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6.鷲と獅子に解体?

おかしい。


ブクマ件数600突破!


日間ランキング14位!


ありがとうございます(≧∇≦)



それと学年召喚からクラス召喚に修正致しました!

またそれにともない、生徒の人数を42、教師の人数を12に減らしました。


感想くださった方ありがとうございます!

これからもよろしくおねがいします(^^)




「第2ラウンド、始めようか」

「GYAAAAAAOOOO!!!」


俺の宣言にグリフォンが怒気と殺気を飛ばしてくるのが分かる。

そして最初と同じく目にもとまらぬ速さで俺の目の前へ接近し、鉤爪を振りおろしてきた。

俺はそれを避ける…………のではなく真っ向から受け止めた。


片手で。


「信じられん……」


後ろから雨宮さんの驚愕の声が聞こえてくる。

俺は期待に応えるべくグリフォンの振りおろされた鉤爪を徐々に上へと押し上げていった。


「さっきから……」


俺の受け止めた片腕を伸ばしきったところで。

一気に懐へと踏み込む!


「ワンパターンなんだよ!!」


そして拳を振り抜いた。

ドパン、とダンプカーに衝突されたかのようにグリフォンが吹き飛ばされていった。

壁にクレーターを形成し、ようやく止まった。


「痛っ!?」


不意に俺は拳に痛みを感じた。

見ると、拳の皮がベロりと剥けていた。


「……こりゃ徒手空拳は無しだな」


途中、俺は取り落としたカットラスを拾い上げ、先ほどの意趣返しのようにグリフォンへと歩いていく。

あらん限りの殺気を向けながら、緊張した様子もない軽い足取りで。

やがてグリフォンが倒れている10mほど手前で立ち止まると。


「立てよ」


挑発した。


「お前色々混じりすぎなんだよ。鷲とか獅子とか。少しは統一感だそうぜ」


前方で怒気が膨れ上がるのを感じる。

俺はニヤリと嗤い。


「俺が切り分けてやるからかかって来いや!」

「GYAAAAAAA!!!」


怒り狂ったグリフォンは猛スピードで突進してきた。

どうやら翼を痛めたら飛べないようだ。


俺はそれをヒラリと躱し、すれ違いざまに貫かれていない方の翼を切り落とした。


「飛べないグリフォンはただの獅子ってね」

「GUURAAA!!?」

「おっと!」


痛みと怒りで冷静さを欠いたグリフォンはめちゃくちゃに前足を振りおろしてくる。

俺はすべてを見切り、回避していく。


すると、グリフォンは突如嘴を開けた。

俺は嫌な予感がし、身構えた。


「GYURUAAAAA!!」


嘴から放たれたのは風の奔流であった。

それがグリフォンの突進よりも速く俺へと襲いかかってきた。


「おいおいマジかよ!?」


俺は咄嗟に上へとと全力で跳んだ。

その判断は正しかった。


ブレスが通った後の地面が削り取られていたからだ。

あれでは血の強化があってもミンチにされていただろう。

まあそれでも治るのだが……。


全力で跳んだ為か天井にまで届いてしまいカットラスを突き刺して減速。

宙ぶらりんの状態から足を振り上げ、天井に刺したカットラスを支点にぐるりと半回転。

重力に逆らうように天井を地面にして立つ。

そのまま膝を曲げ、天井を足場に一気にグリフォンへ跳ぶと同時に刺してあったカットラスを天井から抜き去る。


ブレスで殺したと思っていたのか、グリフォンは俺の気配に気づくのが遅れた。

咄嗟に前脚の鉤爪でカットラスを防ごうとするが遅い!


「セぇぇやぁああああ!!」

「GRUU!?」


俺は翳した前脚を切り落とした。


「はっ!」


固まっている隙にもう片方の脚もいただく。

前脚の支えを失ったグリフォンの巨体は前へと倒れてくる。

俺はヒラリと一回転して躱し、遠心力を乗せた一撃を穴の空いている翼の根元に叩き込む。

グリフォンから大量の血が噴き出し、俺にシャワーを降らせた。


俺は止まることなくそのままグリフォンの後脚も切断し、胴を潜ってもう片方の後脚も切り落とした。


「GYAAAAAAA!!!?」

「いい感じにスッキリしたじゃないか」

「GYA!?」


四肢の失くなったグリフォンの背に跳び乗り、カットラスを掲げる。

グリフォンは必死にもがき、振り落とそうとするがその程度で落ちるほどヤワではない。


「さあ。後はその狙いやすい首だけだな」

「GAAARUU」

「その首……貰い受ける!!」


次の瞬間。


巨大な鷲の首が宙を舞った。








「はぁ~、つ、疲れたぁあああ!」


戦闘を終えた俺は思わずその場にへたりこんだ。

緊張の糸が切れ、疲れがどっと押し寄せたのだ。


「おっと、こんなことをしてる場合じゃない!」


そうだ。雨宮は負傷しているのだ。

早く手当てしなければ。

疲労している体に鞭を打つように強引に立たせ、雨宮の方へ向かおうとすると、ちょうど前方から雨宮がひどく頼りない足取りで向かってきているところだった。


「雨宮。大丈夫か?」

「ポーションを使ってなんとかな。それより……なぜ力を隠していたのだ?」


雨宮は少し目を細くし、疑うような眼差しを俺に向けてきた。

そのことにショックをおぼえるが、無理もないと思い直し説明をすることにした。


「…………分かった話そう。だが、約束して欲しい。このことは他言無用だ」

「……了解した」

「ありがとう」


俺は一度目を閉じ、深呼吸をしてからありのままを話した。

この世界に来て得たスキルは3つであったこと。

それが血を流せば強くなるスキルと細胞さえ残っていれば再生できるというスキルであったこと。

帝国への不信感。

利用されるかもしれないという恐怖。


「……最近教師連中がやたらシルヴィアのことを恐れている気がする。ますます帝国への不信感が募って言い出せなかったんだ。いつも俺の味方をしてくれてたのにすまなかった雨宮」

「そうか、そうだったのか。それなら仕方が無いな。こちらも疑うようなことをしてしまってすまなかった。いささか配慮が足りなかったようだ」

「いや、雨宮が謝ることじゃないさ。言い出せなかった俺が悪い」

「何を言っている。それを言うなら察せなかった私が……」

「いやいや俺が……」

「……」

「……」

「プッ……」

「くっ……」

「あははは!」

「はははは!」


俺らはしばらく笑い合い、落ち着いたところで雨宮が切り出した。


「やはり聖也君も帝国は怪しいと考えていたか」

「やはりってことは雨宮も?」

「ああ。そもそも君が何をされても放っておかれてる時点でおかしい。もしかすると久保田君のようにシルヴィアも君を邪魔だと感じているのかもしれないな」

「王女だけじゃない。たぶん王宮のすべての人がそうだ」

「となると君は今後なんとかして国外へ逃げた方がいいかもしれない」

「俺もそう考えている」

「逃亡の際には協力しよう」

「それは嬉しいけど気持ちだけ受け取っておくよ。雨宮がそれで睨まれたら嫌だしね」

「…………あるいは君との逃亡生活もありかもしれんな」

「ん?どうした雨宮?」

「なんでもないさ。それで、後後(のちのち)のことより今はここをどう出るかを考えるとしよう」

「んー。でもここボス部屋だよね?だったら勝手に開くはずだけど……ってあれ?グリフォンの死体どこいった?」


ふとグリフォンが死んでいた場所を見ると、小さな箱が落ちてる以外にあるべき死体ものが無くなっていた。

すると雨宮が呆れたように言った。


「君はシルヴィアの説明を聞いてなかったのか?ダンジョン内で倒した魔物は一定時間経つと消えてしまい、稀にドロップアイテムを落とすことがある」

「あはは。忘れてた」

「しっかりしてくれ」

「……すまん」


面目次第もないが、この場合おそらくあの落ちてる箱がドロップアイテムなのだろう。

俺は近づいて箱に触れると、箱は輝いて消え、中からモノが出てきた。

それは(かんざし)であった。

雨宮がそれを見て一言。


「ほほう。これは見事な簪だ。これほどの代物はなかなかお目にかかれない」


そんなにすごいものなのか。

でも俺使わねぇしなぁ。

いいや、あげちゃえ。


「良ければ譲るぞ?」

「本当か!?」

「あ、ああ」

「ありがとう聖也君!」


そう言って雨宮は手際よく髪を結び、簪を刺した。

正直言ってよく似合っていた。


「よく似合っている」

「そ、そんなストレートに言われると、その、照れるぞ?」


……え?俺声に出てた!?

めっちゃ恥ずかしいぃ!

まあでも正直な感想だし別にいいか。

本人も満更では無さそうだし。

これで良かったんだようん。


すると不意に雨宮が前方を指さして言った。


「?聖也君。あの光っているものはなんだ?」

「ん?なんだろうな。行ってみるか」

「ああ」


俺達は光の元へ向かった。




そこには台座があり、中央には宝箱が鎮座していた。

どうやら光の正体は宝箱だったようだ。

雨宮が慎重に近づき、チェックをする。


「罠か?」

「にしてはあからさま過ぎる気がするな。まさかフロアボスだったとか?」

「たしかにありえなくはないかもしれん」


フロアボスとはダンジョンの10階毎に現れるボスだ。

普通のボスとは異なり、かなり強力なモンスターが出てきたりもする。

そしてそいつを倒すと宝箱が現れ、中には魔道具や武器、防具なども入っているという。


グリフォンは普通の階層でボスなどやるモンスターではない。

よってフロアボスの可能性があると予測したわけだ。

俺は覚悟を決め、宝箱に手をかけた。


「開けるぞ?」

「うむ……(ゴクッ)」


雨宮が見守る中、俺は宝箱を開けた。


「……服?」


中に入っていたのは黒いコートやズボン、上着などであった。

俺はそれを手にとろうと手を伸ばすが……。


「待て」


雨宮に止められた。


「呪いの服かもしれん。不用意に触るべきではない」

「それそうか……あ!」


何か確かめる術はないかと考えているとふと思いついた。


「む?どうした聖也君?」

「あ、ちょっと待ってて」

「う、うむ」

「ステータスオープン」


俺はステータスを開き、見た。



如月聖也 17歳 人族 Lv.26


職業:腹切侍(はらきりざむらい)



HP:5256/5256MP:516/516

ATK: S

DEF: A+

AGI: SS-

DEX: S+

VIT: SS


スキル:

・侍の最期腹切り ・BP操作 現在BP:1156

・超再生 ・刀術 Lv.19

・隠蔽



え?

なんで?

最高S+ってシルヴィア王女言ってなかった?

それがなんでSSなんて出てきてんの?

あれか?もしかして人類最高とかそういうオチ?

はは。生まれてこのかた17年。

母ちゃん。俺、人間辞めちった。

………………まあ、今はおいておこうじゃないか。


さて、気を取直して俺が考えついた方法は…………お!あった。


・鑑定 消費BP: 150


しかし意外と消費ポイントが多いな。

これはBPも考えなしでは使えないな。

とりあえず追加。


よし。残り1000ポイント。

そしてもう一つ欲しいのが……あった!


・アイテムボックス 消費BP: 1000


あったけど高っ!?

し、仕方ない。

所持ポイントはほぼ尽きるが追加だ。


しばらくBPは貯めておこう。

うん。

俺はステータスを閉じた。


「よし!準備完了。『鑑定』」


別に言う必要は無いのだが、こう言うのは雰囲気だ。

……ちょっと恥ずかしかったが。

ゴホン。さて気になる鑑定結果だが。



漆黒の纏衣一式


闇夜に溶け込むような色の防具にもなる服。

防刃、防水、防寒、防暖に優れている。

自動修復機能付き。

作者不明。材質不明。



めっちゃ高性能だけど名前が厨二病みたいだ。

てか怪しすぎだろこれ。

まあ気に入ったし、貰えるものはもらっておこう。


俺は漆黒の纏衣一式をアイテムボックスにしまった。

ここで着替えるわけにもいかないでしょ?


「便利だなぁ君のスキルは」


すると雨宮が羨ましげに呟いた。

俺はそれに苦い笑みで答える。


「でもこれを得るには自分の血をたくさん流さなければならない。なってみたら分かるがオススメはしないぞ」

「私も遠慮しておこう」


クスリと笑みを浮かべる雨宮。

するとボス部屋の扉が開く音が聞こえた。


「っ!?開いた!」

「そうだな。これで戻れそうだ」


しかし次に聞こえてきた声に俺は思わず固まった。


「おお~い!誰か居やがるかぁ!居たら返事しやがれぇ~!」


それは久保田の声だった。

さらに複数の足音が中に入って来るのが分かった。


「どなたかいらっしゃいますか~」


シルヴィアの声も続けて聞こえてきた。


「雨宮。悪いがグリフォンは君が倒したことにしておいてくれないか?」

「……何を言ってるんだ君は?無能ではないと証明するチャンスではないか」

「それを言えば理由を尋ねられるだろう。そうなれば利用されるだけだ。俺はまだ、バレるわけにはいかない」

「……分かったそうしよう」

「助かる。お~い、こっちだ!」


俺の声に反応して久保田や木下、シルヴィアがやってきた。

一行は俺の隣にいる雨宮の姿を見るとほっと安堵の溜息をついた。

隣にいる俺を誰も見ようとしない。

けど、それでいい。

その方がやりやすい。


「雨宮さん。無事だったんだね」

「ええ。なんとかね」


木下の問いに無難に答える雨宮。

その木下だが、雨宮のところどころ擦り切れた服装にやや興奮しているようだ。

だらしない表情で雨宮を舐め回すように見ていた。

よく耐えられるな雨宮。


「しかしこの惨状はなんなんだぁ?」


と、辺りを見回しながら久保田が問う。

雨宮は一度俺に目で確認をとってきた。

俺は静かに目で頷いた。


「グリフォンと戦っていたの」


雨宮は俺のゴーサインを確認して最初は正直に話した。


「グリフォンとですか!?」


シルヴィアが驚愕する。

グリフォンに単独で勝てる人間など居ないと思われていたからだ。


雨宮はその後、自分が倒したことを上手く説明してくれた。

しかし限界が来たのか、話し終えたところで片膝をついてしまった。


「アメミヤ様!?」


シルヴィアが駆け寄り、咄嗟に肩を貸す。


「あ、ああ。すま、な、い……」


そこで雨宮は意識を失ったようだった。


「転移結晶を使います。ここではどうやら使用できないようなので、一度外に出ましょう皆さん」


そう言ってシルヴィアは何か魔法を使ったのか、雨宮を軽々と担ぐと、そのままボス部屋を出ていった。

俺もそろそろ限界が近い。

急いで外に出ようとすると、かなり前を歩いていた久保田が急に立ち止まった。

俺は不審に思いつつも、そのまま歩き続ける。

既にボス部屋には久保田と俺しか居なかった。

そこで俺は気付くべきだった。

久保田が嫌らしい笑みを浮かべていることに。


久保田が振り返って俺に言った。


「おい無能!お前どうせ雨宮の後ろに隠れてたんだろう?」

「……ああ。そうだ」

「くくく。やっぱりかぁ。ならよぉ」


そこで久保田はガントレットの装着された手を振りかぶり、思いっきり地面へ叩きつけた。

そう。グリフォンの鉤爪によってクレーターが出来ているところへ。


「間抜けな無能が足を滑らせて奈落に落ち、死ぬってのも有り得るよなぁ?ゲハハハハ!」


叩かれた地面に亀裂が走り、それは俺の周りのクレーターにまで影響を与えていた。

足場が不安定になっていくのが分かる。


「ちっ!?」


咄嗟に跳ぼうと思ったが、限界が来ている足はまったく動かなかった。

このままでは落ちる!?

そう思った瞬間、

地面が崩壊した。


「これは王女様とクラス全員の総意だぜぇ!じゃあな、無能者ァ!」

「久保田ァあああああ!!」


最後に聞こえたのは久保田の鼻につく笑い声であった。


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