92 王子からの手紙 下
楽しい物語になるよう心がけています。
どうぞ最後までお付き合いください!!
「だよな・・・。で、国王がジャイルの婚約者をアリアドネに変更しようとして揉めたらしい」
「何ですか、その話は」
フェルナンデスは渋い顔をする。王家はブリシア公爵家の後ろ盾が欲しいだけだ。しかし、突然、婚約破棄を言い渡された相手はそれを納得するのだろうか。
――――間違いなく、碌なことにならない。
そんなことをしなくても、ジャイルは経済分野で功績を上げており、国民から高い支持を得ている。第二王子と第三王子が必死に争うのは、弟の出来が良くて焦りがあるからだ。
隣国の国王は周りが見えていないのかも知れない。
「殿下、先に求婚して正解でしたね」
「ああ、そうだな」
フェルナンデスの言葉にライナスは同意する。
「アリアが社交界に出る前に出会えて良かった」
「私もそう思います」
フェルナンデスは大きく頷く。
アリアドネは人前に出る機会がなかっただけだ。
もし、社交界にデビューしていたら、人目を惹く美貌と穏やかな口調、そして、人を思いやる優しい心で皆を虜にしていただろう。
「この文面を見る限り、ジャイルはアリアの母親が母国でどういう仕打ちを受けていたのか知らなさそうだな」
「ええ」
土属性を持つパシャは祖国から逃げるようにドラクロア帝国のクロ―シェ伯爵家へ嫁いで来た。
もともとピートアイランド王国が魔法属性で人を差別するようなことをしなければ、彼女は他国に嫁ぐこともなかったし、もっと幸せな人生を送れたはずだ。
皮肉なことに彼女の娘、アリアドネは希少な属性を持って産まれた。隣国の王族にしか現れないといわれている時属性を・・・。
手紙の最後に『アシュレイと会った。でも、伝言を頼んでも、ライナスに伝えてくれなさそうで・・・。だから、口の堅い魔法使いに頼んで、手紙を出すことにしたよ』と書いてあった。
「(アッシュー!)」
彼は気持ちが素直に顔に出てしまう部下のことを思い出す。きっと、ジャイルに付け込まれないよう、硬い態度で接したのだろう。
残念ながら、それが裏目に出てしまったようだ。
文中には第二王子、第三王子に加担する悪い貴族の名までご丁寧に書かれていて、困ったことにドラクロア帝国の貴族の名もチラホラ・・・。
「(先日、腐りきった貴族を一掃したばかりなのに・・・)」
ライナスは便箋を指先でピンと弾く。
「手紙を受け取ってしまった以上、私はあいつ(ジャイル)に協力しないといけない」
「――――心中、お察しいたします」
フェルナンデスは恭しく頭を垂れてみせた。
ひとときの静寂が訪れ、二人は何となく窓の外を見る。
朝霧に包まれた森は幻想的だった。まるでこの先に別世界があるかのように。
「フェル、結局のところ、あいつ、国王になる気満々だよな?」
「ええ、だから、殿下と仲良くしたいのでしょう」
「?」
「気付いてなかったのですね。ジャイル殿下はかなり前から、こちらに尻尾を振っていますよ」
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