Kapitel.1
あれから二年経って、吉岡真央は高校生になった。真央の親友である松本佑月と一緒の高校である。
電車を降りて、昨日と同じ道を歩く。
「本当に良かったよね、二人で同じ高校行けて!」
佑月が本当に嬉しそうに言う。
「私も安心したよー。入学式も終えたし、夢じゃないよね?」
「これが夢だったら困るよ!」
「しかも同じクラスじゃん、最高だね!」
何気ない会話を繰り返していると、すぐに高校へと着く。教室には、まだ数人しかいなかった。
真央と佑月は出席番号順では前後であるから、出席番号順で並んでいる席も前後であり、真央は一番後ろの席である。
二人が話していると、教室にも人が入ってきた。
「お、相変わらず二人は早いな」
そして、佑月の席の隣である高野秀も登校してくる。
「にしても、二人とも凄いよね。保育園から高校まで全部一緒で、小学校からずっと同じクラスでしょ」
真央が冷やかす。
「知るか。大体、なんでお前この高校にしたんだよ」
「あら。あたしがどの高校に行こうと自由でしょ」
「ついてくんなっつーの」
「なんであたしがあんたなんかについていかないといけないのよ」
「つか、お前よく合格したよな」
「そりゃあ、私もやればできるんだもん」
「真央も苦労しただろ」
「うん、凄く」
秀が真央に同情するかのように言う。真央は、笑顔で返した。
「何よぉ、二人で組んであたしを苛めようっての」
「別にー。本当のことだもん」
「でもお前、入学したのはいいけどこれからが大変だぞ」
「わかってるよー。高校生だしね、あたしも本気で勉強するんだから」
「信用出来ねー」
「大丈夫よ。私が無理矢理にでも勉強させるし。それに、赤点なんて取ったらどうなるかわかってるよね」
そう言って、真央は佑月に不気味に笑ってみせる。佑月は顔を引き攣らせて笑った。
「ま、本人にやる気が感じられなかったら見放しちゃうかもしれないけど」
「頑張る!頑張ります!」
「いーなー。俺も真央に教えてもらおっかな」
「駄目ー!真央はあたしのものなんだから」
「いつからだよ」
佑月の言葉に、真央と秀の声が重なった。
「でも、私ももう教えてあげられなくなるかもよ。高校生だし、それなりに難しくなるだろうしさ」
「いや、佑月には中学生の復習が必要だろ」
「……、悲しいな」
その時、授業開始を意味するチャイムが鳴った。