終章 とあるひとりの竜殺し
空高く遠くに見える国がノルディア王国か。右手に竜殺しの槍をしっかり握って、門の前に向かって一直線に降りるんだ! 風が体に打ち付けられる感覚がたまらねえんだ! そして地上に落下する直前にブワッと少し浮く! いつやってもたまらねえ! 俺は相棒の黒い竜、クーリエから飛び降りる。
「よっと!」
ねえ馬鹿のサギリス。
風な。なんだどうした?
ここがフラゲ高原なの?
いやここはノルディア王国って人の国だ。
なんだ違うのか。
悪いな、俺もお前も休まなくちゃいけねえ。
じゃあ僕は人の気配が凄いから森で静かに待ってるよ。また後でね馬鹿のサギリス。
風な! 風のサギリスな!
何度言っても覚えやしねえ、俺は竜殺しの槍を肩に担ぐ。さあて酒だ飯だ。まず確認するのは俺がこの国に入れるかってことだ。大きな門は開きっぱなしで街の中が見える。まあまあ普通の大きさの国ってところだな。俺は衛兵を眺めながら門を先へ進んでいく。衛兵はいちど俺を見て気にすることなく遠くを見る。通れるってことは大丈夫だな。さあて酒と飯がある場所はどこだあ? 俺がきょろきょろしているとすれ違う住人たちが俺を見る。まあいつものことだ、こんなでけえ槍を肩にしてりゃ竜殺しって誰でも分かる。ちょっと遠くから賑やかな声が聞こえてくるな。笑い声するところに酒ありだ。たぶん道沿いのあの店だな。その隣に、なんだこれ? 画家の店か? 画が道の外まではみだしてやがる。画を売る店なんて滅多に見かけえねえけどな。通り過ぎながらその画を見ると、まあ描かれている画の人間がどいつもこいつも笑顔だな。良い画だなとつい思う。でも買わね! 俺は酒と飯が欲しいんだ! まあその隣が賑わっている店なんだが、店の名前が足を止めるな? 変な名前だな。でも気に入った! 良いじゃねえか人は足を止めずに歩くから人なんだ! そっと開き扉を開くとまあ何人かは俺を見る。そのまま俺と目合わせて誰か喧嘩でも吹っ掛けてこねえかな? そうすりゃ決闘申し込んで金掛けて俺が勝って酒と飯が食えるんだが……どうも今日はそういう輩いねえ場だな。
「ガイ! お前また計算間違えてるぞ! セズ! その酒はそこじゃないこっち置け!」
カウンターで赤毛の男が、たぶん自分の子供だろうな。店の仕事を教えてるんだろう。そいつが俺に気づいて、すげえ嬉しそうな顔をする。
「竜殺しとは久々に見たな!」
「竜が人を襲わなくなってからただの浮浪者さ」
俺はカウンター真ん中の椅子に座ろうとした。
「待った。そこは弟の椅子なんだ。この三つの椅子は大事な椅子なんだ。悪いけど隅の椅子に座ってくれねえか?」
「なんだよ、この店はてめえの座りたい椅子に座れねえのか?」
入る店を間違えたか? なんか白けてきたな。
「いやいや! 俺のちょっとした楽しみさ! そして俺は大人の流儀を心得ている」
カウンターの男が俺の前に金貨三枚を叩きつける。へえ、分かってるじゃねえか。俺は金貨三枚を手にして手の平でもて遊ぶ。
「俺はどこに座ればいい?」
「隅で悪いがそこに座ってくれ、さあお客さん何頼む?」
なんだ話の分かる店じゃねえか。俺は隅の椅子に座って金貨三枚をカウンターの男に叩きつける。
「これで美味い酒と美味いもんだな。あとちょっと聞きてえことがあるんだ」
男は金貨三枚を持っていく。
「聞きたいこと? まあ竜殺しだからあいつの話だろうな」
「あいつ? 聞いといてあれだが先に言ってみなよ」
「フラゲ高原への道だろ? 竜殺しは数えるほどしか来てないが、皆同じことを聞いてくる」
「当たりよ当たり大当たり」
男は俺に酒の入った瓶とグラスを差し出して来る。
「悪いがグラスはいらねえ、下げてくれ」
俺はコルクを抜いてそのまま口につける。なんだこれ? 酒というかジュースだな。でも。
「美味いなこれ」
「お、気に入ってくれたかい? 弟のために皆で頑張って作ったんだ」
俺は酒、いやこれはもうジュースだな。ジュースを飲みながら男の笑顔を見る。俺は酒瓶を掴んだまま男に指をさす。いい兄貴じゃねえか。
「俺あんたのこと気に入った」
「へえ! 嬉しいこと言ってくれるじゃねえか! これは餞別だ、もっていきな」
男は俺に金貨三枚を叩きつける。俺はその金貨三枚をしっかり受け取る。
「フラゲ高原は門の道沿いに進めばパラムンデという砂漠の国に出る。そこから西へ砂漠を越えればフラゲ高原さ。そこに行ってどうするんだい?」
俺はジュースをひと口飲む。
「風の噂で……ああわりい。俺は風のサギリスって言うんだ。ご覧の通り竜殺しさ。まあ俺はどちらかと言えば戦うよりも、空高くこうダー! と飛ぶほうが好きなんだ。だから風のサギリス」
「良い名前じゃないか」
「だろ? なのに俺の相棒の竜は馬鹿のサギリス馬鹿のサギリス! あいつぜってえ分かってて俺に言ってんだぜ! ふざけやがって!」
「そりゃ馬鹿にされてるぜ!」
「だろ! あいつは俺を馬鹿にしてるんだ!」
俺はまたジュースを飲む。扉が開く軋む音を聞いて俺は体を反転させる。すげえ筋肉の男が入って来た。あいつ俺に喧嘩吹っ掛けねえかな? しかしまあ見るからに重そうな斧をぶら下げて。地上における歴戦の戦士、傭兵と言ったところかな。ほら俺の目を見て喧嘩吹っ掛けてこいよ。と、眺めていても男は沈んだ顔で俺の顔すら見ねえ。俺の見立て違いか? まあ、いい兄貴のいる店だ、ここで喧嘩はやめておくか。
「帰って来たか! どうだい弟の椅子に座るかい?」
歴戦の戦士はその椅子を見て明らかに怯えている。すげえ筋肉の癖して逃げるように俺と反対の隅の椅子に座る。なんだただの腰抜けか? 俺は腰抜けを見ながらまたジュースを飲む。いい兄貴が笑いかけにいく。
「弟に会えたかい?」
「あ、ああ……会ってきた。会ってきたよ」
「それで誇り高い戦士さまは勝ったのか?」
臆病者は必死に首を横に振る。
「あれは勝った負けたの話じゃねえ! 俺は……俺は逃げ出して来た」
本物の臆病者だなこいつ。てめえの筋肉と斧は見せかけか。腰抜けめ。
いい兄貴が笑い声をあげる。
「そうかそうか! よくぞ帰ってきてくれた! 弟に会った奴はその日タダにしてるんだ! ささ飲んでくれ食ってくれ!」
いい兄貴がグラスに酒を注いで腰抜けの前に出す。いい兄貴の弟はそんなに強いのか? ちょっと興味湧いて来たな。
「兄さんよ、あんたの弟そんなに強いのか?」
「いや、大泣き虫だよ」
俺は言っている意味がよく分からなかった。
「この戦士はその大泣き虫に負けたってことか?」
「いや、たぶんこの感じは挑もうとしてすぐ逃げた感じだな」
いい兄貴の説明は筋が通っている。まあそんな感じの腰抜けに見える。
「見てりゃ分かる。あんたはいい兄貴だよ、俺もあんたの弟に会ってみてえなあ」
「サギリスならいずれ会えるさ、なんせ弟はそのフラゲ高原に住んでいるからな。今は他の竜殺しも集まって村みたいになってるとか」
「へえ」
俺と同じ竜殺しがフラゲ高原に集まってんのか。いいね、ますますそいつらに会いに行きたくなってきた。
「来たぞお! 英雄シンザが帰って来たぞ!」
外が一気に騒がしくなったな。なんだ、どこの英雄様が来たって? 俺はジュースを飲みながら外を見る。
「サギリス、お前運がいいよ。弟があっちからやってきたぞ」
いい兄貴は嬉しそうだ。
「なあ兄さん、その口調は俺に挑めって言ってんな?」
「さすが竜殺し様は話が分かる。その後が俺の楽しみって訳さ」
いい兄貴の許しが出たんならしょうがねえ。いっちょ派手に暴れてやりますか。俺は立ち上がって挑む好奇心を胸に腕を回す。外にいる連中が皆空を見上げている。蒼い服を来た男が竜殺しの槍を手に降りてきた。皆が笑顔で手を振っている。あいつがどうやら英雄様みたいだな。そいつが皆に笑顔で手を振りながら店に入ってくる。俺は回していた腕が自然に止まった。
「やあ兄さん。ガイもセズも」
「こんにちはおじさん!」
「やあおじさん!」
「うん、おじさんはやめようか」
「お久しぶりです」
「やあジェシカさん」
英雄様が仕事中の女に手を振る。
「よく来たな」
他愛もない挨拶さ。背の高い英雄様が俺の隣をすれ違っていく。いま……いま俺の隣を通り過ぎたのはなんだ? 人か? いや馬鹿か俺は人が通り過ぎたに決まってんだろ。けどなんだ? 俺の隣をいま何が通り過ぎた? 俺は恐る恐る振り返る。
「あーいたいた」
英雄様は腰抜けの戦士に話しかけている。
「これ君の家族の画じゃない? 落として行ったでしょ。持ってきたよ」
「あ、ああ。娘の画だ。すまねえ」
「どうして愛する家族の画を落としてその場を去れようか」
俺はふとしたその言葉に全身を静かに震わせている。奴から、そう奴から純粋な怒りを感じている。純粋な怒りってなんだ? 俺の感覚が恐怖している、味わったことのない感覚だ。
英雄様がその腰抜け戦士の肩にそっと手を置く。
「もう落とさないでね。いい画なんだから」
「あ……ああ! もう落とさねえ! 届けてくれてありが……感謝します」
俺がいま静かに全身を震わせているんだぞ! あの腰抜け、いやあの野郎は腰抜けじゃねえ! 俺の見立て通り歴戦の戦士だ! 俺が英雄様の背後ですら震えているんだ、あの歴戦の戦士はいまタダことじゃねえ! なのにその兄さんは普通に笑っていやがる。俺はすぐに理解した! この弟が異常なんだ! なんだこいつは! こいつは人か?
英雄様がそっと、竜殺しの槍をカウンターに掛け、俺が最初に座ろうとした自分の椅子に座る。俺の本能が叫んでいる。座らなくて良かったと! あの椅子に座らなくて良かったと!
「そうだシンザ。お前隣の画廊で画を買ってるよな? なんで請求が全部俺のツケになってんだよ? ちゃんと説明しろよ」
「そりゃあだって兄さんが、僕の名前で荒稼ぎしてるって風の噂で」
「よし! サンドウィッチ三つだな! 黙って待ってろ! いま俺が作ってやる」
「逃げたな」
「ああいけね! 待たせたなほれ!」
いい兄さんが俺の座っていた場所にサンドウィッチを置いてくれる。
「あ、ああ」
あれは俺の飯だ、だから俺はその飯を食いに椅子に戻るんだ。情けねえ、自分で自分に決意表明しねえと椅子にすら戻れねえ。俺は椅子に戻ってサンドウィッチを口にする。こんな状況で味が分かるわけ。
「うめえなこれ」
すげえ久々に俺の本心が漏れた気がする。そして気配に気づく。
「それ美味しいでしょ、僕の大好物なんだ」
英雄様の左眼を見て初めて理解した同時に訳が分からなかった。右目は蒼なんだ、左眼が……左眼が竜の眼じゃないのか? 俺のこと馬鹿呼ばわりしているクーリエと同じ眼。いや違う、竜の眼のようであってそれじゃねえ。
「変な左眼してるでしょ、怖がらせてごめんね」
英雄さまが俺に微笑んでくれる。
「いや気にした俺が悪いんだ、許してくれ」
なんで俺が許しを請いてんだよ! でもそう言わなきゃいけねえ気がした! 俺が馬鹿だから英雄さまが何か理解できないだけか? 俺の師は真っすぐな人だったよ。挨拶だなんだと細かいことゴチャゴチャとうるせえけどな。けどこの英雄様は……なんだ? 人か? 竜か? どれも違うな。もっとこうそう。もっとこうでけえんだ! 背は高いけどそれじゃねえ、人の器がでけえとも話がちげえ。なんかでけえんだ!
「そうだ兄さんちょっと助けて欲しいんだ」
「なんだどうした?」
「僕の部屋残ってるでしょ? ちょっとしばらく泊めて欲しいんだ」
その言葉に店にいた全員が静かに騒ぎ始める。
「英雄が泊まるのか?」
「出発を遅らせるぞ、荷馬車に積んだ荷物を全部降ろせ」
「これは大変な騒ぎになるぞ」
あんたらが騒ぐのも無理はねえ。竜殺しの俺ですらいま感じたことのない気配に襲われて……いる? これもちげえな、そうだ感じたことのない気配に出会った。これがしっくり来るな。
「なんでまた泊まるんだよ?」
いい兄さんが英雄様とその隣、左ふたつの席にグラスをひとつずつ置く。酒瓶、いやあれはジュースだ。英雄様にジュースの瓶を渡すと英雄様がコルクを手で引き抜く。そして開いてる左横のふたつのグラスにジュースを注いでいく。なぜひとつひとつの動作にですら得体の知れない気配を感じる! 俺はいま誰を見てるんだ! 何を見せられているんだ! サンドウィッチを口にするこれがまた美味いんだ! 滅茶苦茶じゃねえかこの店!
英雄様が自分のグラスにジュースを淹れ顔をあげて一気に飲み干す。そしてグラスをカウンターに叩きつける。
「聞いてよ兄さん! 一番下の子が僕の家を壊したんだ!」
「あーあ。そりゃ大変だ。またどうして」
「下の子が竜巻を作って遊んでたんだ。人里もないしいいけど、それは危ないから気をつけるんだよって。なのに大木をへし折ってそれを竜巻に入れたんだ。その大木が空にスポーンってあがって僕の家に。自分の家を失うのがこんなにも辛いだなんて」
なんだ? 英雄様の子供はバケモンか?
「まあその程度の辛さなら大丈夫だろ」
「兄さんは分かっていない!」
あれこれ英雄様酔ってんな。そうかだからこの美味い酒はジュースみてえな飲みもんしてんのか。英雄様は酒が飲めないな。
「兄さんはこんな立派な家があって、家族もいる! 僕も家族を愛しているよ! だからこそ一番下の子を僕は叱った。そしたら一番下の子は僕にこう言ったんだ。でもシンザならすぐ直せるから直しなよって」
ふたりの兄弟が呆れた顔してる横で、俺はつい笑みが零れる。それは言っちゃ駄目だな。
「俺はお前の怒りが目に見えるよ」
「でしょ! 君は僕から何を学んでいたんだと! それでほら僕の家は木造だけど父さんと母さんがノルディアの生まれじゃない? 遠いけどここの大工さんに家の修繕を依頼しようと思って。あと額縁がいくつも壊れたから隣の画廊でいくつか買うんだ」
「その請求を俺にするなよ」
英雄様がそっと自分の胸に手を置く。
「安心してくれ兄さん! 僕は心からあなたを信頼している!」
「いいか絶対に請求を俺にするなよ!」
「あーそうだ。僕そろそろ一旦外に出るよ」
「おいサンドウィッチはどうすんだよ?」
「いやすぐ戻るよ。先に挨拶をしてから一番下の子に生まれ故郷を見せてあげようと思って。今日は一番下の子に乗って来たんだ。だからそのサンドウィッチ取っといてね」
「乗って来た?」
俺は何気なく尋ねた、そして俺はなんで尋ねたと心中叫んだ! 俺なんかが気軽に尋ねてんじゃねえよ!
大丈夫だよ風のサギリス。
その言葉にちょっと俺は安心した……いま俺は……耳にしたのか?
「ごめんね変な話してて、1番下の子ってあの子のことだよ」
英雄様は外を指さす。皆が英雄様に憧れの眼を向けてるな。大きな白い竜の首が上からいきなり現れて、蒼い眼をして外からこっちを眺めている。一番下の子供って、竜なのか?
「じゃあ兄さん、すぐ戻るよ」
「おう」
英雄様が外へ向かうと皆その後を静かに追う。もちろん俺も竜殺しの槍を持って追いかけるさ。行かなきゃ損な気がしたからだ。竜殺しの槍、これだけは忘れちゃいけねえ。俺は風のサギリス。立派な竜殺し……俺は英雄様に名乗ってないよな? 名乗っていないのに何故俺の名前を知っている? そこに不気味さや不安はねえんだ。ただどうして俺の名前を知ってくれている? 俺は答えを求めるように追いかける。ちょっと悪いが群衆をかき分けて出来るだけ英雄様に近づく。英雄様が軽くジャンプすると空に浮いてる白い竜まで届くんだ。まるで本物の風みたいに。皆本当に黙って見上げてるんだ、俺もそうした。
「もう怒ってないよ。君はいま周囲の人に気を配るんだ、確かに多すぎるね。でも絶対にひとりひとり気を配るんだよ。君は皆より大きいんだ、だからこそ皆に気をつけるんだ」
白い竜が静かにそっと翼を広げる。
「風を……そう風を呼ぶんだ。その風にそっと乗せてもらうんだ。ゆっくりとだよ、心穏やかで良いんだゆっくりと」
俺は竜殺しだ、竜に乗れる。けれどもなんだ。いま俺の前で白い竜が翼を動かさずにゆっくりと空へ上がっていく。本当にただの風だ、そう風なんだ。こんな優しい風は見たことがねえ。俺は今何を見ている? そうこれはそうだ。空高くから見下ろす広大な景色に見た「自然」の偉大さに興奮した。俺はいま「自然」を目にしているのか? 俺はあの人に「自然」の偉大さを感じているのか?
「ここまで上がればもういいよ、さあ前に進むんだ」
英雄様が白き竜に乗り空の彼方へ飛んで行く。俺は久々に片目から涙を流したのかもしれない。その景色を見れて良かったとさえ思っている。
「よっしゃ! 今日は祭りになるぞお! 全員好きなだけ飲み食いしてくれ! 全部タダだ!」
客たちが店に一斉に帰るなか、俺はまだ英雄様を見送っていた。
「あなた! シンザに怒られますよ!」
「大丈夫だ! あいつは金の生る英雄だ! うまく利用させてもらおうじゃないか」
「もう! 知りませんよ!」
「おいサギリス!」
いい兄さんに呼ばれて俺は我に返る。こっちに来いよと腕で呼ばれて店に向かう。店に入ろうとして俺はまた英雄様へ振り返る。その景色から離れることがもったいない気がしたから。そして俺は店へと戻っていく。
「さてここからが俺の楽しみだ! 弟の椅子に座るかい?」
いい兄さんは嬉しそうに俺が最初に座ろうとした椅子を軽く叩いて見せる。俺の答えはもう出ていた。
「こいつは座れる訳がねえ、俺は人としてまだまだだ」
「改めて紹介するぜサギリス。いま飛んでったのが、俺の弟で」
竜に認められた男
竜使いのシンザ




