第百六十五話
その後も第三十四階層まで順調に攻略を進めていった。
現在は、第三十五階層を歩いており、薄っすらと霧が立ち込める中、階層の奥へと進んでいっている。
佐々木ダンジョン、第三十五階層を徘徊するモンスターは、ミスト・ゴブリンと呼ばれており、その正体はゴブリンの形をした霧のモンスターだ。
そもそも、なぜ、ゴブリンの形を取っているのか疑問であるが、モンスターの生態に疑問を投げかけるのは研究者や学者の仕事であり、探索者の領分ではない。
俺が認識すべきなのは、このモンスターが厄介な特性を持っているという事実だけだ。
第三十五階層の適正レベルは花眼人形の時より上昇し、レベル330~360である。
実は、適正レベル自体は前の階層、第三十四階層よりも低い水準となっている。
にもかかわらず、多くの探索者はミスト・ゴブリンの厄介な特性を嫌がって、戦闘を避ける傾向にあった。
その理由は、このモンスターが、九十九回も攻撃を当てないと倒すことができないという理不尽な特性を持っているからである。
しかも、単に九十九回攻撃を当てるだけでなく、攻撃を当てるたびに霧散し、再度ゴブリンの形を作るまでどんなに攻撃を当てても、回数に含まれないという最悪な特性であった。
(ただ、対ミスト・ゴブリンと言えるような魔術があったんだよな)
ただ、幸いなことに、こういうユニークな特性を持ったモンスター相手には、【魔術】というスキルは有効に機能する場合も多い。
魔術は対人間用のものが特に多いが、実験や特殊な条件下で効果を発揮するものも多く存在しているからだ。
ミスト・ゴブリン特効とも言えるような魔術、液体を空間に固定する、【液体固定】という魔術があったのである。
この魔術の本来の用途は実験などの際に、液体を物理法則を無視して宙に固定することができる魔術であるが、この魔術をミスト・ゴブリンに向かって発動することで、攻撃を当ててから霧散するのを防ぐことが可能であった。
つまり、発見次第、【液体固定】によってミスト・ゴブリンを固定し、そのまま、九十九回攻撃を仕掛ける。
そうすれば、戦闘は終了するわけである。
「伊藤さん、見つけましたよ」
東雲があっさりとミスト・ゴブリンの存在を察知する。
このモンスターは霧そのものであるため、薄っすらとではあるが霧が立ち込める、第三十五階層では気配を察知しづらい。
だが、東雲はそんな場所でもしっかりとモンスターの気配を当てるため、基本的には奇襲をされるといったことはない。
(今回の戦闘は流石に楽に終わるだろうな)
俺の予想通り、【液体固定】からの東雲とヴァルの攻撃を浴びたミスト・ゴブリンはあっさりと素材を残して、姿を消すこととなるのであった。
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