表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

158/199

第百五十七話

 

「「うまそう」」


 ダンジョン探索を終え、帰宅した俺とヴァルは、四十センチほどの巨大な食用の海老、銀鎧海老(ぎんがいえび)に目を光らせていた。


 なんと、現在時刻は二十七時、つまり、夜中の午前三時である。


 佐々木ダンジョン第三十階層には転移ポータルがあり、なんとかそこまでたどり着いたのであるが、探索を終えた時刻は既に夜中となっていた。


 なんとか帰宅した頃には既に午前二時となっており、疲労感が体に押し寄せてきていたのであるが、腹が減りすぎていた俺とヴァルは、冷凍庫にあった銀鎧海老をどうしても食べたくなり、茹でることにしたのである。


 銀鎧海老は、佐々木ダンジョン第四階層の鉄鎧海老(てつがいえび)を品種改良し、高級品として売り出している物だ。


 一匹数万は当たり前であり、普段から食べるのは高すぎて敬遠してしまうが、Bランク探索者になって上がったテンションもあり、自分へのご褒美として取り寄せていたのである。


 俺は早速大鍋に銀鎧海老を入れ茹でていく。ヴァルは先にシャワーを浴びており、後で交代する予定だ。


 そうして、お互いに綺麗になった頃には、茹で銀鎧海老は完成していた。


「「いただきます」」


 元は銀色だった殻は黄金色に変色しており、まるで金塊のようである。


 恐る恐る、四十センチ超の海老の殻をむいていくと、その中にはよく知る紅白のぷりぷりとした身が詰まっていた。


 銀鎧海老の殻は元はモンスターとだけあって硬いが、一般人にとっては硬い殻も、探索者にとってはミカンの皮をむくのと大差ない労力となる。


 あっさりと殻を外した俺とヴァルは、大振りのぷりっぷりの身に早速齧り付いた。


「うめぇ」「うまーい」


 2人して頬に手を当てながら、その旨味と食感を噛み締める。


 大振りの海老特有のしっかりとした歯ごたえに、ジューシーな海老の旨味、食べ応えといい、味といい、探索帰りで食べるとなれば、兵器のような美味しさであった。


「とまらない」


 銀鎧海老は、ロブスターのような見た目をしているが、味にはしっかりと繊細さがある。


 濃厚な味噌の味は口に運べば、思わず、意識が遠のくほどに旨い。


 俺とヴァルは夢中になって、パクパクと食べ進めていき、十分もかからずに二人とも二匹ずつ平らげた。


「わけるか?」


「もういっぴき、ゆでよう」


 最後の一匹となったが、ヴァルからもう一匹茹でることを提案されたので、直ぐ了承する。


 しかし、この一匹をどちらが食べるのかで、じゃんけんをすることになった。


「「ぽん」」


 ヴァルは目を大きく見開きながら、凄まじい集中力でじゃんけんをしている。


(負けてられない)


 俺も魔術を使って、動体視力を数倍程度にまで引き上げ、本気のじゃんけんをする。


 グー、チョキ、パー、お互いに超人的な動体視力をフル活用したじゃんけんによって、あいこが三十回ほど続き、どっちつかずの状況が続いていた。


(次はグーか、なっ!?)


 ヴァルが読みやすい動きでグーを出してきたと思っていたのだが、途中で指の動きは変化し、チョキとなる。


「わたしのかち」


 ヴァルが巧みな指の操作でフェイントをかけたことで、俺はまんまと引っかかってしまった。


「$%%$‘(()“=」


 深夜テンションで発狂しそうになりながら、俺は泣く泣く銀鎧海老を茹でていく。


 しっかりと火を通して出来上がった海老は、先程と変わらない輝きを放っていた。


「いただきます」


 思わず二度目の“いただきます”を、言ってしまうぐらい、神々しい。


 俺は早速殻をむき、海老味噌に身をべったりとつけてから、頬張った。


(うめぇ)


 濃厚な旨味を二重に感じて、脳が多幸感に包まれる。


「アイス、おいしい」


 ヴァルは、既に三個目のアイスに突入していた。


 お高いカップアイス、バニラ味、チョコ味、抹茶味と好きに食べている。


 ヴァルは勿論、俺も冷たいものの食べ過ぎでお腹が冷えてしまう、なんてことはもうない。


(俺も後で食べよう)


 俺は茹で銀鎧海老に舌鼓を打ちながら、深夜の宴を楽しむのであった。



読んでいただき、ありがとうございます。

今後とも、この作品をよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ