Kapitel.3
翌日。予想通り沙紀は真央や佑月に話しかけてきた。真央とは席が隣なのだから、当然と言えば当然である。
そんな沙紀に、真央は普通に接しているように見える。けれど、佑月は真央が嫌がっているのがすぐにわかった。
「ねぇ、二人とも好きな人っている?」
三人とも弁当を持参している為、昼食は教室で食べる。
食べ初めてから暫くして、沙紀が俯きながらぽつりと言った。
「え?」
佑月が敏感に反応するのに対し、真央はゆっくりと顔を上げて沙紀を見る。その時、真央の顔が少し険しくなったことに誰も気が付かなかった。
「え、いきなりどうしたの?」
「私恋話好きなんだよー」
俯いていたときとは違って、明るく沙紀が言う。
「ね、二人ともいないの?」
そんな沙紀を見透かすように見た真央が、沙紀に訊く。
「沙紀はいるの?」
「え」
真央に訊かれ、沙紀の顔が少し曇ったことには二人とも気付いた。
そんな沙紀の反応に、佑月が今にも身を乗り出すかのように言う。
「いるの!?」
「え、いるってわけじゃないけどー」
沙紀が佑月の視線から逃れるように俯きながら言う。
「振られたわけ?」
真央は既に興味をなくしたのか食事を再開しており、沙紀の顔を見ずに訊く。
「いやぁ、振られてはないけど。てか片思いだし、想いも届くはずないし。でも、初恋なんだよね」
沙紀は無理に笑って見せる。
真央と佑月は顔を見合わせた。
「ま、この話は良いや」
自分で始めた会話を、沙紀はほぼ強制的に終了させた。