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現は見えない



「僕が誰だか分かるなら、君は既に人ではなくなっている」



知らないことが正しいんだよ

そう言って、少年は目を細めて笑う


一体、どういうことなのだろう

知らないことが正しい?



「そう。君は僕を知らない」



君のことを知らない

なら、君は誰

君はこっちのことは知っているはず



「…なぜ、そう思うの?」



他にも席が空いているのに、わざわざ知らない人の目の前に座るなんてよっぽどの変わり者でしかないだろう

そんな意を述べて最後に彼を睨む



「そんなに怒らないで」



まるで人を硝子人形のように見透かしておいて、よくそんな穏やかな顔ができるのか

こっちも思わず、子供みたいに膨れっ面になってしまう

そんな様子を見て少年はまた笑う



「ああ。僕は君を知っている」



一方的に、片想いみたいに

君が生まれる前からずっと


今度は反対に、悲しそうな表情をした

酷く儚げであるが、彫刻のように美しい顔で



「君は僕に気づくことはおそらく無い」



一生ね


突然少年はそう言いやった

その言葉は、やけに耳に残る


気づくことはない

何故そう言い切れる



「言っただろう。君は僕を知らない」



これからも、知ることは無い。教えることも


……そんな暗い顔で言うくらいなら、教えてくれればいいのに



「けど、共に行動することはできるよ」



なら、素性を明かしてもらわないと

こっちを一方的に知られても、気味が悪いだけ



「本当にそう思うなら、もっと不満そうな顔をしてくれないか」



目が死んでるよ


少年は眉尻をこれ以上無いだろうというくらい下げていた


なんで、君がそんな悲しそうな顔するのさ


少年はゆっくり立ち上がり、何かを決心したかのように窓越しに動く星空を見る

そしてこちらを向き、右手を出した



「共に行動するのは不満かもしれないけど、君のためだ。これからよろしく。僕のことは……まあ、好きに呼んで」



先月亡くなった、犬の名前でも何でも。



背中が急に寒くなった

何故、何故、何故、何故!?

どうして……それを……







「君を知っている」






そう言っただろう?








少年は再び、穏やかな表情を見せた






久しぶりの投稿です。

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