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8.見つめ合うと素直にお喋りできない?

遅くなってすみません!!


これからもよろしくおねがいします!


水音に誘われて俺がやって来たのは、半径約20メートル程の湖であった。

しかしただの湖ではない。

その湖はとても美しかったのだ。

水の近くまで行き、水面を覗くと、底が見えそうなくらいの透明度に驚く。念のため水を手で(すく)って臭いを嗅いでみるが、特に異臭などはしなかった。


「飲んでよし、洗ってよしとはありがたいな。ま、俺にもようやく運がまわってきたのかねぇ」


そう思わなければやって行けない俺であった。

如月聖也、心の一句。


「……虚しいな」


せめて話相手が欲しいと切に願う。


そんなことを思っていると、ふと違和感をおぼえた。

何だ何だと考え、ピンときた。


「そういや、敵がいねぇや」


そう。俺はここまで来るのに結構戦闘をしたのだ。

この化物の森(仮)は、魔物が桁外れに強いだけでなく、エンカウント率がやたら高いというクソゲーもヌルゲーのように感じるほどの鬼畜仕様なのだ。


具体的に言えば三歩も歩けば敵が襲いかかってくる。

ポケモ〇で例えるなら、序盤から街を出て三歩歩く事に野生のレベル100モンスターが先制攻撃を仕掛けてくるぐらいの勢いだ。


ゲーム内ではゴール〇スプレーを使えば良いだけだが、生憎そんな便利なものは現実には無いのである。


話が逸れたが、だからこそこんなに長時間考え事に集中できるのはおかしく思えた。

それにおそらくここはダンジョン内では貴重な水場だ。

争いあっていてもなんらおかしくはない。

が、現実には魔物一匹出てきやしない。

それが余計不気味に思えるのだ。


「きっと魔物もこの美しい景色を見て戦意が薄れたんだろう」


僅かな希望をもって、俺は笑みを浮かべた。

ここはみんなの憩いの場。

ここにあるのは争いではない。

そう。それはまさに……………、


「ラヴ&ピーーーーースッ!!」


……………………。

…………………………………。

………目、合っちゃった。

誰とかって?

ははは!水面から顔を出した水龍とだよ!ハッハッハ、HAHAHAHAHA………。


パチッ。


「ごめ~んね?」


とりあえずウィンクして、茶目っ気を込めた謝り方をした。


………………。

暫し俺は赤い瞳と見つめ合った。

時間が無限のように感じられ、知らず俺はゴクリと生唾を飲み込んだ。


俺が、行けんじゃね?と思い始めた頃、硬直は解かれた。


「ギャアアアアアアアッッッ!!」

「ですよねー」


縄張りに侵入され怒り狂った水龍が形容し難い咆哮をあげ、襲いかかってきた。





激怒した水龍はまず全力のブレスを放ってきた。


「グルァアアア!」

「危ねッ!?」


レーザーのように圧縮された水が、瞬きする間に俺へと迫ってくる。

咄嗟に転がりつつもなんとか躱したが、レーザーの通った場所を見てギョッとした。


「おいおい、マジかよ……」


レーザーは圧縮されたと言っても直径は50センチはある。

そのレーザーの幅と全く同じ幅の底の見えない穴が地面に形成されていたのだ。

………こりゃ、また面倒臭い相手だな。

やはり俺はついていない。

そんなことを考えている間に二発目がきた。

狙いをつけられないように、上昇したステータスに任せて湖の周りを走り回る。

レーザーは付かず離れず俺を追ってきた。


「さて、どうするか……」

湖の半径は約20メートルある。

中心にいる水龍まで跳べなくはないが、一撃で決められなければ湖へダイブしてしまう。

水の中で戦闘すれば間違いなく奴に軍配が上がるだろう。

だからできれば水中戦は避けたいところだ。

ならどうするか。

おそらく今の俺は3日間全力で走り続けても大丈夫なくらい体力がある。

あのレーザーは湖の水を使っている筈なので、湖の水が無くなれば打てなくなるはずだ。


とりあえず俺は気長に全力疾走しながら待つことにした。






………………。

………………おかしい。


かれこれ10分くらい走っているが全く湖の水が減らない。

それどころかレーザーでどんどん湖が大きくなり、何故か水の量も増えている。


そしてこれだけ水龍が暴れ回っているというのに、全く水が濁らない。

結論。


「ただの湖じゃねぇな……」

「グルァアアア!」

「うっせぇ!てめぇは黙ってろ!アメーバ野郎!」

「グルァアアアアアア!!」


ますます水龍の攻撃は激化した。

この十分、何もせずただ走り回っていたわけではない。

奴が近距離戦を仕掛けてきたとき、その長い胴を蹴り飛ばしてやったのだ。


結果は激しい水飛沫が上がっただけであった。


水龍は全く俺の蹴りを意に介さず、再びブレスを放ってきたのだ。

そしてまた走り回り、幾度となく蹴りを繰り返したが、ダメージは全く与えられなかった。

しかし、やつの目を狙って蹴りをはなったとき、庇うような仕草を見せたことから弱点はおそらく目だという予想は立てられた。


だがしかし。

一度目を狙われたからか、水龍は近接戦闘をしてこなくなった。

こうなれば今や半径30メートルほどとなった湖に俺は成すすべが無い。


………いや、ある。

ひとつだけ思いついた。

今、俺の走り回っている辺りにはレーザーにより伐採された木が大量に散らばっている。

なら………。


「こんなのはどうよ!!」


レーザーの止んだ瞬間を狙って、俺は近くにある巨木を片手(・・)で持ち上げ、思いっきり振りかぶり、


――――――投げた。


「どりゃあああああッッッ!」


巨木は真っ直ぐ俺の狙い通りに水龍の顔面目掛けて飛んでいった。

これにはブレスを溜めていた水龍も堪らず回避を優先した。


しかし、ここで水龍はやってはいけないミスをした。

戦闘中、相手から目を逸らすという一番してはいけないことを。


水龍が視線を戻した時、そこには既に相手の姿は無く、強い力で作られた円形のクレーターのみが残されていた。


水龍は長年の経験により、気配を探り、相手を見つけた。

もっとも、気付いた時には手遅れであったが。


「セぇえええやぁああああ!!!」


最期に水龍が見たのは、きっと太陽を背に巨木を振りかぶる俺の姿であろう。


水龍は伝説の武器などではなく、少々丈夫な木で退治されたのだった。




「いやっほーーい!」


ザブーーーン!


水龍を無事討伐した俺は湖に落ちてびしょ濡れになった。

どうせ水浴びをするつもりだった俺は素っ裸になってこうして湖へ飛び込んでいるのだった。


「いやぁ~。ひと仕事終えたあとの水浴びはたまんねぇなー」


どんどん身が清められていくのが分かり、まさに爽快MAXである。


「にしても全然濁らねぇなぁこの水」


素足で地面を軽くこすってみるが、全く砂が巻上がらない。

本当に不思議な湖である。

少し気になったので、俺は素潜りで何処から水が湧き出てくるのか、調査してみることにした。


「そんじゃ、行ってみよう!」


息を吸って、思い切って潜る。

潜ってみて改めてこの水がどれだけ綺麗なのか思い知った。

深さはそれ程でもないが、それでも海底から4、5メートルはある。

にも関わらず、海底の砂がくっきりと見えるのだ。

いくら俺の目が良くても普通の湖ならこうはならないなと思いつつ辺りをゆっくり見回す。

すると、湖の中心の水底に、台座に嵌められたサファイアのようなものと、大きな扉のような物があることに気がついた。

ゆっくりとそこへ近づきつつ、鑑定をしてみる。



聖水の大魔石

・遥か昔から聖龍レヴィアタンにより管理されてきた魔石。レヴィアタンの強大なる魔力が魔石化したもの。魔力を込めると大量の聖水を生み出すことができる。また、生み出された聖水には、状態異常、疲労、魔力、体力の回復効果と、病、傷、闇属性魔力の浄化効果がある。



がぼがぼ(マジかよ)!?」


とんでもない代物だった。

思わず水の中だと忘れて叫んでしまった。

ついでに扉にも鑑定をかけておく。



最下層への扉

・ダンジョンの最下層に繋がる扉。

下には階段が隠されており、魔石を外すことで扉が開く。



ほほう。

最下層ということはいよいよこのダンジョンともおさらばできるのか。

ならば急いで出るべし!

内心の喜びを隠せず、俺は魔石をよく考えずに取った。


ところで皆様。

お風呂を洗ったことがあるだろうか?

風呂を洗う際、まず我が家では洗濯機へできる限り汲み出す。

その後、どうしても汲みきれない汚れた水が残ってしまう。

あれがうざいんだよなぁ。

だってほんのちょっとなんだよ?

後もう少し頑張れよ洗濯機って言いたくなるだろ?

でさぁ、仕方なくお風呂の栓を抜いて水をを流すわけですよ。

栓を抜いたら水が穴に向かって殺到するじゃん?渦巻きできるじゃん?


え?何が言いたいかって?

ハハハ!


ぢぬぢぬじ(死ぬ死ぬ死)んじゃううううう!ゲボグボッ!?」


以下放送禁止。

………同情するなら酸素くれ。






「ぜえぜえ………なんておそろしい…ハァ……トラップなんだ……おえっ」


長きに渡る戦いをようやく終えた俺は素っ裸で階段の横に倒れて激しくえづいていた。

あの後、必死に開いた扉のへりに捕まり、なんとか吸い込まれるのを逃れたのである。

その時間、約5分。

強化された肺活量が無ければ出来ない戦いだった。


「途中で木が来た時は死を覚悟したぜ。くそ、巨木よぉ……お前は一緒に水龍を倒した仲間だったじゃないか!相棒だと思っていたのは俺だけだったのか!!」


為すすべもなく吸い込まれたかつての巨木(相棒)へ恨み言(?)を言う俺は傍からみたらただの精神異常者なのだろう。


一つ大きな溜息を漏らし、アイテムボックスを開く。

命懸けで守り抜いた聖水の大魔石を仕舞い、宝箱にあった漆黒の纏衣一式を取り出した。

着替えが流されたのでどうせなら新しい性能のいい服を着ようと思ったのだ。

そしていざ着ようと思った時、俺は気付いた。


「ん?そういやこれパンツついてんのか?」


…………。

とりあえず無言で着用した。



最後に靴紐を結びコートに袖を通した俺はその場で軽く動いてみた。


「悪くない、悪くないぞ!」


一部分以外は!と言いかけたが、虚しいのでやめておいた。

街についたら速攻でパンツ買おう。

もうこの際女物でもいいから。


冗談だから引くなよ?


漆黒の纏衣一式は股下がスースーする以外は素晴らしい着心地である。


「靴下ついてんのになんでパンツついてねぇんだよ。一式とか詐欺じゃね?はぁ、もういいや。気を取り直して出発進行!」


俺は暗闇へと飛び込んだ。

さあ、あと少しで外だぜ!


「外を目指して、いざ行かん!」


テンションの赴くまま猛スピードで俺は階段を駆けおりた。









「なんで扉がふさがってんだよぉ~!」


三分後、テンションMAXだった俺の目の前には巨木で封じられた扉が鎮座していた。

救いといえば、水が股下までしか無いことだ。

もっとも、新調したばかりの靴はもう既に浸水してしまって大変気持ちが悪い。

それに高さ的に浸水した部分はまるで催してしまったかのようにも見える絶妙な高さだった。


「もういやだぁああああああ!」


まさに前途多難である。







如月聖也 17歳 人族 Lv.99(召喚者上限)


職業:???(覚醒)



HP:25000/25000 (召喚者上限)

MP:25000/25000(召喚者上限)

ATK: SSS(召喚者上限)

DEF: SSS(召喚者上限)

AGI: SSS(召喚者上限)

DEX: SSS(召喚者上限)

VIT: SSS(召喚者上限)


スキル:

・???(覚醒に伴い変化)

・BP操作 現在BP:20156

・超再生 ・刀術 Lv.35

・隠蔽 ・鑑定

・アイテムボックス


所持品

・漆黒の纏衣一式 ・聖水の大魔石

・その他(魔物の素材諸々)



次はようやくダンジョンのボスです。


果たして何が出るのやら……。


お楽しみに!


そして一作品目のなろうコンの結果が今日発表です!

どうなることやら……(^_^;)

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