表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラックなショートショート集  作者: 上津英


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
56/59

56 シスコン王子と呪い姫

 その王国のお姫様は呪われていました。

 姫は白痴はくちだったのです。勿論皆に嫌われています。この国に姫の居場所は無いのかもしれません。

 でも姫は今日も笑っています。


***


 優れた魔女でもあったお妃様の命と引き換えに生まれた姫。

 姫は呪い姫と呼ばれては蔑まれ、王様ですら娘を嫌っていました。

 魔力もあまりない、文字が読めない、計算が出来ない、礼拝堂で騒ぐ、ナイフフォークが使えない、器量も良くない、口が軽い……呪い姫と同い年の令嬢はとっくのとうに嫁いでるのに──王様は全てが許せなかったのです。


「とうさま〜」

「ノックもせずに入って来るな馬鹿! あっちへ行けこの呪い姫!」


 そうやって虫けらを見るような眼差しを向ける王様を、会議室で、書斎で、家臣達は何度目にした事でしょう。

 でも。

 その度。


「まあまあ父上、そう怒らないであげてください」


 リグナム──12も離れた妹を溺愛している事で有名な第1王子──がその場を諌めるのです。


「あーにいさま〜っ!」

「私が絵本を読んであげよう。ほら、こっちにおいで」

「うん!」


 大好きな兄の言葉に呪い姫は元気良く頷き、くるっと部屋から出て行くのです。


「ふう……リグナムが居て助かるな……本当はあんな奴構って欲しくないんだが……あいつの遺言が無かったらあんな奴……」


 リグナムは妹と違いとても優秀でした。

 魔法の才能は申し分ない。

 魔法騎士団長であり眉目秀麗、品行方正で政治能力もある。王様の自慢です。

 唯一不満があるとしたら、シスコン王子と囁かれる程呪い姫を溺愛している事だけ。


 部屋に2人で良く居て姫の世話を焼いたり。

 笑顔が見たいから、と立派なドレスを仕立ててプレゼントしたり。

 王様がわざと呪い姫にだけ粗末な食事を出しても、リグナムは自分の豪華な食事と交換してしまったり。

 自分を大切にしてくれる兄が、呪い姫は大好きでした。


「本当に。王子はちょっとシスコンすぎますなあ……」

「全くだ」


 兄の後をひょこひょこ着いて行く呪い姫。

 2人を見ながら王様は息をつくのでした。




「そして見事フェニックスの羽を手に入れたお姫様は――おや、寝ちゃったかい?」


 ぬいぐるみだらけの呪い姫の部屋。

 血のように赤い表紙の絵本を読み聞かせていたリグナムは、いつの間にか隣で眠ってしまった呪い姫に視線を向けました。


「疲れた顔をしているね……」


 机に頬をつけて眠っている呪い姫は、ピクリともしません。まるで死んでいるかのようです。


「……ふふっ」


 それを見てリグナムは満足そうに笑い、開きっぱなしだった絵本をパタンッと閉じました。

 この絵本はお妃様の遺品です。

 そしてこの絵本、実は魔力吸いの呪力があるのです。

 この絵本を読み聞かせられると、魔力を吸い取られてしまうと言う。

 素質ある愛息の地位を確立させるべく息子と共謀し、禁忌を破って己の命と引き換えに呪いを成功させたお妃様。それもこれも、娘の魔力をリグナムに吸わせる為に。

 姫を身篭っていた頃から読み聞かせていた為、呪い姫は白痴になってしまったのです。


「私の可愛い可愛い呪い姫……明日も絵本を読んであげるよ」


 リグナムはそうほくそ笑み、機嫌を取る為に次は何をプレゼントしようかと考え始めました。

 隣で寝ている呪い姫に、毛布の1つもかけずに。


***


 その王国のお姫様は呪われていました。

 姫は白痴だったのです。勿論皆に嫌われています。この国に姫の居場所は無いのかもしれません。

 でも姫は今日も笑っています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ