、いづれは政略結婚でどなたかと結婚するとは思っていましたよ。でもね、よく考えるとこんな好条件ありませんわね。公爵家と縁続きになるなんて当家的にも願ったり叶ったりですわ。

 性格はちょっと分かりませんが、見た目と家柄は言うことありませんね。そんなことを考えながらボーっとしていました。


「リリ嬢、これからの事ですが、明日はスタンフォードの屋敷に来て私の両親に会って頂きたいのです。正式に紹介をさせて下さい。お迎えに上がりますのでよろしくお願いします」


 そうですね。ご挨拶に伺わないとね。スタンフォード公爵夫人には王妃様のお茶会で何度かお会いしていますが、公爵様は初めてお目に掛かります。我が国の宰相である方ですので緊張します。シリウス様に頷くと彼は肘に添えていた私の手に自分の手を優しく重ねました。



(ひえっ)びっくりして見上げたシリウス様は、とっても優しい目で私を見ていました。


「貴方は、クラウスと良く似ていますね」



 今、それ言いますか?




 シリウス様は、陛下達にご報告に行くとおっしゃって、なぜかクラウスお兄様もご一緒するようです。さっきから、このお二人は何なんでしょうか。何か秘めているものがあるというか、共有しているものがあるというか。



 シリウス様をお見送りするため玄関に向かいますが、婚約者を見送る心構えには全く遠い気持ちです。

 でも、そんな気持ちとは関係なく、愛馬に騎乗する姿は絵のような凛々しさで、まさしく()()ですわ。


「それでは、また明日お迎えに参ります」



 そう言って颯爽と去って行きました。あぁ・・・疲れました・・・・。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ルイ、王都では何か面白いことがあると思う?」


「さあ、どうでしょうか。でも、貴方が動くと面白いことが起きますよね?」


 片目を閉じて笑うと、隣に座る青年の銀髪をくしゃりと撫でた。


「随分言うようになったね。ルイ、君には王都に着いたら働いて貰わないとね」


「何度も言いますが、()()()はしませんよ?」


「そういう子だった。忘れていたよ」



 馬車は王都を目指して走っている。和やかな雰囲気はまるで、パーティーに向かうように見えた。



「もうすぐ会える。きっと美しくなっているよ」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 王宮に着いたシリウスとクラウスが並んで廊下を進む。先程からクラウスはずっと無言でいる。何か云い掛けては止めているような気配がする。


「何だ?何か言いたいことがあるのか?」


 シリウスができる限りいつも通りの温度で問いかける。


「いや。お前に頼んだのは私だ。私が望んだことなのだ。ただ、余りにも話の進みが早くて、気持ちが着いていかないのだ」


 クスっとシリウスは笑った。リリと同じことを言っている。容姿がよく似た兄妹は、考えることもよく似ている。


「クラウス、お前には感謝している。自分の気持ちに気づかせてくれたのだ。私は、結婚に関してあまりにも考えてなさ過ぎたていたから」


 クラウスは、まじまじと隣にいる美形騎士の顔を見た。こいつが、こんなことを言うなんて初めてだと思った。長い付き合いであるが、こいつから恋愛がらみのことを聞いたことが無かった。


 いい年した大人の男であるから過去には遊びもしたが、根が真面目な質であるため羽目を外すことは無かった。よくよく考えれば、リリにとっても最高の相手である。最高の相手ではあるが、最愛の妹が結婚して親友の妻になる。それは、誇らしいことで、そして少し寂しいことでもあった。



 クラウスは、モノクルを押さえながら言った。


「とにかく、パルマン辺境伯が到着する前にシリウスとリリの婚約を広めておく必要がある」


「そして、王妃様のお茶会にはリリの婚約者、いやもう()として同席しろ。お祝いだ」


 陛下と王妃、アレッドにシリウスが報告をすると、三人は喜び祝いの言葉を掛けてくれた。リリのことを可愛がっている王妃は、すでに結婚式に思いを馳せている。そしてやはり、最後はアレッドとクラウスの結婚について話は飛び、苦笑いして誤魔化す二人を見ることになった。




 オーキッド・フォン・パルマン辺境伯が王都に来るまで、あと2日。


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