第百八十八話
ワイバーンを蹂躙した後、俺たちは第一階層のより深い場所に進んでいく。
そこでは、【地中ダコ】と呼ばれるモンスターが生息していた。
地中ダコが生息する場所は、ワイバーンたちの生息する域よりも奥であり、個体の強さもより上である。
適正レベルは400ほどであるが、この強さのモンスターが複数体まとまっているので、普通に考えれば、かなり厄介であった。
(地上から十メートルも下で虎視眈々と、こちらを狙っているらしいが)
地中ダコという名称の通り、このモンスターは地中に潜んでおり、普通に目視でいる場所を把握することはできない。
だが、生憎、こちらはモンスターの気配を察知することに長けている。
俺も魔術でいる場所を把握できるし、東雲は俺よりもレベルの高い索敵能力を持っていた。
「伊藤さん、あの草が枯れているところの下にいます」
俺よりも先に東雲が、地中ダコのいる場所を察知した。
東雲の索敵能力が何処まで優れているのかは把握していないが、そのスピードや汎用性を考えると、かなりのものであると考えられる。
当然、それは単にスキルだけでなく、本人の技術、経験によるものも含まれているのだろうが、非常に優れたものを持っていた。
「【アイス・ランス】」
場所を把握すれば、後は攻撃するだけである。
しかし、通常は地中にいるモンスターを攻撃することは容易ではない。
なにせ、地面に使って剣を振るっても、攻撃は届かないし、先手を取ることは難しいのが普通だ。
こういう時にも効力を発揮することができるのが魔術である。
魔術というのは、非常に優れた技術であり、スキル以上に様々なケースに対応できる。
これは、既存のスキルなどをベースに発展してきた技術だからであり、その過程で様々なケースにおける有効な利用方法を確立しているからだ。
「出てきたね」
攻撃を受けた地中ダコが、地面から這い出てくる。
手足を含めると、全長十メートルほどはあるだろうか。
本来は土色の肌を様々な色に変色させながら、青い血を吹き出している。
血が噴き出ている箇所には、氷の槍が突き刺さっており、地中であっても問題なく魔術が発動していることの証左であった。
「【アイス・カタパルト】」
油断せず、俺はより強力な魔術、【アイス・カタパルト】を放ち、追撃する。
アイス・カタパルトは直径一メートルほどの氷の塊を、大砲のように射出する魔術であり、その威力は先程使った【アイス・ランス】よりも遥かに上だ。
これまでも様々なモンスター相手に有効であった魔術であるが、今回は違ったらしい。
(ミスったな)
破壊力抜群の魔術として多用している【アイス・カタパルト】であるが、地中ダコの表面は粘質であり、氷の塊が勢いよくぶつかっても、衝撃が上手く中に通っていないようであった。
選択ミスに思考が止まりそうになるが、こうしたことは、これまでもよくあったことである。
強力な魔術も対象によっては機能しないことを学びに換えて、思考を続けながら、俺は次の魔術を使用する。
(半分検証みたいな感じだな)
魔術の有効性の検証結果は、俺の頭の中にたくさん入っているわけだが、この世界のモンスターにどの程度有効なのかは、自己判断するしかない。
結果として、物は試しに使うようなケースも多いため、過去から現在まで魔術の行使は、半ば実験のようなものとなっていた。
俺は【アイス・ランス】を発動し、十本ほどの氷の槍を地中ダコに突き刺す。
(【アイス・ランス】は有効、【雷撃】も血が出ている際には有効そうだな)
地中ダコは単に地中に潜むだけでなく、土属性の魔法を使ってくる、遠距離攻撃型のモンスターでもある。
元々巨大で手足を鞭のようにして攻撃してくるのも厄介であるが、この土属性の魔法を使えるという点は、攻略時に気をつける必要性の高い項目だ。
(俺も変わったな)
しっかりと相手のモンスターに向き合って、処理ができている。
もしかしたら、篠森さんの圧倒的な強さを目にして、冷静に慣れた部分があるのかもしれない。
(あっ死んでる)
【雷撃】と【アイス・ランス】を交互に撃ちまくっていたら、いつの間にか、地中ダコは息絶えていた。
「さすが、ごしゅじん、ようしゃない」
砂塵が舞う中、ヴァルの言葉が、妙に耳に残るのであった。
読者の皆様、いつもありがとうございます。
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