94 禁忌
楽しい物語になるよう心がけています。
どうぞ最後までお付き合いください!!
ミアは東の塔から、賢者を連れて来た。
「賢者さまの姿を知らなかったので、少々心配でしたが、たまたま塔の入口にいらっしゃったので、何とか・・・」
「ああ、私も見た目までは知らなかったんだ。ミア、すまなかった」
「うるさい! 静かにしてくれ!!」
甲高い声で二人に注意したのは賢者ゴールだ。
彼は今、アリアドネの身体の状態を確認している。
賢者とは優れた才能や深い知識を持ち、その力を正しく使うことが出来る者のことをいう。
ライナスは賢者に豊かな髭を蓄えているお爺さんというイメージを持っていたのだが・・・。
目の前に現れた賢者は少年の姿をしていた。
あまりにもイメージとかけ離れていて、ライナスは内心、戸惑っている。
もちろん廊下に控えている警備兵も、部屋の隅に控えている侍女たちも同じ気持ちだ。
ちなみに賢者の召喚は国を揺るがすような大事が発生した時のみと帝国法で決められている。
今回の件はアリアドネがこのまま目を開けなかった場合、ドラクロア帝国は皇位継承の危機を迎えてしまう可能性あるので、適切な判断だったと言えるだろう。
ゴールに注意され、ライナスたちは素直に口をつぐんだ。
ミアは年齢不詳の賢者をつい観察してしまう。
彼の背丈は七、八歳の子供くらいで、濡羽色の長い髪は後ろで三つ編みにしている。
また、彼の怜悧な表情と言動、醸し出す雰囲気は到底、子供とは思えないものだった。
「判明した」
「原因が分かったのか?」
「分かった」
ライナスの圧にも負けず、ゴールは淡々と言葉を紡ぐ。
「皇子、落ち着いて聞いてくれ。お嬢はすぐには目を覚まさない」
「なっ!?」
遠まわしに回復には時間が掛かるといわれ、ライナスはショックを隠し切れない。
「警備兵、其の一、皇帝を呼んで来てくれ。『ゴールが呼んでいる』といえば、緊急事態と分かるだろう」
「はっ、かしこまりました!!」
「ミアちゃん、魔術部の責任者を連れて来てくれ」
「はい、行ってまいります!」
「警備兵、其の二、賢者ゴールの名で皇宮の出入り口の封鎖してくれ。ついでに今日の皇宮へ出入りした者の名簿も持って来てくれ」
「はい、承知いたしました」
茫然としているライナスは使い物にならないと判断し、ゴールは次々に指示を出していく。
指示を受けた者はあっという間に部屋から出て行った。
「皇子、詳しいことは皇帝が来てから話すが、ひとつだけ先に教えておく。お嬢には禁忌の術がかけられている」
「禁忌の術?」
「そう、使った奴はもれなくコレだ!」
ゴールは親指をシュッと横に引いて、首を刎ねるジェスチャーをする。
「よし!! 皆で手分けして犯人を捜すぞ!!」
ライナスは部屋に残っていた警備兵に号令を掛けた。
「いやいやいや、ちょっと待て! 爺はもう犯人を知っている!」
見た目少年のゴーンから、爺という言葉が出てきて、ライナスは目をパチクリさせる。
「爺? お前、子供じゃないのか?」
「皇子、爺を見た目で判断してはいけない。あなたの祖父の祖父が産まれた頃から、東の塔で悠々自適な研究生活をしていたのだから」
「祖父の祖父!? ゴーン、お前はいつから賢者を・・・」
「皇子、余計な話は後だ。今はお嬢を助けることに集中しなさい!!」
ゴーンに喝を入れられ、ライナスはハッとした。
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