第2話 お姉ちゃんからは逃げられない
「もしもし? どうしたのお姉ちゃん?」
「二郎? 今どこにいるの?」
「今友達と買い物をしてるんだけど」
「ふーん……女の子と、じゃないよね?」
「男女二人ずつだよ。〇〇さんと△△さんも一緒」
「へえ、その二人……。あの子たちに『二郎には近づかないで』って言っておいたんだけどな……」
「え? お姉ちゃん、今なんて言った?」
「ううん、独り言。……それより二郎、これからどこに行くの?」
「映画館と遊園地、そのあと近くの温泉に行く予定だよ」
「……温泉。そう、温泉まで行くんだ……
ふふふ……いいね、それ」
「お、お姉ちゃん? 大丈夫?」
「大丈夫よ。ただ、ちょっと予定変更しなきゃなって。……二郎、今あの子たちが持ってるそのバッグ、お姉ちゃんがプレゼントしたものだって知ってた?」
「えっ、そうなの?」
「うん。だから、そのバッグの中に『お姉ちゃんの声』が聞こえる機械が入ってることも、二郎には内緒にしてたんだけど……」
「……え、待って、それって……」
「あ、今みんなで映画のチケット買おうとしてるでしょ? 二郎の分は買わなくていいよ。お姉ちゃん、もう二郎のすぐ後ろの券売機にいるから」
「……え?」
「さあ、帰ろ? おうちで、お姉ちゃんがもっといい温泉、用意してあげたから」
『……それに、もう逃げられない距離にいるでしょ?』
僕はその時、理解してしまった。お姉ちゃんからは逃げられないって。




