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第百九十二話

 


 あれから、現地で篠森さんとは別れ、俺とヴァルは自宅のマンションに帰っていた。


「ヴァルは篠森さんがどんな風に映った?」


 俺の篠森さんへの印象は、感情の起伏が激しいものの、とても強く、優しさも持っている人だ。


 悪性の人間という感覚は全くなく、俺相手であるからかもしれないが、かなり人のことを想っているタイプな気がした。


 山崎さんを振り回したりしているが、振り回してもいい人間を選んでいるように思えたし、あまりにも理不尽なことはしないと予想している。


 正直、Sランク探索者なのだから、もっと傍若無人でもいい気がしているぐらいだ。


「私はからっぽだと、思ったかな」


 どこか遠くに視線を向け、ヴァルが言う。


 いつもの、のほほんとした雰囲気というよりは、少し大人っぽい雰囲気を纏った、見た目に近い雰囲気をしていた。


「そう、からっぽ」


「いや、普通にいい人だと思ったんだが」


「う~ん、そういうことじゃないんだけどね」


(どういうことなんだ?)


 Sランク探索者だから、誰にも理解されないなんてこともあるのかもしれないが、感情があるのだから、空っぽではないだろう。


 俺が理解できていないでいると、ヴァルが俺の両頬に手の平を当ててくる。


「べつに分からないでいいと思う」


 ジッと見てくるヴァルの瞳はいつも以上に濃く見える。


 彼女の瞳はどこまでも青い色であるが、今はどこまで底が深いのか分からない海面を眺めているような気持ちになった。



 ♦♦♦



 Sランク探索者である篠森さんとの摩天楼探索という、普通であれば、まず経験できないようなことがあったわけであるが、それで何か日常が大きく変わるわけではない。


 俺たちは今日も佐々木ダンジョンを探索しようとしており、今回の探索はこのダンジョンの攻略が目標であった。


「佐々木ダンジョンは四十五階層まであるダンジョンです。なので、四十階層を攻略している私たちはあと、五階層分を攻略すればよいわけなのか分かりますね」


 東雲が講師のように、俺たちに向かって言ってくる。


 それに、俺とヴァル、ソフィが頷いた。


 傍から見れば、異様な光景なのであろうが、俺たちにとっては違和感のない状況である。


「このダンジョンは中堅探索者向けのダンジョンですが、最後の五階層を徘徊するモンスターはBランク探索者でも相手にするのは危険なモンスターばかりです。伊藤さんは先日、レッサードラゴンを討伐しましたが、油断はしないように」


「はい」


 本当に肝に銘じます。


 ぶっちゃけ、俺が探索者として活躍できているのは魔術のおかげなので、本当に肝に銘じていないと、バッサリとやられてしまう。


 そこから事前に必要な情報を整理し直し、俺たちは佐々木ダンジョンの探索を開始するのであった。



読者の皆様、いつもありがとうございます。

今後とも、本作品をよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
東雲との過去の確執考えるとヴァルのが正解なんだろうなあ
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