第百五十七話
「「うまそう」」
ダンジョン探索を終え、帰宅した俺とヴァルは、四十センチほどの巨大な食用の海老、銀鎧海老に目を光らせていた。
なんと、現在時刻は二十七時、つまり、夜中の午前三時である。
佐々木ダンジョン第三十階層には転移ポータルがあり、なんとかそこまでたどり着いたのであるが、探索を終えた時刻は既に夜中となっていた。
なんとか帰宅した頃には既に午前二時となっており、疲労感が体に押し寄せてきていたのであるが、腹が減りすぎていた俺とヴァルは、冷凍庫にあった銀鎧海老をどうしても食べたくなり、茹でることにしたのである。
銀鎧海老は、佐々木ダンジョン第四階層の鉄鎧海老を品種改良し、高級品として売り出している物だ。
一匹数万は当たり前であり、普段から食べるのは高すぎて敬遠してしまうが、Bランク探索者になって上がったテンションもあり、自分へのご褒美として取り寄せていたのである。
俺は早速大鍋に銀鎧海老を入れ茹でていく。ヴァルは先にシャワーを浴びており、後で交代する予定だ。
そうして、お互いに綺麗になった頃には、茹で銀鎧海老は完成していた。
「「いただきます」」
元は銀色だった殻は黄金色に変色しており、まるで金塊のようである。
恐る恐る、四十センチ超の海老の殻をむいていくと、その中にはよく知る紅白のぷりぷりとした身が詰まっていた。
銀鎧海老の殻は元はモンスターとだけあって硬いが、一般人にとっては硬い殻も、探索者にとってはミカンの皮をむくのと大差ない労力となる。
あっさりと殻を外した俺とヴァルは、大振りのぷりっぷりの身に早速齧り付いた。
「うめぇ」「うまーい」
2人して頬に手を当てながら、その旨味と食感を噛み締める。
大振りの海老特有のしっかりとした歯ごたえに、ジューシーな海老の旨味、食べ応えといい、味といい、探索帰りで食べるとなれば、兵器のような美味しさであった。
「とまらない」
銀鎧海老は、ロブスターのような見た目をしているが、味にはしっかりと繊細さがある。
濃厚な味噌の味は口に運べば、思わず、意識が遠のくほどに旨い。
俺とヴァルは夢中になって、パクパクと食べ進めていき、十分もかからずに二人とも二匹ずつ平らげた。
「わけるか?」
「もういっぴき、ゆでよう」
最後の一匹となったが、ヴァルからもう一匹茹でることを提案されたので、直ぐ了承する。
しかし、この一匹をどちらが食べるのかで、じゃんけんをすることになった。
「「ぽん」」
ヴァルは目を大きく見開きながら、凄まじい集中力でじゃんけんをしている。
(負けてられない)
俺も魔術を使って、動体視力を数倍程度にまで引き上げ、本気のじゃんけんをする。
グー、チョキ、パー、お互いに超人的な動体視力をフル活用したじゃんけんによって、あいこが三十回ほど続き、どっちつかずの状況が続いていた。
(次はグーか、なっ!?)
ヴァルが読みやすい動きでグーを出してきたと思っていたのだが、途中で指の動きは変化し、チョキとなる。
「わたしのかち」
ヴァルが巧みな指の操作でフェイントをかけたことで、俺はまんまと引っかかってしまった。
「$%%$‘(()“=」
深夜テンションで発狂しそうになりながら、俺は泣く泣く銀鎧海老を茹でていく。
しっかりと火を通して出来上がった海老は、先程と変わらない輝きを放っていた。
「いただきます」
思わず二度目の“いただきます”を、言ってしまうぐらい、神々しい。
俺は早速殻をむき、海老味噌に身をべったりとつけてから、頬張った。
(うめぇ)
濃厚な旨味を二重に感じて、脳が多幸感に包まれる。
「アイス、おいしい」
ヴァルは、既に三個目のアイスに突入していた。
お高いカップアイス、バニラ味、チョコ味、抹茶味と好きに食べている。
ヴァルは勿論、俺も冷たいものの食べ過ぎでお腹が冷えてしまう、なんてことはもうない。
(俺も後で食べよう)
俺は茹で銀鎧海老に舌鼓を打ちながら、深夜の宴を楽しむのであった。
読んでいただき、ありがとうございます。
今後とも、この作品をよろしくお願いいたします。




