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サッカークラブメイキング 〜ど素人社長、丸投げされる?〜  作者: 双鶴


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8/22

第8話 社長の爆弾発表と、申請書の山

 旧三間中学校の草刈りを終えた翌日。

 北島岳きたじま・たけしは、筋肉痛でぎこちない足取りのまま会社へ向かった。


(足が……棒だ……)


 だが、胸の奥には妙な充実感があった。

 草の海に立ち、草刈り機を握ったあの感覚が、まだ手に残っている。


 総務部に入ると、同僚たちが一斉に声をかけてきた。


「キタさん、昨日どうでした?」


「草、すごかったって聞きましたよ」


「社長、めっちゃ張り切ってたらしいですね」


 岳は苦笑しながら席についた。


「まあ……すごかったよ。いろいろと」


 その時だった。


 社内放送のチャイムが鳴った。


『全社員に告ぐ。十時より大会議室にて、社長より追加の発表を行う』


 総務部がざわつく。


「また発表!?」「今度は何だ……」「クラブ関係だよな……?」


 岳は嫌な予感を覚えた。


(まさか……また何か……)




 十時。

 大会議室には、昨日と同じように社員が集まっていた。


 三好大悟社長が、満面の笑みで登壇する。


「よし、全員おるな。今日は楽しい話だ」


 社員たちがざわつく。


「来週の土曜日、旧三間中学校で“草刈り&整地ボランティア”を行う!」


 会場が一瞬静まり、次の瞬間ざわめきが爆発した。


「えっ……」「ボランティア?」「社員全員で?」「いやいやいや……」


 三好は手を上げ、続けた。


「もちろん、ただ働きさせるわけじゃない!」


 社員たちの視線が集まる。


「午後は――俺の自腹で、バーベキュー大会だ!」


 どよめきが起きる。


「さらに!」


 三好は指を二本立てた。


「夜は花火大会だ! 打ち上げ花火も用意する!」


 会場が一気に沸いた。


「マジかよ!?」「社長、太っ腹すぎる!」「花火!?」「子ども連れて行っていいんですか?」


「家族もOKだ! 友達もOKだ! 近所の人も呼んでいい!

 ――みんなでクラブの“第一歩”を体感しようじゃないか!」


 社員たちの顔が、一気に明るくなった。


「楽しそう!」「行きたい!」「子ども喜ぶわ」「旦那も誘おうかな」


 予想以上の反響に、岳は驚いた。


(こんなに……みんな乗り気なんだ)


 三好が岳のほうを向く。


「たけし。お前は準備だ」


「……はい?」


「草刈りの許可申請、バーベキューの火気使用申請、花火の安全管理、駐車場の確保、地域への案内……全部だ」


「ぜ、全部……!?」


「代表だろ?」


 岳は、思わず天を仰いだ。


(これは……大変だ……)




 総務部に戻ると、佐伯が駆け寄ってきた。


「キタさん! すごいっすね、BBQと花火! めっちゃ楽しみです!」


「いや……楽しみなのはいいけど……」


 岳は机に座り、深くため息をついた。


「申請書が……山ほどある……」


 机の上には、すでに市役所から届いた書類が積まれていた。


・火気使用許可申請書

・イベント開催届

・花火打ち上げ許可申請

・臨時駐車場使用届

・地域住民説明会の案内文テンプレート

・安全管理計画書の作成依頼


「うわ……これ全部やるんですか?」


「全部だよ……」


 岳は頭を抱えた。


(クラブ代表って……こういう仕事もあるのか……)


 だが、逃げるわけにはいかない。


(やるしかない……)


 岳は書類を一枚ずつ手に取り、丁寧に読み始めた。


 佐伯が言った。


「キタさん、手伝いますよ!」


「え?」


「総務部ですから。こういうの、得意ですし」


 山根も椅子を回して近づいてきた。


「俺もやるよ。こういうのは人数が多いほうが早い」


「ありがとうございます……!」


 岳は胸が熱くなった。


(みんな……本当に、支えてくれるんだな)




 午後。

 申請書の山と格闘していると、三好からメッセージが届いた。


《たけし。応募状況、すごいぞ》


《すごいって……どれくらいですか?》


《社員の八割が参加希望だ。家族も含めると百五十人超える》


《ひゃ、百五十……!?》


《地域の人も来たいって言っとる。三間の自治会長から連絡があった》


《自治会長……!?》


《たけし。これは祭りになるぞ》


 岳はスマホを握りしめた。


(祭り……)


 旧三間中学校の草の海が、頭に浮かぶ。


(あの場所が……人でいっぱいになるのか)


 想像すると、胸の奥がじんわりと熱くなった。


(……悪くない)


 岳は深呼吸し、申請書の山に向き直った。


「よし……やるか」


 その声は、昨日よりも少しだけ強かった。


 宇和島オレンジエクストリーム。

 その“第一歩”は、確かに大きなうねりとなって広がり始めていた。


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