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サッカークラブメイキング 〜ど素人社長、丸投げされる?〜  作者: 双鶴


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55/55

第55話 最後の一日、最後の奇跡

 クラファン終了まで、残り二十四時間。


 管理画面の数字は、

 1,642万3,000円。


 目標の二千万円まで、

 あと三百五十万円以上。


(……ここまで来たのに)


 岳は、クラブ事務所の椅子に深く沈み込んだ。


 数字は伸びている。

 街の声援も増えている。

 選手たちも変わった。


 それでも――

 “最後の壁”は、あまりにも高かった。


「たけしさん」


 大畑監督が、静かに声をかけた。


「焦っても仕方ありません。

 やるべきことは、もう全部やりました」


「……はい」


 岳は頷いたが、胸の奥のざわめきは消えなかった。


(本当に……届くのか?)




 その日の午後。

 岳は市役所へ向かった。


 スポーツ振興課の課長が、笑顔で迎えてくれた。


「北島さん、数字見てますよ。

 すごいじゃないですか」


「ありがとうございます……

 でも、まだ届かなくて」


「最後の一日が勝負ですよ。

 うちもSNSでシェアしておきます」


 その言葉だけで、胸が少し軽くなった。




 夕方。

 商店街を歩くと、

 あちこちの店にクラファンのポスターが貼られていた。


「キタさん、あとちょっとやね!」

「うちの店の常連さんにも声かけといたよ!」

「最後まで諦めたらいかんよ!」


 八百屋の店主が、

 岳の肩を叩いた。


「キタさん。

 街は、あんたらの味方やけん」


 岳は、こらえきれずに頭を下げた。


「……ありがとうございます」




 夜。

 自宅に戻った岳は、

 リビングのテーブルにノートパソコンを置いた。


 美咲と晃が、横に座る。


「パパ、あとどれくらい?」


「三百五十万くらい」


「うわぁ……」


 晃は画面を見つめた。


「でも、まだ一日あるよね」


「……ああ」


 岳は、晃の言葉に救われた。




 深夜。

 岳は眠れなかった。


 ベランダに出ると、

 夜風が頬を撫でた。


(ここまで来たんだ。

 もう、悔いはない……)


 そう思おうとしたが、

 胸の奥が痛んだ。


(……いや。

 まだ終わってない)


 スマホが震えた。


 クラファン担当者からのメッセージ。


『明日、最後の波が来るはずです。

 信じましょう』


 岳は、夜空に向かって小さく呟いた。


「……頼む。

 宇和島を、一等賞にしたいんだ」




 クラファン最終日。


 朝八時。

 岳が管理画面を開くと、

 数字が動いていた。


 1,642万 → 1,658万 → 1,671万。


(……動いてる)


 SNSを見ると、

 街の人たちが一斉にシェアしていた。


「今日が最後!」

「宇和島のクラブを応援しよう!」

「子どもたちの未来のために!」


 商工会の公式アカウントも、

 市役所のアカウントも、

 地元の飲食店も、

 学校の先生も、

 勝手連も――


 みんなが、

 クラブのために声を上げていた。


(……街が、動いてる)


 胸が震えた。




 昼過ぎ。

 数字は1,800万円を超えた。


 クラブ事務所には、

 選手たちが集まっていた。


「代表、あと少しっすよ!」

「いける、いけるって!」

「街の人、めっちゃ応援してくれてます!」


 大畑監督は、静かに言った。


「最後まで、見届けましょう」


 岳は頷いた。




 午後五時。

 残り七時間。


 数字は、

 1,912万円。


(……あと九十万)


 岳は、手が震えた。


 そのとき――

 スマホが鳴った。


「北島さんですか?

 せとうち建設の者です」


「はい……!」


「うちの社長が、

 “最後の一押しをしたい”と言ってまして」


 岳の心臓が跳ねた。


「五十万円、入れさせてもらいます」


「……っ……!

 ありがとうございます……!」


 電話を切った瞬間、

 岳は机に突っ伏して泣いた。




 午後八時。

 残り四時間。


 数字は、

 1,965万円。


(あと三十五万……!)


 選手たちも、

 大畑監督も、

 みんな残って事務所で画面を見つめていた。


「いける……いけるぞ……!」


 岳は、祈るように手を組んだ。




 午後十時三十二分。


 数字が跳ね上がった。


 1,965万 → 1,978万 → 1,990万。


「……っ!」


 事務所の空気が震えた。


 そして――


 2,000万 00円


 画面に、

 その数字が表示された瞬間。


 事務所が、

 歓声と涙で満たされた。


「やったぁぁぁ!!!」

「うおおおおお!!!」

「宇和島ぁぁぁ!!!」

「代表!!!」


 岳は、涙で顔がぐしゃぐしゃになった。


「……みんな……

 ありがとう……!」


 大畑監督が、

 岳の肩を強く叩いた。


「たけしさん。

 これは、あなたの“覚悟”が街に届いた証です」


 岳は、声にならない声で頷いた。


 最終支援額 2001万5000円。つまり、4,003口。


 その夜。

 岳は、街の灯りを見下ろしながら呟いた。


「……宇和島を、一等賞にしよう」


 その誓いは、

 街の光とともに、

 静かに夜空へ溶けていった。


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