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サッカークラブメイキング 〜ど素人社長、丸投げされる?〜  作者: 双鶴


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第21話 街の扉を叩く日

 翌日の朝、北島岳は社長室を出たあともしばらく胸の高鳴りが収まらなかった。


(地域交流ウィーク……本当に今月やるのか)


 三好大悟社長は、思いついたら即行動する男だ。

 その勢いに巻き込まれながらも、岳はどこか嬉しかった。


(よし……やるしかない)


 まず向かったのは、市内の小学校だった。




「“ど素人代表と楽しむサッカー会”……?」


 校長室で名刺を受け取った校長は、思わず吹き出した。


「はい。サッカー教室と言うと“技術指導”を期待されると思うので……

 僕みたいな未経験者がやるなら、むしろ“ど素人代表と一緒に遊ぶ会”のほうが正直かなと」


 校長は笑いながら頷いた。


「いいですね。

 子どもたち、絶対喜びますよ。

 “上手い人に教わる”より、“大人と一緒に遊ぶ”ほうが楽しい年齢ですから」


「そう言っていただけると助かります」


「安全面だけ確認してくれれば、学校としても大歓迎です」


 校長はスケジュール帳を開き、日程を調整してくれた。


(……よし、まず一つ)


 校舎を出た瞬間、春の風が頬を撫でた。

 その風が、少しだけ背中を押してくれるように感じた。




 次に向かったのは、消防団の詰所だった。


「“何にも知らない代表とAEDをやってみる会”……?」


 団長は腕を組み、岳をじっと見た。


「はい。

 AED教室と言うと“専門家が教えるもの”というイメージが強いですが……

 僕みたいな素人が“分からないまま触る怖さ”を正直に出したほうが、

 市民の皆さんも気軽に参加できると思うんです」


 団長は目を細めた。


「……お前、本当に面白いな」


「え?」


「普通は“ちゃんと教えられるようになってから”と言うんだよ。

 だが、お前は違う。“分からないまま一緒に学ぶ”と言ってる」


「はい。

 僕ができないことを隠しても仕方ないので……

 むしろ“代表でも知らないことがある”と見せたほうが、

 地域の人も安心して参加できると思うんです」


 団長は大きく頷いた。


「よし、協力しよう。

 AED教室はうちの隊員がサポートする。

 お前は“素人代表”として前に立て」


「ありがとうございます!」


 岳は深く頭を下げた。


(……街が本当に動いてくれてる)




 最後に向かったのは、旧三間中学校の自治会館だった。


「“ど素人代表と楽しむサッカー会”に“何にも知らない代表とAEDをやってみる会”……?」


 自治会長は書類を読みながら眉を上げた。


「はい。

 地域交流ウィークとして、

 “できること”ではなく“今のクラブにしかできないこと”をやりたいんです」


 自治会長はしばらく岳を見つめたあと、ふっと笑った。


「たけし君。

 お前さん、正直でいいな」


「え?」


「普通は“立派なこと”をやろうとするんだよ。

 だが、お前さんは“できないことをそのまま出す”。

 それはな……地域にとって一番信頼できる姿だ」


 岳は胸が熱くなった。


「自治会としても協力しよう。

 回覧板に載せるし、子ども会にも声をかけておく」


「ありがとうございます!」


 岳は深く頭を下げた。




 夕方。

 会社に戻ると、総務部はいつものように慌ただしかった。


「キタさん、学校どうでした?」


「消防団は?」


「自治会は協力してくれました?」


 岳は笑った。


「全部、うまくいったよ」


 総務部のメンバーが歓声を上げた。


「すげぇ!」「やっぱキタさんだ!」「クラブ始まってるじゃん!」


 岳は机に座り、深く息を吐いた。


(……今日だけで、どれだけの人と話したんだろう)


 疲労は限界。

 だが、胸の奥には確かな熱があった。


(街が……本当に動き始めてる)


 その実感が、岳の心を満たしていた。


 そして――

 地域交流ウィークは、すでに“街のイベント”として動き出していた。


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