90 王子からの手紙 上
楽しい物語になるよう心がけています。
どうぞ最後までお付き合いください!!
アリアドネは朝霧に包まれた森を窓辺から眺めていた。まだ、部屋の中はひんやりとしている。
「ん~、寒っ」
彼女は上腕をスリスリと撫でて、あたためようとする。
「ライナス殿下のぬくもりが恋しいわ」
アリアドネの体調を心配して、ライナスは毎晩、添い寝をしてくれていた。
ところが、昨日、皇宮の医師が『アリアドネ様、すっかり元気になられましたね。今後は疲れを感じたら早めに休息を取られるようにして下さい』と回復宣言をしたため、彼がこの部屋に居座る理由が無くなってしまったのである。
しかし、本音をいうなら、アリアドネはライナスと一緒に寝たい。
人間のライナスが間近にいると彼の美し過ぎる顔に圧倒されて、未だに緊張してしまうのだが、なぜか銀狼の姿の時は緊張することも無く、素直に甘えられるのだ。
それにフカフカモフモフの毛皮に包まれて、眠りに落ちていく幸福感は唯一無二。
「うーん、今日も森は霧に包まれているけど・・・、がけ崩れの復旧はどうなっているのかしら?」
アリアドネの脳裏に斜面が酷く崩れていく場面が再生される。
――――あれを元通りにするにはかなりの時間と労力を要するだろう。素人目でもそう感じるくらいの惨状だった。
(一度目はライナスに遭遇してここへ連れて来られて、二度目は崖崩れでここに戻って来て・・・。私、ピートアイランド王国に辿り着けるのかしら)
「ん?」
物思い耽っていると視界の端に物凄いスピードの中庭を突っ切っていく、何かが映る。
「キャッ!!」
その何かが建物に衝突する瞬間、アリアドネは顔を手で覆った。ところが、辺りは静寂そのもので・・・。
(あの勢いでぶつかったら、大きな音がしたり、振動を感じたりすると思うのだけど・・・)
「気になるわね」
アリアドネはガウンを羽織って、部屋を出た。
♢♢♢♢♢♢♢
「殿下、おはようございます」
「フェル、早いな」
ライナスが執務室に入ると、既にフェルナンデスがいた。
――――先ほど、夜が明けたばかりというのに・・・。
「(自宅に)帰らなかったのか?」
「はい、仮眠部屋に泊まりました」
「無理をさせてすまない」
アシュレイが隣国にいるため、フェルナンデスの仕事量は増えている。ただ、ライナスが居るので、期日を超えるような事態にはなっていない。
――――ヒュッ。突然の風切音と共にキラリと光る物体が部屋に現れた。
「魔法郵便か」
「そうみたいですね」
ライナスは宙に浮いている光へ手をのばす。光の玉はライナスの手に反応して瞬き、一通の手紙へと姿を変えた。
「――――ジャイルからだ。隣国で何かあったのか?」
ライナスはブツブツと呪文を唱えて、手紙に施された封印魔法をとく。そして、便箋を取り出した。
ジーッと、文面を見つめて固まるライナス。
「何と書かれているのですか?」
フェルナンデスは待ち切れず、上司に声を掛ける。
「ここに書かれていることが本当なら・・・、ジャイルは良い奴なのかもしれない」
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