↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
48/48

45話 お堅い有能執事、キノスチャン爆誕!

前回のあらすじ。


自然に健康的なトレントが仲間になった

「……というわけで、新しい仲間、エルダートレントのキ(・)ノ(・)ス(・)チ(・)ャ(・)ン(・)だよ! みんな、仲良くやってね!」


 色々あってエルダートレントを仲間にした私たち。

 人型の分身を作り出した彼を連れ、広場で領民のみんなに紹介していた。


「皆様、よろしくお願いいたします」


 キノスチャンは、礼儀正しくみんなにお辞儀をする。


「あら~。礼儀正しいイケオジさんね~」


 ゾヴィ夫人はそう言ってほほ笑む。


「キノスチャンって名前も素敵だわ~」

「ところで、どうしてキノスチャンなんだ?」


 アンナちゃんが疑問の表情を浮かべながら聞いてくる。


「だって、私の執事になりたいっていうから。執事といえばセバスチャンでしょう? そして木の魔物だからキノスチャンだよ」

「意味が分からん。だが、今までに比べれば多少マシだな」


 なんか失礼だなー。

 そう思っている一方で。

 

「え、エルダートレントじゃと……!?」


 ロリーバさんはなぜか、目を見開いて驚いていた。


「ロリーバさん、なんでそんなに驚いてるの?」

「お主こそなぜそんなに落ち着いてるのじゃ!? エルダートレントといえば何千年も生き、強大な魔力を得たトレントの最上種じゃぞ!」

「それはアンナちゃんから聞いたよ」

「現代では存在しない伝説上の存在じゃぞ!」

「へー、そうだったんだ」

「じゃからなんでそんなに落ち着いとるんじゃーー!」



 ロリーバさんが頭を抱えたまま、ガンガンと地面に頭を打ち付ける。

 いや、リアクションが激しい。


「そんな存在がお主に仕えると言っておるんじゃぞ! なぜそんな平然としておられるのじゃ!?」

「うーん、二(・)人(・)目(・)だからかなー?」

「な、なんじゃと……二人目?」

「うん。クインがいるし」

「呼んだかしらぁ?」


 名前を言ったらクインが近づいてきた。


「この、スライムの娘がどうかしたのか?」

「あれ、言ってなかったっけ? クインはスライムクイーンなんだけど」

「……は?」


 ギギギギギっと、まるで錆びたロボットみたいにロリーバさんの首が動く。


「す、スライムクイーンじゃと……?」

「そうよぉ、ウフ♪」


 クインがセクシーなポーズをとった直後、燃料がなくなったロボットみたいにロリーバさんが気絶する。


「「か、会長!?」」


 その後、ロリーバさんはダンさんとエルさんに運ばれていった。

 

「そんなに驚くことかなぁ?」

「いや、あれくらいが普通だと思うぞ」


 アンナちゃんはそう言うけど、いまいちピンとこない。


「ところでクリア様、一つよろしいですか?」


 キノスチャンが話しかけてくる。


「どうしたの?」

「先ほどワシ……いえ、私(わたくし)のことを魔物と呼んでおられましたが、正確には魔族です。お間違いなきようお願いします」


 確か、野性的で本能のままに生きてるのが魔物で、人間みたいに理性的に生きてるのが魔族なんだっけ。

 以前アンナちゃんに説明されたけど、ついつい間違えちゃうな。


「魔族を魔物と呼ぶのは侮辱と捉えられます。今後はお間違いなきよう。わかりましたね?」

「ど、どうもすみません……」


 執事志望だからか、おじいちゃんだからかわからないけど、結構お堅いなぁ。

 あと、口調も丁寧なものに変わってるし。

 

 それから、キノスチャンの歓迎パーティを町のみんなで行い、大いに盛り上がった。


 そして翌朝。


 コンコン。


「クリア様、お目覚めの時間です」

「ふわぁ~……」


 部屋をノックされ、眠い目をこすりながら起き上がる。

 この声はキノスチャンかな?


「入っていいよ」

「失礼します」


 許可を出すと、キノスチャンが礼をしながら入ってくる。


「おはようございます、クリア様」

「朝早くからどうかしたの?」

「はい。本日のご予定について相談したく、参りました」

「今日の予定?」


 そう言うと、キノスチャンは小さなノートを取り出す。


「はい。今日からクリア様のご予定を管理し、日々の生活を滞りなく進められるようにいたします。ですので、クリア様の日課や、今後のご予定、大切にされていることなどを教えていただきたく存じます」


「いや、お堅い!」


 執事としては正しいのかもしれないけれど!

 

 まあでも、従者として私の生活を知りたいのは当たり前だよね。

 なら、町を案内しながら教えてあげればいいかな。

 

 そんなわけで、町を案内がてら一緒に日課のジョギング。


「ま、毎日これは地獄なのじゃ~……」

「まだ……これから仕事が山積みなのに……」

「もう……限界……」


「ほら、もっとしっかり走れ」


 ビシィッ!!


「「「ぎゃぁぁ!!」」」


 昨日と同じように、アンナちゃんが後ろから鞭を振るって、ヒィヒィ言っているロリーバさんたちを走らせる。

 

 一方。


「キノスチャン、大丈夫?」

「はい、問題ありません」


 キノスチャンは汗一つかかず、涼しい顔で私の後ろをついてくる。


「キノスチャンって、体力凄いんだね」

「いえ、これは木で作った体なので、疲れというものがそもそもないのです」

「あ、そういうことか」


 本体は大樹だもんね。

 って、それじゃあジョギングしても意味ないじゃん。


「じゃあ、木にとっての運動って何かあったりするの?」

「運動……でございますか?」

「そうそう」

「強いて言うなら……風に吹かれて枝を揺らすことでしょうか」

「風に吹かれること?」

「はい。木は風に揺られることで、その環境に適した体へと成長していきますので」

「へぇー」


 確かに運動というよりかは成長って感じだけど、木もちゃんと動いてるんだね。


「後は光を受けられる場所へ枝や葉を伸ばすこと、そして水や養分を吸収するために根を伸ばすことですね。後者ならば今も行っております」

「え?」

「昨日から町全体に根を伸ばしているのです。知っての通り、私は土を癒し、自然を回復する力を持っておりますので。まだ時間はかかりますが、町と周囲の緑をいずれ取り戻してみせましょう」

「おー!」


 それは楽しみだね!

  

 そんな話をしながらジョギングを終え、昼食を済ませた午後。

 私はアンナちゃんとキノスチャンを連れて、ドワーフのみんなが建築作業をしている場所にやってきた。


「バルガスさーん」

「おう、嬢ちゃんか、どうした?」


 声をかけると、作業中のバルガスさんが振り返る。


「家作りの進み具合はどうかなって思って」

「ああ、それなんだが……ちょいと時間がかかりそうだ」


 バルガスさんは困ったように頭をかいた。


「なんせ俺たちドワーフは十数人しかいねぇからな。いかんせん人手が足りねぇ。瓦礫を撤去するのも、材料を運ぶのも、組み立てるのも全部俺たちでやらなきゃならんからな」


 そっか。

 家を作る技術はあっても、人数が足りないんだ。


「領民のみんなに手伝ってもらえば? みんな合わせて三百人くらいいるし、十分人手は……」

「……嬢ちゃん、あいつらに力仕事ができると思うか?」

「う……!?」


 まるまる太ったゴブリン。

 痩せ細ったインプ

 骨がすぐ折れる元ゾンビ。


 うん、ダメだ。

 手伝うどころか足手纏いになる未来しか見えない!


「まあ、そういうことだな」

「というか……作業してるドワーフ、十人もいなくない?」

「半分は酒造りだ」

「そっちはいいから家を作ってよ!?」

「何言うんだ! 酒造りが最優先事項だろう!」

「なんでそうなるの!?」


 ドワーフの酒に対する執着が強すぎる!


「うーん……困ったなぁ」

「ふむ。それでしたら、私にお任せ頂けませんか?」


 困っていると、隣にいたキノスチャンがそう申し出た。


「え、何か方法があるの?」

「はい。私は土と植物を操る魔法を得意としております。家を建てる程度であれば、お力になれるかと」

「おいおい、家を作るのはそう簡単なことじゃねぇぞ。本当にできるのか?」

「はい、お任せください」


 キノスチャンは静かにうなずくと、地面に手をかざす。


「皆さん、下がっていてください。『アースウォール』」


 すると、手をかざした地面が光り出し、ゴゴゴッと音を立てて盛り上がっていく。


 土はまるで生き物のようにうねりながら地面からせり上がり、大きな壁へと変化する。

 

「おお!?」

「まだ終わりではございません」


 キノスチャンがそう言うと、更に壁は四方へと広がり、家の形を作っていく。

 さらに土が上へと伸び、屋根を形作ると、表面が滑らかに整えられていく。

 最後に、壁の一部がくり抜かれるように変形し、窓と扉が出来上がった。


「……できました」


 そこには、土だけで作られた小さな家が建っていた。


「ええ!? もうできたの!?」

「……こりゃあ驚いたな」


 すごい魔法を目の当たりにして、私やバルガスさんはすごく驚く。


「土を固め、形を整えただけでございます。この程度でよければ、いくらでも作って見せましょう」

「いや、凄すぎるよ!」

「……さすがエルダートレントだな」


 アンナちゃんも感心する。


「お褒めにあずかり、光栄です。ですが、これだけではまだ不十分でしょう」


 キノスチャンが再び手をかざすと、今度は木の根が次々と地面から顔を出す。

 すると根は形を変え、椅子やテーブル、タンスやベッドなどに変わっていく。


「これで、生活に必要な最低限のものは揃ったかと存じます」


「家だけじゃなくて家具まで!?」


「はい。皆様が快適に暮らせるよう、必要なものを用意いたしました」

「気が利きすぎ!」


 家を建てるだけでも大変なのに、家具まで作れちゃうなんて!


「ガハハハ! こいつぁとんでもねぇ助っ人が来てくれたな!」


 バルガスさんは豪快に笑い、家の壁を強く叩く。

 

「頑丈さも申し分なさそうだな。だが……ちと内装も外装もシンプルすぎて味気ねぇな」

「その点に関しては、専門家にお任せいたします」

「おう、任せとけ」


 そう言って、二人は握手を交わす。


「でもよかった。これなら町の建て直しが早く進みそうだよ!」


 これなら、住民のみんながちゃんとした家に住めるのもそう遠くなさそう!


「ありがとうキノスチャン!」

「お喜びいただけたのであれば、このキノスチャン、至上の喜びでございます」

「だから堅いって!」

 

 こうして、キノスチャンは町の再建に多大な貢献をするのだった。

 うん、すごく頼もしい!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。